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楽しい夏を台無しにする「不届き者」 人に向けて花火発射、悪ふざけの代償は
画像はイメージです(Fast&Slow / PIXTA)

楽しい夏を台無しにする「不届き者」 人に向けて花火発射、悪ふざけの代償は

花火といえば、一夏の思い出を彩る重要アイテム。ですが、例年人に向けて発射する不届き者がいます。

たとえば、今年5月、北海道の少年5人が帯広警察署にロケット花火など合わせて100発以上を発射。けが人こそいなかったものの、全員が威力業務妨害の疑いで7月に逮捕されています。

ニュース記事を検索すると、この事例のように警察に向けて発射した事件が多く出てきます。ここ数年の例をあげると、次のような感じで、ほとんどが少年事件でした。

・暴走行為を撮影していた警察官に打ち上げ花火を発射。10人逮捕(2016年10月)
・警察署にロケット花火を発射。男性2人逮捕(2016年6月、香川県)
・警察署に手持ち花火数発を投げつける。少年5人逮捕(2016年6月、岡山県)
・警察署や交番にロケット花火を打ち込む。少年4人を逮捕(2015年11月、愛知県)

本人たちは悪ふざけのつもりでも、いろんな意味で笑えない結果が出ています。人に向けて花火を発射するリスクを西口竜司弁護士に聞きました。

●暴行や傷害の罪に問われる可能性も

――人や店舗に向けて発射すれば、犯罪ですよね?

当然のことですが、人に向けた場合、刑法208条の暴行罪にあたります。2年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料(1000~9999円)です。

また、その結果、やけど等のけがを負わせた場合、刑法204条の傷害罪にあたります。こちらは15年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられます。

また、店舗に発射したような場合、冒頭の事例のように刑法234条の威力業務妨害罪に該当します。3年以下の懲役または50万円以下の罰金です。

いずれにしても人の身体等にかかわることですので非常に重い犯罪ということになります。

ーー特に警察に向けて発射する事例が多くあるようです

警察官に対して発射した場合、刑法95条1項の公務執行妨害罪にあたります。また、同時にけがをさせたような場合、別途傷害罪等も成立します。

少し法律的な話をしておきますと、威力業務妨害罪が成立しないのかという疑問がありますが、警察官は自力で妨害を排除する能力を持っていますから、この犯罪は成立しないと考えるのが通常です。

ーー冒頭のケースで「威力業務妨害」に問われているのは、「警察官」ではなく「警察署」が狙われているところが大きいのですね

●民事上の責任もありえる

――もしも花火で人や建物を狙った結果、火災が起きた場合はどうなりますか?

なかなかないとは思いますが、刑法108条の現住(現在)建造物放火罪が成立する可能性があります。万一、現住(現在)建造物放火罪になると、何と死刑、無期または5年以上の懲役が科せられることになります。

そうでなくても、民事上も不法行為に基づく損害賠償請求の可能性があります。当然責任は問われるのです。

いずれにしてもこのような行為は危険です。遊び半分でやった代償は極めて大きいものといわざるを得ません。花火は常識の範囲内で楽しむものですよ。

今年も花火大会の時期が来ましたね。私は人混みが嫌いなんで行きませんが、皆さん楽しんできてください。人に向けてではなく、天空高く上がった花火は綺麗ですね。

プロフィール

西口 竜司
西口 竜司(にしぐち りゅうじ)弁護士 神戸マリン綜合法律事務所
大阪府出身。法科大学院1期生。「こんな弁護士がいてもいい」というスローガンのもと、気さくで身近な弁護士をめざし多方面で活躍中。予備校での講師活動や執筆を通じての未来の法律家の育成や一般の方にわかりやすい法律セミナー等を行っている。SASUKE2015本戦にも参戦した。弁護士YouTuberとしても活動を開始している。今年からXリーグにも復帰した。

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