入試だけでなく、学校の定期テストも「過去問」で腕試しをしてみたい。そんなニーズに応えるためか、各地の公立中学・高校の定期テスト問題をネットで販売するサイトが登場したのだが、今年2月に閉鎖してしまったようだ。
報道によると、このサイトは昨秋以降、「情報公開制度」を利用して、計44の自治体から公立・高校の定期テスト問題を手に入れていた。「過去問」は、1回分200円で販売していたが、こうした利用目的は自治体側に知らせていなかったという。
「過去問」はルールに基づいて情報公開された公文書だが、そうした文書の販売にも、著作権法上の問題は生じるのだろうか。著作権法にくわしい梅村陽一郎弁護士に聞いた。
●定期テストは「著作物」なのか?
「今回の論点は、公立学校の定期テストの問題が『著作物』と言えるかどうか、という点でしょう。もし著作物でないのであれば、自治体に無断で複製・販売しても、著作権法上は特に問題がないということになります。
学校の定期テストは、学校教育の達成度を定期的に確認するためのものです。したがって、科目によっては出題の幅が狭かったり、どの学校でも大して変わらない、ありふれた試験問題となっているかもしれません。
しかしながら、独特の表現による出題など、先生の個性が表れる試験問題もあるでしょう。したがって、もし『創作性がある』と認められれば、学校の定期テストでも『著作物』と判断される可能性はあります」
●著作物の利用には原則「許諾」が必要
梅村弁護士はこのように指摘する。もし、著作物と判断されれば、どうなるのだろうか?
「もし、定期テストの内容が『著作物』と判断されれば、その利用は、著作権法に従った形で行う必要があります。原則的には、権利者の利用許諾が必要となるでしょう。
例外として、それが私的使用目的の範囲内であれば、無断利用も合法になります。たとえば、学校の生徒さんや親御さんが、自分で使うために、その試験問題をコピーするのであれば問題はないでしょう。
しかしサイトの業者が、入手した試験問題を販売するということは、私的使用目的とはいいません。無断複製として、複製権などの侵害になってしまう可能性があるでしょう」
梅村弁護士はこのように指摘していた。
なお、一般的に書店で売られている大学や高校の入試過去問は、出版社が大学等から許可を得るのが通例なのだという。