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「怖そうな男の人だった」駅のホームでぶつかり、女子高生のスマホ破損…責任は誰に?
画像はイメージです(amadank / PIXTA)

「怖そうな男の人だった」駅のホームでぶつかり、女子高生のスマホ破損…責任は誰に?

「あの時、怖くて言えなかったのですが、いまだにモヤモヤします」。現在、都内の大学に進学した女子大生Mさんが、高校時代のあるモヤモヤ体験を振り返りました。

当時、都内の高校に電車通学していたMさん。通学のため駅のホームで電車を待っていました。すると突然、横から勢いよく男性にぶつけられてスマホが手から滑り落ちてしまったそうです。

「顔を上げると大柄の男性が落ちたスマホを見ていましたが、私の視線に気づくと、私を睨むように一瞥してから早歩きで去ってしまいました」(Mさん)

Mさんがスマホを拾うと、スマホの液晶画面が粉々に割れていました。彼女は「怖そうな男の人を呼び止めて弁償するように言うことはできなかった」と言います。

スマホの液晶が割れたのはさも女子高生自身の責任といわんばかりに去っていった男性ですが、法的な責任はないのでしょうか。前島申長弁護士に聞きました。

●駅員に対応してもらううなどして、なんとか連絡先を押さえたい

——スマホの液晶を割った点について、男性にはどのような責任がありますか。

女子高生と男性の動きにより様々なケースが考えられますが、女子高生は、ホームの白線などの印に従って指示通りに並んでいたところ、男性が勢いよく移動し並んでいた女子高生に横からぶつかったというケースを前提でご説明します。

まず、女子高生は、ホームの白線などの印に従って指示通りに並んでいたので、特に過失などはないものと考えます。

一方、男性は、通勤・通学で混雑しているホーム内において前方を注視して移動する義務があると考えられます。当然、歩行するに際して、前方に並んでいる他の乗客がいることは予見できますし(予見可能性)、前方を注視して速度を調整しながら歩行することで他の乗客への衝突は回避可能と思われます(回避可能性)。

男性は、少なくとも過失により、前方を注視することなく女子高生に衝突しスマホの破損という物的損害を負わせたわけですから、女子高生に対し、不法行為による損害賠償責任(民法709条)を負うことになります。賠償額としては、一般的にはスマホの修理代金相当になるでしょう。

——今回のように、その場ですぐに弁償をするよう伝えることができないケースもありそうです。どう対応すべきでしょうか。

大柄の男性に睨まれた女子高生としては、なかなかその場で弁償の要求をすることは難しいかもしれません。一方で、その場を離れると男性の特定が困難になる可能性が高いと考えられます。

たとえすぐその場で賠償を要求しなくても、できれば男性の連絡先を教えてもらい、のちにご両親などの親権者から賠償請求をしてもらう、あるいは近くに駅員がいれば連絡先を聞いてもらうなどの対応をするしか方法はないと思われます。

プロフィール

前島 申長
前島 申長(まえしま のぶなが)弁護士 前島綜合法律事務所
前島綜合法律事務所代表弁護士 大阪弁護士会所属 交通事故・不動産紛争などの一般民事事件、遺産分割・離婚問題などの家事事件を多く扱う。中小企業の事業継承や家族信託などに注力を行っている。

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