民事裁判の〝スピードアップ案〟に弁護士ら危惧、半年で審理終結「主張立証が制限される」
東京地高裁(KA-HIRO / PIXTA)

民事裁判の〝スピードアップ案〟に弁護士ら危惧、半年で審理終結「主張立証が制限される」

法務大臣の諮問機関である「法制審議会」の部会で現在、民事裁判のIT化に伴う民事訴訟法の改正について検討されている。この中で、当事者が希望すれば審理期間を6カ月以内とするなど新しい民事裁判の仕組みも議論されている。

IT化を契機に裁判の迅速化をより進めたい考えのようだが、専門家からは「粗雑な審理や誤った判断がなされる危険性が高まる」と反対の声もあがっている。

反対する弁護士らのグループが8月25日、オンライン集会を開いた。

●期間限定はなじむ? 「裁判は流動的」の批判も

法制審議会の「民事訴訟法(IT化関係)部会」が今年2月にまとめた中間試案の中で、このグループが懸念しているのが、「新たな訴訟手続」と「新たな和解に代わる決定」という2つの仕組みだ。

新たな訴訟手続は、被告の同意があれば、第一回口頭弁論期日から6カ月以内(甲案)、または裁判所が審理計画を作ってから6カ月以内(乙案)に審理が終結する民事裁判を起こせるというもの。

一方、正木みどり弁護士は「裁判は流動的。訴訟の初期には予測できなかった主張立証が必要になることもあるが、それが制限される」と、期間が限定されていることの危険性を指摘する。

乙案では、この流動性を意識して、裁判の途中で通常訴訟への移行ができるとされている。しかし、だとすればそもそもこの制度は必要なのかという疑問も生じる。争点が少ない事件では、短期間のうちに和解や調停などで解決することもあるからだ。

●和解に代わる決定の問題点

もう一つの「新たな和解に代わる決定」は、和解を試みたがうまくいかなかったとき、原告・被告から異議の申し立てがなければ、裁判所の職権で事件の解決のため必要な和解条項を定める決定ができるというもの。

正木弁護士はこれを端的に「強制和解、理由なし判決」と指摘する。当事者は、裁判所がなぜそのような判断をしたかを知ることができないからだ。

当事者が和解に代わる決定に異議を申し立てれば訴訟手続に戻るという設計になっているが、同じ裁判官が判決を書くため、不利な判決が出ることを心配して、諦めてしまうことが予想されるという。

●近く法制審の方針が決まる

民事訴訟法(IT化関係)部会が、中間試案についてパブリックコメントを求めた際、この2つの制度について、消費者団体や労働組合、弁護士会などが反対を表明した。

「民事裁判手続のIT化と直接の関連のない事項であり、今般の改正において議論されるべきではない」などという理由からだ。

同部会は今年度中に答申をまとめる予定で、近く方針が決まると見られる。

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