2019年04月13日 09時16分

「裁判所の存在意義を揺るがす」 那覇簡裁「無効令状」問題、最高裁の対応は?

「裁判所の存在意義を揺るがす」 那覇簡裁「無効令状」問題、最高裁の対応は?
最高裁判所

2018年11月13日、裁判官の押印がないまま、逮捕令状と捜索差し押さえ令状を発付した那覇簡裁。押印のない令状は「無効」だが、朝日新聞(2018年11月30日)などによると、沖縄県警は無効な令状をもとに、容疑の男性を逮捕していたという。

これに法曹関係者からは、驚きの声があがった。この問題を取り上げた弁護士ドットコムニュースの記事(「自動発券機」どころじゃない 那覇簡裁の「無効令状」、刑事司法の信頼揺らぐ」)では、刑事事件に詳しい萩原猛弁護士が「裁判所に対する信頼を失墜させた極めて重大な問題というべき」とコメントしている。

●再発防止のため「周知徹底」おこなう

最高裁広報課の担当者によると、最高裁は今回の事件を受け、裁判官の押印がないまま捜査機関に令状を公布した事例などがあるか調査をおこなったという。しかし、裁判官の審査にあげられていなかったものは見当たらなかったそうだ。

また「事務処理を適正におこなうことの重要性や、関係各庁において適切な事務処理をおこなうことなど基本的な体制について周知徹底した」(広報課)と話す。

具体的には、12月7日付で事務総局刑事局長から地方裁判所長宛に書簡を送ったという。そこで編集部は最高裁に文書開示請求(2月15日付)。3月20日付で開示の許可がおりた。送られてきた書簡の謄写には、次のように書かれていた。

「令状事務は、国民の人権に直接かかわる重大なものであり、裁判官の審査を経ていない令状の草稿により執行が行われるという事態が発生することは、国民の裁判所に対する信頼を大きく損なうものであり、誠に遺憾なものであるといわなければなりません。

ついては、担当の裁判官及び職員が、令状事務処理を適正に行うことの重要性を再認識するとともに、各庁において適切な令状事務処理態勢が確立されているか確認の上、同態勢に基づく事務処理が日頃から確実に履践されるよう、関係職員に周知徹底してください。

なお、管内の簡易裁判所に対しては、貴職から周知してください」

那覇簡裁の担当職員の処分について、広報課の担当者は「事実関係を踏まえ、適切に対処されるものと承知している」と回答した。

●「裁判所の存在意義すら揺るがしかねない不祥事」

果たして、この通知だけで十分だったのか。

萩原弁護士は、「この通知だけでは不十分です。今回の問題は、裁判所の存在意義すら揺るがしかねない不祥事ですから、原因を徹底究明するべきです」と指摘する。

「『令状』とは、裁判官が自ら主催しておこなった『令状裁判』という『裁判』の結果を明らかにした裁判官の意思表示であり、その性質は公判審理の結果を示す『判決書』と同様の『裁判書』です。

今回の問題は、行政機関において、補助公務員が決裁文書の草稿を作成したものの、上司が決済印を押捺し忘れたといった場合とはまったく違います。

裁判官が裁判をしていないのに、裁判をした裁判官しか作成できない『裁判書』が、裁判所から裁判官の名前で(押印はないが)外部に発付されてしまったわけです。

最高裁広報課が言うような単なる『事務処理の適正』の問題に矮小化すべきではなく、なぜそのような事態が生じたのか原因を究明して、その結果を国民に明らかにすべきです」

●裁判官のチェックがされないまま発付

沖縄簡裁は何をミスしたのか振り返りたい。

刑事訴訟法は、裁判官が記名・押印しなければならないと規定している。なぜ、押印のない無効な令状が2つも発付されてしまったのか。

琉球新報(2018年12月1日)によると、いずれも職員が手続きを誤り、裁判官によるチェックがされないまま発付されたようだ。

逮捕令状の不備に気づいたのは、容疑の男性が送致された那覇区検だ。検察は男性を釈放したうえで緊急逮捕したという。無効な差し押さえ令状で押収した物も返還されたようだ。

逮捕や捜索の差し押さえをされれば、自由を制限されたり、強制的に住居に立ち入られたりするなど大きな負担を負うことになる。令状の発付に第三者である裁判官のチェックと許可が必要なのは、捜査の対象になった人に不当な負担を負わせないようにするためだ。

●裁判官の審査にあがっていない過去の事例はなし

裁判所は令状を言われたままに出すだけの「自動発券機」ではないかーー。

このように揶揄する声はかねてから上がっていた。今回はそもそも裁判官の審査にさえあがっていなかったことから、裁判所のあり方を問題視する声も少なくない。

無効な令状が発付されれば、司法への不信は広がるばかりだ。不当に逮捕されたり、住居に侵入されたりする恐れもあれば、冤罪を生み出すことにもなりかねない。

(弁護士ドットコムニュース)

取材協力弁護士

萩原 猛弁護士
埼玉県・東京都を中心に、刑事弁護を中心に弁護活動を行う。いっぽうで、交通事故・医療過誤等の人身傷害損害賠償請求事件をはじめ、男女関係・名誉毀損等に起因する慰謝料請求事件や、欠陥住宅訴訟など様々な損害賠償請求事件も扱う。

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