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子どもの混浴年齢の上限変更、何歳から「はずかしい」と思いはじめる?
東京都内の入浴施設の張り紙

子どもの混浴年齢の上限変更、何歳から「はずかしい」と思いはじめる?

全国各地で、銭湯などの公衆浴場での混浴可能年齢の上限が引き下げられています。東京でも2022年1月1日から、混浴制限年齢が、10歳以上から7歳以上に引き下げられました。入れるのは6歳までということになります。

従来は、厚生労働省による衛生等管理要領で「おおむね10歳以上を混浴させないこと」とされており、これに沿った形で、各自治体の条例で混浴制限年齢が定められていましたが、自治体によって年齢はバラバラでした。

しかし、2020年12月10日付の厚労省通知で、「おおむね7歳以上の男女を混浴させないこと」とされ、各地で続々と年齢引き下げの動きが起きています。

しかし、なぜ6歳までしか入れないのでしょうか。その根拠のひとつである「子どもの発育発達と公衆浴場における混浴年齢に関する研究」報告書(2020年7月、研究代表者:植田誠治・聖心女子大学教授)を紹介します。

写真はイメージ(OrangeMoon / PIXTA)

●はずかしいと思い始めたのは「6歳」が最多

この報告書に掲載されている、子どもに対する調査(回答数1500人)では、水着なしで異性の浴場に入ったことがある子どもに対して、最後の年齢を尋ねたところ(回答数615人)、「5歳」が20.0%で最も多く、「6歳」が14.1%、「7歳」が13.0%、「4歳」が9.6%でした。

また、水着なしでの異性入浴をはずかしいと思い始めた年齢(回答数1049人)で、最も多かったのが「6歳」で27.0%。「7歳」の21.2%、「5歳」の16.1%、「8歳」の13.4%と続きました。どちらについても、「6歳」が最も多くなっています。これまでの厚労省通知であれば、9歳は混浴が可能でしたが、9歳までに94.4%の子どもが恥ずかしいと思うようになっていました。

「子どもの発育発達と公衆浴場における混浴年齢に関する研究」より

調査は成人に対してもおこなわれています。

子どもがいる人に対して、子どもに混浴をさせた経験を尋ねたところ(回答数1804人)、「ある」が56.4%で、「ない」が43.6%と割れました。

混浴の種類について、複数回答可能で尋ねたところ(回答数1018人)、男児を女湯に入れたのが49.4%、女児を男湯に入れたのが63.3%でした。

子どもに最後に混浴をさせた年齢については、男児の女湯利用は3歳が21.7%で最多。女児の男湯利用は5歳の21.1%が最多となりました。いずれも、6歳の時点では10%を上回っていますが、7歳以降は一桁台となっています。これは、小学校入学を区切りとしているのではないかと考察されています。

●子どもに障害がある場合など「特別な事例についても検討すべき」

また、この報告書には、アンケート調査だけでなく、保育園、幼稚園、小学校教員など12人のインタビュー結果も掲載されています。

4〜5歳の時期に性の意識の芽生えがあるという意見がありました。また、小学校2、3年生で、性の興味関心から知識を得ようとする行動もあるとのことでした。

これらを踏まえ、報告書では、「早ければ4〜5歳から男女別の着替えや性教育が必要であることが示唆された」としています。

このほか、公衆浴場事業者が考える混浴禁止年齢としては、7歳の割合が最も高いことなどが報告されており、総合的な結論として、「混浴禁止は6歳以上(ただし6歳でも小学校入学前は可)とすることが妥当である」とまとめています。

ただ、報告書の公衆浴場事業所を対象とした調査研究では、子どもに障害がある場合など、事業者が判断した場合には緩和する必要もあるという意見があったことを踏まえ、「特別な事例についても検討する必要がある」としています。

今回の研究成果を受けて出された厚労省の通知で、年齢制限は実に70年ぶりの変更になりました。実態に即した変更であり、トラブル防止につながりそうです。一方で、何らかの不利益を被る人が少数でもいるのであれば、その配慮も考えることは重要でしょう。

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