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2014年04月26日 13時20分

企業研究者の「発明」は誰のもの? 「特許は企業のもの」という法律ができたら・・・

企業研究者の「発明」は誰のもの? 「特許は企業のもの」という法律ができたら・・・
企業に所属する研究者の発明が、その企業に莫大な利益をもたらすことがある

企業に所属する研究者が職務上なしとげた発明を「職務発明」という。その「特許」は誰のものなのかという問題が、クローズアップされている。今年3月から産業構造審議会の特許制度小委員会で、具体的な法改正の方針について、話し合いが始まった。

現行ルールだと、職務発明の特許についてはこんな風に決まっている。(1)そもそもの特許は「発明した従業員」に帰属する(2)企業は契約などによってその特許を承継できるが、その際には「相応の対価」を発明者に支払わなければならない。

ところが経団連など産業界は、職務発明について、特許を「そもそも企業に帰属」させるよう要望している。政府も「産業競争力強化に資する措置を講ずる」として、現行制度の抜本的な見直しを図るとしている。

もし、特許が「そもそも企業に帰属」ということになれば、現行ルールとはどんな違いが生じるのだろうか。メーカーでのエンジニア経験があり、特許問題にくわしい岩永利彦弁護士に聞いた。

●発明者にとっては「不利」になる

「職務発明が法人帰属となれば、現在発明者が持っている『相応の対価を請求する権利』が失われることになります」

そうなると、発明した従業員にとっては、不利になるだけ?

「そうですね。産業界は、社内規定などによって、『発明報酬』を支払うことで、発明者に配慮するとしています。しかし、これはあくまで『配慮』で、産業界のアピールにすぎないという見方もあります」

岩永弁護士はこのように述べる。そもそも、産業界はなぜそのように変更したいのだろうか?

「産業界は、『相応の対価』をめぐって訴訟になり、巨額の『対価』を支払わなければならなくなるリスクをおそれているようです。たとえば、(a)訴訟リスクがあるため製薬会社が研究開発拠点を日本に置けないとか、(b)エンジニア優遇で営業職などは相対的に冷遇することになる、などと主張しています。

ただ、こうした主張にはあまり合理性がないように思われます。(a)については、海外の製薬会社が昨今、研究開発拠点を日本に移しているという報道もあり、説得力が感じられません。

また、もし(b)のように言いたいのなら、発明だけを保護し、営業ノウハウなどを保護しない特許制度そのものがおかしいと主張すべきでしょう。それは、職務発明特許の帰属問題とは、次元の違う話です」

●産業界が言うほどのリスクは「現時点で存在しない」

企業が恐れる「訴訟リスク」、つまり特許の「対価」が大きくなりすぎるという危険はないのだろうか。

「かつては対価をめぐる訴訟が、少数とはいえ起きていました。しかし、2004年に規定が改定され、『相応の対価』の算定方式が法律で定められて以降、そうした争いは基本的に起きていません。

今でも大きな問題として取り上げられているのは、04年以前の事件です。つまり、産業界が考えるほどの訴訟リスクは、現時点で存在しないといっていいでしょう」

一部には、「法人帰属」が既定路線だという報道もあるようだが・・・。

「それでも、議論は端緒についたばかりで、法人帰属となるか、それとも従来とおりのままとなるかは、まだ決定されていません。

3月に始まった委員会のメンバーには、職務発明の経験もある現役の発明者も含まれています。

日本的な会議の慣行からすると、彼らがどれほど発言するかは未知数ですが、委員会の議事録は毎回取られ、公開されると決定しています。今後は各委員がどのように発言し、また発言しなかったかを厳しくチェックしていく必要があるでしょう」

岩永弁護士はこのように指摘していた。

職務発明に関して、どのような形で、どれくらいの対価が支払われるのが、はたして適切なのか。企業側の都合だけでなく、研究者のやる気向上や、海外流出防止といった観点も加味したうえで、バランスの取れた制度を作り上げる必要があると言えそうだ。

(弁護士ドットコムニュース)

取材協力弁護士

岩永 利彦弁護士
ネット等のIT系・ソフトウエアやモノ作り系の技術法務、知的財産権の問題に詳しい。メーカーでのエンジニア、法務・知財部での弁理士を経て、弁護士登録した理系弁護士。著書「知財実務のセオリー 増補版」及び「エンジニア・知財担当者のための 特許の取り方・守り方・活かし方 (Business Law Handbook)」好評発売中。

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