在外邦人が最高裁裁判官の国民審査に投票できないことが憲法に違反するかどうかが争われた裁判で、最高裁大法廷(裁判長・大谷直人長官)は5月25日、違憲とする判決を言い渡した。一審・二審に続く違憲判決で、裁判官15人の全員一致の判決だった。
最高裁が法令を違憲としたのは11例目。国会は法改正を迫られることになる。
国政選挙をめぐっては、比例代表選に限って1998年に在外選挙制度が導入された。選挙区選については、最高裁が2005年に違憲判決を出したことを受け、2006年の公選法改正で在外投票が可能になった。
一方、国民審査については在外制度は未整備だった。今回は2017年の国民審査時、投票できなかった5人が提訴していた。
●「生かすも殺すも国民次第」
原告のひとりで映画監督の想田和弘さんは判決後の記者会見で、「国会は速やかに違憲状態を改善してほしい」と述べ、「これを機に、形骸化しているといわれる国民審査を実のあるものにしていく議論が高まると良い。制度改革も含めて議論してもらいたい」と語った。
判決では、国会の立法不作為を認め、1人あたり5000円の賠償を命じるなど、原告の主張の多くが認められた。
これらの判断を下した裁判官たちは国民審査の対象者でもある。この点について、原告側代理人の吉田京子弁護士は、「裁判所として十分な仕事をした」と評価した。
そのうえで、「(国民審査を)生かすも殺すも国民次第。国民にバトンを渡したので、十分に審査してくださいという意味だと思う」と話した。