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シェアハウスの「同居人」が家を荒らして「行方不明」 どう対処すべきか?
ひとつの住居を複数人で共有して暮らす「シェアハウス」が注目を集めている

シェアハウスの「同居人」が家を荒らして「行方不明」 どう対処すべきか?

ひとつの住居を複数人で共有して暮らす「シェアハウス」が注目を集めている。シェアハウスでは、寝るための個室があるものの、リビングや台所・浴室などは、「共有スペース」を利用するのが一般的だ。初期費用や光熱費を安く抑えられることから、若者を中心に人気がある。

そんなライフスタイルはテレビドラマでもモチーフとなり、「自由で楽しそう」「オシャレ」といったイメージが持たれている。だが一方で、他人同士が近い距離で暮らすことのリスクも忘れてはいけない。

先日も、東京都内のあるシェアハウスの入居者のひとりが、家の中を荒らしたまま行方をくらませたという話がツイッターで話題になったばかりだ。部屋に布団や衣類が散らばり、共有の壁や浴室にはリキュール酒が撒き散らされているという生々しい写真がアップされている。

問題行動を起こしたとされる入居者は、以前も同居人とトラブルを起こしており、退去を求められていたという。このような場合だと、弁償を求めて話が余計にこじれるケースもあるだろう。こういったシェアハウスでのトラブルには、どう対応すればよいのだろうか。瀬戸仲男弁護士に聞いた。

●シェアハウスの「リスク」をしっかりと自覚すべき

「シェアハウスにはさまざまな形態があります。トラブル防止や解決のためには、契約書等(規約書、合意書、ルールを定めた書面など)は必須と言えますが、なかには契約書等がないケースもあります。またトラブルが発生したときには、管理者がいれば協力を求めたり責任を追及したりできますが、そうでなければ自分たちで問題を解決しなければならず、相当わずらわしいことになりがちです」

瀬戸弁護士はこのようにシェアハウスのリスクを指摘したうえで、今回のケースで考えるべき4つのポイントを挙げた。

「いなくなった人のことを仮に『A君』として、以下の4つについて考えてみます。

(1)A君が負担するはずだった家賃等はどうなるのか

入居者一人ひとりが家主と契約する形のシェアハウスもあるようですが、まだ多くはないようです。個別契約ではない場合には、あとに残った人がA君の負担分を分担しなければなりません。もし負担できなければ、家主に対する関係で家賃不払い(債務不履行)となり、契約解除や明渡(退去)を迫られることもあり得ます。そうならないためには、いったん負担したうえで、その立替え分をA君に請求するという選択肢も含めて考え、対処することになります。

(2)A君が汚した部屋・浴室・壁などはどうなるのか

入居者が退去する際には、借りたときの状態に『原状回復』をしなければなりません。その負担は将来の入居者に押し付けるわけにもいきません。そもそも、汚れたままで生活していくわけにもいかないでしょうから、結局のところ今の入居者が清掃や修理等をして、その費用をA君に請求することになりそうです。

(3)A君が残していった布団や衣類等(動産)はどうなるのか

これらはあくまでもA君の所有物ですので、対処の仕方が難しいところです。A君の実家がわかれば、家族に連絡して対処してもらうことも考えられますが、法的な強制力はありません。法的には『不在者財産管理人』の選任を家庭裁判所に申立てる方法(民法第25条以下)が考えられますが、時間的にもコスト的にも現実的とは言えなさそうです。

(4)A君に慰謝料(精神的苦痛の賠償)を請求できるのか

慰謝料は(1)と(2)をあわせて請求することになるでしょう。ただし、物を汚されたような場合に慰謝料が発生するかどうかは微妙です。賠償請求は、物の状態を回復する範囲内だけにとどまると考えるのが、一般的だと思われます」

つまり、法的な観点からは、トラブルを起こした人にお金を請求することは可能なようだ。だが実際にこういった請求をすべきかどうかについては、判断が分かれるところだろう。

「ご指摘の通り、弁償を求めて話がこじれる可能性も少なくありません。シェアハウスは本来、協調性のある人が選択すべきスタイルですが、迷惑をかけるような『共同生活失格者』が紛れ込むこともあり得ます。利用の際にはその点を覚悟すべきでしょう。そのようなわずらわしさを避けたいのなら、多少の出費増や独居の寂しさについては我慢して、ワンルームマンションなどを賃借するのが賢明だと思います」

順調な時にはバラ色に思える共同生活も、トラブルが起きれば一転しないとも限らない。シェアハウスを利用する際には、こういったリスクについてもきちんと踏まえた上で、決断すべきと言えそうだ。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

瀬戸 仲男
瀬戸 仲男(せと なかお)弁護士 アルティ法律事務所
アルティ法律事務所代表弁護士。大学卒業後、不動産会社営業勤務。弁護士に転身後、不動産・建築・相続その他様々な案件に精力的に取り組む。我が日本国の歴史・伝統・文化をこよなく愛する下町生まれの江戸っ子。

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