コンビニのセルフ式コーヒーマシンで、100円コーヒーのカップに、150円のカフェラテを注いで逮捕された60代の男性が、すでに釈放されていたことが2月5日に報道された。
報道によると、男性は1月21日、福岡県警に現行犯逮捕された。常習者だったようで、オーナーがマークしていたそうだ。1月30日付で処分保留のまま釈放された。
コンビニ関係者に話を聞くと、セルフなのを良いことに、同様の手口で50円分の不正を働く客は一定数いるという。それだけに「逮捕されることもある」というメッセージが発せられたことを歓迎する声が多い。
一方で、窃盗とはいえ、50円の被害で逮捕したことや、10日間も身柄を拘束したことについて、その必要性を問う声もある。刑事事件にくわしい足立敬太弁護士に見解を聞いた。
●在宅もありえる限界事例?
――被害額は50円でしたが、金額の多寡で犯罪が成立したり、しなかったりするのでしょうか。
「『可罰的違法性』といって、刑罰に値する違法性がなければ犯罪として成立しないという考え方があります。
ただ、裁判例などでは1円でも犯罪は成立しています。構成要件を満たしているのなら、今回は被害額50円程度だからといって『少額だから』という理由で犯罪は成立しない、とは言えないでしょうね」
――10日間の拘束をどう考えますか?
「捜査は通常、どういう刑事処分が予想されるかを見据えて行います。被害額が50円なら、不起訴処分とか、金額的に示談も成立しやすいと思いますし、せいぜい罰金程度ということも十分予想されます。
10日間の拘束は重すぎる、バランスを欠くというのは一理あると思います」
――勾留せず、在宅捜査という方法もあり得たのでは?
「裁判官は、勾留を請求してきた検察官に『在宅捜査ではダメなんですか』などと問い合わせたとは思います。もしかしたら、報道されていない事情もあったのかもしれません。
もちろん、裁判官によっては勾留を認めないという判断もあったでしょう。勾留許可も勾留却下もどちらもありうる『限界事例』だったといえるかもしれません。勾留許可がただちに不当とまでは言えないと思います。
ただし、本件で勾留延長はさすがに認められなかったでしょうが…」
――テレビを中心に一部メディアでは、逮捕された男性の実名も報道されました。
「配慮すべきだったのではないでしょうか。実名が出るようなものではないですよね」