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犬の事件簿「ドッグラン」で起きた悲劇 「愛犬」が咬まれて大ケガ、飼い主は謝罪なし
写真はイメージです(ホタル / PIXTA)

犬の事件簿「ドッグラン」で起きた悲劇 「愛犬」が咬まれて大ケガ、飼い主は謝罪なし

リードなしで自由に犬が走り回れる「ドッグラン」では、ときに悲惨な事故も起きるようです。弁護士ドットコムにも、愛犬が咬まれたという女性からの相談が寄せられています。

相談者の愛犬(中型犬)はドッグランで大型犬に咬まれ、手術が必要なほどの大ケガを負いました。

大型犬の飼い主である相手からの謝罪はありませんでした。また、相手はドッグランの利用規定に「ドッグラン内で入場者及び入場犬同士のトラブルで起きた、けが等にかかった医療費賠償金等は当事者同士の請求ができません」という一文があることを理由に、「お金は支払わない」の一点張りだといいます。

相談者は「お金の問題ではありません。誠意のかけらもない相手に、何もせずに引き下がるのは悔しいんです」と納得いかない様子です。

このような規約がある場合、加害者側に請求はできないのでしょうか。坂野真一弁護士の解説をお届けします。

●規約上、加害者側に損害賠償請求することは困難だけれども…

ーー被害者側である相談者は、加害者側に損害賠償請求をおこなうことはできるのでしょうか。

ドッグラン利用約款(利用規約)の詳細が分からないので確たることは言えませんが、概ね一般論としては次のように言えるかと思います。

今回のケースの場合、ドッグラン利用規約に「入場者・入場犬同士のトラブルで起きたケガ等にかかった医療費賠償金等は当事者同士の請求ができません」との規定があるということです。

通常、入場犬同士のトラブルは、犬が民法上は動産とされている結果、その持ち主である入場者同士のトラブルの問題になります。

この入場者同士でトラブルが生じ損害が発生した場合、被害者は加害者に少なくとも過失があれば、不法行為に基づく損害賠償請求が可能です(民法709条・718条)。

ーー今回のケースの場合、規約では、特に制限もなく当事者間で「請求ができない」と規定されているそうです。これは、どのような趣旨なのでしょうか。

ドッグラン内において、入場者・入場犬同士のトラブルが発生してケガ等をしたとしても、お互いの落ち度に関係なく、相手方に対する損害賠償請求権を放棄して、なんら請求しないという趣旨だと考えられます。

したがって、当該ドッグランを利用する人は、トラブルが発生して犬がケガ等を負っても、その損害についての賠償請求権を放棄することをあらかじめ承諾した上で、ドッグランを利用していることになると考えられます。

よって、本件においても、被害者が加害者に対しての損害賠償請求権を放棄することを事前に了承した上で、当該ドッグランを利用していると考えられます。規約上は、残念ながら被害者の方は、加害者の方に損害賠償請求することは困難だと考えざるを得ません。

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ただし、犬の所有者が自分の犬が極めて攻撃的であり、他の犬を攻撃する蓋然性が高いことを認識しつつ敢えてドッグランに放したところ、やはり他の犬を攻撃してケガをさせた場合は、その犬の所有者には単なる落ち度を超えて他人の犬をケガさせても構わないという認識認容がある故意行為と評価できる場合もあるでしょう。

その場合は、単なるトラブルの域を超えた故意の侵害行為として、刑法上の器物損壊罪に問いうる場合や、不法行為に基づく損害賠償請求が可能となる場合も考えられるでしょう。

なお、多くのドッグランでは、当事者間のトラブルは当事者で解決するように規定されていることがほとんどで、「請求できない」とまで規定されているドッグランは少ないようです。利用規約をよく確認してから、ご利用されることをお勧めいたします。

(弁護士ドットコムライフ)

プロフィール

坂野 真一
坂野 真一(さかの しんいち)弁護士 ウィン綜合法律事務所
ウィン綜合法律事務所 代表弁護士。京都大学法学部卒。関西学院大学、同大学院法学研究科非常勤講師。著書(共著)「判例法理・経営判断原則」「判例法理・取締役の監視義務」(いずれも中央経済社)、「弁護士13人が伝えたいこと~32例の失敗と成功」(日本加除出版)等。近時は相続案件、火災保険金未払事件にも注力。

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