バンダイの元社員が取り引き先から約2億円を不正に受け取っていた問題をめぐって、親会社のバンダイナムコホールディングスは10月中旬、この元社員を「刑事告訴する方針」と発表した。バンダイナムコHDは弁護士ドットコムニュースに「まだ警察と相談している状況だ」と回答した(11月15日)。
バンダイナムコHDによると、国税局が今年8月、バンダイの税務調査に入ったこときっかけ。その後内部調査をすすめていたところ、この社員が2013年から2017年にかけて、取り引き先から約2億円を不正に受け取っていたことがわかったという。
バンダイはこの社員を懲戒解雇したうえで、刑事告訴する方針ということだ。報道によると、この社員は取引先からキックバックというかたちで金を受け取っていたという。はたして、このような行為はどんな罪に問われるのだろうか。大部博之弁護士に聞いた。
●詐欺罪や背任罪が成立する可能性がある
「売上の一部をキックバック(リベート)というかたちで、発注者に返金するのは、日本の商慣習でよくある行為です。お互いが納得している限り、こうした行為自体に問題があるわけではありません」
大部弁護士はこう切り出した。それでは、どのような行為が問題になるのだろうか。
「問題となるのは、会社間の契約で『キックバックする』という合意がない場合です。
このとき、発注会社の担当者が、取り引き先と共謀して、本来の見積もりに上乗せした金額を自社に支払わせて、その増額分を取引先を経由して受け取ると違法になります。発注会社は、本来であれば、支払う必要のない増額分について損しているからです。
このような場合、発注会社の担当者には、会社に対する詐欺罪と背任罪が成立する可能性があります。取引の担当者についても、同罪の共同正犯が成立するでしょう」
いわゆる「接待」とは、どう違うのだろうか。
「多くの競合会社から自分の会社を選んでもらうために、発注元の大手企業の担当者と懇意になって、接待を繰り返すということも、よくおこなわれています。この接待の費用が発注を受ける側の会社の自腹であれば、何も問題はありません。
しかし、本来の代金であるかのように見せかけて、上乗せした金額を請求し、その分を原資に接待していれば、不健全な状況といえます。そのことについて、発注会社の担当者も認識しているのであれば、その担当者にはやはり詐欺罪と背任罪が成立すると考えられます」