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2021年07月31日 09時32分

DV、援助交際、自殺…歌舞伎町にたむろする「トー横キッズ」が抱える心の闇

DV、援助交際、自殺…歌舞伎町にたむろする「トー横キッズ」が抱える心の闇
「トー横キッズ」たち(2021年7月下旬/富岡悠希撮影)

日本一の歓楽街とされる新宿・歌舞伎町。その一角にある「新宿東宝ビル」横に今、中高生を含む若者数十人が日常的にたむろしている。「トー横キッズ」「トー横民」と呼ばれている。本人たちに「マスゴミやだ」と言われながらも直撃取材で実態を探ると、集う女子たちが抱える心の闇を伝える証言に行きついた。(ジャーナリスト・富岡悠希)

●新宿東宝ビルの横にあつまっている若者たち

7月下旬の週末、歌舞伎町1丁目にある新宿東宝ビルを目指した。昼間30度を超す猛暑だっただけに、午後6時を過ぎても蒸し暑い。少し歩くと汗が吹き出る。

「新宿東宝ビル」と聞いてピンとこない読者は、ゴジラのオブジェがある建物と説明するとわかるだろうか。2015年開業以降、同ビルが新宿コマ劇場に代わって歌舞伎町のシンボルとなった。

新宿駅方面からそのビルを真正面に見据えた右側に、「トー横キッズ」は集まっていた。ビル敷地の植栽があり、その下で腰をかけやすい。また、道幅も適度に広くたむろするのに程良い地形になっている。

今回の取材はツテをたどるわけでなく、突然のゲリラ取材と決めていた。この日の「トー横キッズ」を子細に観察すると、路上奥に向かって、大きく3つぐらいのグループがあるように見えた。

その中で、最奥のグループが話しかけやすそうだった。女性2人組に男性1人がたまに声をかけるぐらいで、小人数だったからだ。

●「やることないから、ここにたむろしにくるだけ」

意を決して、ピンクワンピース姿と黒Tシャツ姿の女子に話しかける。2人とも地べたにいたので、視線を合わせるべく、ヤンキー座りになって声をかけた。

「トー横キッズに興味があるのだけど、ちょっといいかな」 「どんな目的でたむろしているのか知りたくて」

こう声を重ねるも反応はかんばしくない。あまり続かない会話をしているうちに、茶髪男子が加わってきた。

「ジャーナリストなの。どこの雑誌? なにニュースサイト、どこ?」

媒体名を教えると、黒Tシャツ女子が検索を始めた。「あるじゃん、そのサイト、本当に」

メディア名を確かめると、茶髪男子が口を開いた。

「トー横は、メンヘラ(メンタルヘルスに何らかの問題を抱えていることを指すネットスラング)のたまり場。やることがないから、ここにたむろしにくるだけ」

「あとは、女の子はDVとかで家に居場所なくて、やってきてる。別にそんだけで、それ以上は何も話すことないわ」

ピンクワンピース姿の女子は「マスゴミじゃん、やだ」「もういいでしょ」。彼女たちの気分を害してまでの取材は不本意でないので、一度、離れることにした。

歌舞伎町のネオンサイン(富岡悠希)

●DVにあっている子もいる

少し離れた場所から、さらにウォッチを続けた。夜の帳が下りることになると、先ほど取材したグループのさらに奥に男女3人が新たに腰をおろした。

他グループとの交流もさほどないようだ。再度、突撃取材を試みた。

今度は関西から2週間ほど前に、上京したというマナブ君(仮名・22)が気軽に応じた。「ここに来る未成年たちのことを知ってほしい」というのが理由だった。

マナブ君は以前から、ネットで友人を作ってきた。上京した理由の1つに、トー横への興味があり、すでに足を運ぶのは7回目。この日は、ネットで知り合った女の子2人と連れ立った。

マナブ君いわく、「家にも学校にも居場所がない女の子が、ここ来る」。精神を病んでいたり、家庭でDVにあったりしているほか、家出少女たちもいる。友だちのところを点々としているほか、風俗などで稼ぎつつホテル住まいをしている子もいるとのことだ。

「こうしたいろいろな問題を抱えている子の力になってあげたいんです」

マナブ君は職探し中だが、以前に飲食店勤務の経験があるという。飲食店仲間のネットワークを使い、「トー横キッズ」たちにアルバイト先の紹介をしたいと語った。

●警戒されていたワケは

マナブ君への取材の最中、筆者の右隣には黒マスク姿の女の子、ナミちゃん(仮名)がいた。ピンク系のアイシャドーで垂れ目を作り、フリル系の洋服を着ていた。いわゆる「ぴえん女子」ど真ん中の格好だった。

目と声質から推察するに、明らかに若い。というか、幼い雰囲気を出している。

「どうして、ぴえん系に?」と尋ねると、「えー、可愛いじゃないですか。真似したくなります」。

マナブ君への取材中、そんなナミちゃんが一度、彼の元に向かい耳打ちした。その後、マナブ君がその内容を教えてくれた。

「最初声をかけられたとき、ナミちゃんは『今日がトー横に来たの初めて』っていったじゃないですか。それが実は違うことを気にしていて。本当のことを言ったほうがいいかなと聞いてきたんです」

「彼女たち、何度もここに来ているけど、中学生なんですよ」

ナミちゃんは「私服警察官だと面倒」と考えて、「初めて」と嘘をついたとのこと。最初に取材したグループが筆者を警戒したのは、こうした理由もあったのかもしれない。

●メンバーの入れ替わりは激しい

話し込んでいると、今度は20代前半と思われるマサクニ君(仮名)が近づいてきた。浪人生だったころから、足を運んでいるという彼は、「トー横キッズ」の成り立ちを教えてくれた。

ツイッターでは、自撮り写真や映像を上げている「自撮り界隈」というグループがある。その有力メンバーたちが、2018年ごろからリアルで会う場所に使い始めた。当時は、全体的に年齢層はもっと高かったという。

昨年の最初の緊急事態宣言下で集まるメンバーは減ったが、仕事にあぶれた夜職関係の男性などが増えた。その後、それまではいなかった中学生が出入りするようになった。今では中学2年生から20代前半がたむろしている。

マサクニ君は古株にあたるが、彼のように数年来通う男女は少ない。

「特に何らしがらみがないので、嫌になったら来ない。来たくなったら来る。こんな感じだから、メンバーの入れ替わりは激しいですね」

メンバーが消える原因の1つには、自死もある。マサクニ君も昨春、仲の良かった友人のミキさん(仮名)を失った。別の友人も加え3人グループのLINEを作り、しょっちゅう会話を交わして、トー横でも会っていた。

風俗店に勤めていたミキさんも、心の問題を抱えていたという。さらにマサクニ君は、少なくない女の子が援助交際(援交)にも手を染めていることを心配していた。

年上かつ金銭的に余裕のあるマサクニ君は、年下キッズたちの面倒を見ることもある。

「風俗や援交で稼いでいるけど、ホスト狂いになってお金がないという女の子も出てくるからね。家出中の友達が『ホテル代払えない』と嘆いていた時、1万円札を渡したこともありますよ」

トー横は、どうやら「路上の共助」の側面も持っているようだ。

●「私はトー横じゃないから。一緒にしないで」

しかし、こうした側面があったとしても、たむろする若者たちに向けられる厳しい目もある。それは何も周辺の飲食店や地域住民でなく、同じく歌舞伎町に足しげく通う同世代のときもある。

「トー横キッズ」から、ほんの10メートルほど離れた場所の植え込みに腰を掛けていた、ミワさん(仮名・22)に取材の合間に話しかけてみた。

最初の取材同様に「トー横キッズに興味があるのだけど」と話しかけると、ナミさんの切り返しは辛辣だった。

「いやいや、私はトー横じゃないから。一緒にしないで」

ホストの彼氏がいて、しょっちゅう歌舞伎町に来る彼女は、次のように言葉をつないだ。

「路地にたむろして、お酒飲んでいる。邪魔過ぎる」 「なんで歌舞伎町に来るかな。カネがないなら、家飲みしろって」

仕事内容は聞け出せなかったが、「私はちゃんとこの街にカネを落としている」という気概を感じた。

●オリンピックには無関心だった

ミワさんは「トー横キッズ」と一緒にされたくないと語ったが、取材していて共通点を見つけた。それは、まさに開催中の東京五輪にまったく興味がないことだ。

この日何人もの若者にオリンピックの話を向けたが、食いついてこなかった。

それでも、「トー横キッズ」らが集う路上には、五輪マークを掲げた旗が街頭に掲げられていた。夜の闇が完全に満ちると、その旗は歌舞伎町のネオンサインに照らし出されていた。

この日の取材で掴めたのは「トー横キッズ」のほんの一端に過ぎないだろう。それでも、一つ言えることがある。

彼らは「居場所」を求めて歌舞伎町の路上に来ている、のだと。

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