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2015年05月31日 11時00分

「フォントになんでお金かかるの?」発言に批判殺到ーー法律の保護はどうなっている?

「フォントになんでお金かかるの?」発言に批判殺到ーー法律の保護はどうなっている?
様々なフォント

フォントになぜお金がかかるのかーーふだんパソコンやスマホで何げなく使っている文字の「フォント」をめぐるやりとりがツイッターに投稿され、話題になった。

投稿者は、通勤電車でノートパソコンを開きながら電話していた人の会話を聞いたそうだ。「フォントって字でしょ?なんでお金かかるの?」「あーもういいいい、普通のでいいですよ」「字に金かかるってオカシイでしょ」

仕事上の取引先と、フォントの使用料をめぐって話し合っていたとみられる。通話していた人は、さまざまなフォントをタダで利用できるのが「当然」と考えていたようだ。

このツイートは7000回以上リツイートされ、「フォントをバカにするな!」「一般のフォントに関する認識って所詮こんなもんよね」「フォントひとつ作るのにいったい、おいくら億円かかると思ってるのか」といった怒りの声が多く寄せられた。

たしかに、フォントにもさまざまデザインがあり、フォントしだいで文章の印象は大きく変わる。そうならば、フォントも、写真やイラストのように「著作権」で保護されているのだろうか。唐津真美弁護士に聞いた。

●フォントを「プログラム」と「デザイン」に分けて考える

「『フォント』というと、通常、印刷物などに使うために統一的なコンセプトに基づいて作成された文字や記号等のデザインのセットが思い浮かぶでしょう。

このような文字のセットは、『タイプフェイス(印刷用書体)』とも呼ばれます。『フォント』という用語は、タイプフェイスを具体的な表示・印刷等に利用できるようにするためのコンピュータプログラムを含む概念として使われることもあります」

つまり、フォントのデザインとフォントを利用するプログラムをセットで「フォント」と呼ぶこともあるわけだ。

「コンピュータプログラムは、著作権で保護されています。ですから、フォントのプログラムを無断で複製したり改変したりすれば、原則として著作権侵害が成立することになります。

一方で、タイプフェイス、つまりフォントの『デザインそのもの』の法的な保護は簡単ではありません」

●フォントに著作物性はあるのか

フォントデザイン(タイプフェイス)の著作物性については、どのように考えればいいのだろうか。

「最高裁の判例は、『タイプフェイスの著作物性』を完全には否定していないものの、その特殊性を考慮して、著作権保護を受けるためには、次のような条件をともに備えていることが必要だとしました。

(1)従来の印刷用書体に比して顕著な特徴を有するといった独創性

(2)それ自体が美術鑑賞となり得る美的特性」

独創性や美的特性をどう判断するのだろうか。

「『独創性』の要件を満たすためには、作成者の何らかの個性が表現されているだけでは足りず、既存の書体と比較して『顕著な特徴』と言えるような、より強度の個性が要求されていると考えられます。

書道家が書いたような美術作品のような書体であればともかく、一般的なフォントのデザインが著作権保護を受けるためのハードルは、相当高いと言えます」

他の法律では保護されないのだろうか。

「外国では、一定の要件を満たすタイプフェイスを『意匠』として保護する国もあります。しかし、日本の意匠法は『物品』という『形あるモノ』の外観のデザインを保護しています。形のないタイプフェイスへの適用は難しいと思います」

日本で過去に保護された例は、ないのだろうか。

「改正前の不正競争防止法に基づいて、他人の開発したフォントを無断で組み込んだフロッピーディスクの販売差止が認められた例があります。

しかし、現行法の『商品形態の模倣』の規定を、形のないフォントに適用するのは難しいでしょう。不正競争防止法による保護も容易ではありません」

●勝手に使ったら、賠償請求される可能性

結局、フォントのデザインを権利として保護するのは難しいということだろうか。

「そんなことはありません。

アルファベットと比較して、字数がはるかに多い日本語のフォントの創作には長い時間と費用が費やされています。そのフォントをデッドコピー(完全な模倣)して勝手に利用されてしまうと、開発者は開発費用を回収できず、経済的な損害を受けることになります。

他人が開発し、ライセンスによって利益を上げているフォントであることを認識しながら、デッドコピーして商業的に利用するような場合は、民法上の不法行為が成立し、損害賠償を請求される可能性があると思います。

また、フォントの開発者とユーザーの間にフォントの利用に関するライセンス契約が締結されている場合、契約当事者は契約に拘束されます。ユーザーが契約に違反してフォントを不正に使用した場合には、契約違反に基づく責任を負うことになります」

唐津弁護士はこのように述べていた。

(弁護士ドットコムニュース)

唐津 真美弁護士
弁護士・ニューヨーク州弁護士。アート・メディア・エンターテイメント業界の企業法務全般を主に取り扱う。特に著作権等の知的財産権及び国内外の契約交渉に関するアドバイス多数。第一東京弁護士会・法教育委員会副委員長、東京簡易裁判所・司法委員、第一東京弁護士会仲裁センター・仲裁人。
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