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ゴーン氏再逮捕、無罪見通し2割 「拘束長期化おかしい」「形式犯といえど犯罪」弁護士たちの見方
日産自動車ニュースルームより

ゴーン氏再逮捕、無罪見通し2割 「拘束長期化おかしい」「形式犯といえど犯罪」弁護士たちの見方

日産自動車の会長だったカルロス・ゴーン氏(逮捕後、解任)ら2人が11月19日、東京地検特捜部に金融商品取引法違反の疑いで逮捕、12月10日には、同法違反の疑いで再逮捕となりました。

ゴーン氏の2回の逮捕における疑いは、ともに役員報酬についての有価証券報告書の虚偽記載と報じられています。1回目の逮捕容疑は、2011年3月期から2015年3月期について(12月10日、起訴)、2回目の逮捕容疑は、2016年3月期から2018年3月期において、役員報酬を記載しなかった疑いです。

共同通信によると、再逮捕について東京地検次席検事は、裁判所の令状を根拠に、「適正な司法審査を経ている」と説明。一方で、海外のメディアなどからは、当初から日本の刑事司法における長期勾留への疑義が出ており、再逮捕により批判が強くなると考えられます。

また、事実関係は不確定な部分があるものの、金商法違反という「形式犯」との見方もある犯罪での逮捕への疑義もでています。ゴーン氏らの高額報酬が株主総会で問題視されてきた経緯があるのは事実です。一方で、ゴーン氏は報酬について「確定していない」「適切に処理した」などと主張していると伝えられるほか、年間10億円前後の記載されていない報酬額が、最近5年で見ると毎年5000億円以上の利益を出す日産への株主の投資判断を左右する「重要な事項」に該当するかも争点になっています。

今回、弁護士ドットコムに登録している弁護士80人に、ゴーン氏の再逮捕の妥当性や、裁判の見通しについて聞きました。

●再逮捕「妥当でない」が6割超

ゴーン氏が時期の違いがありながらも同じような疑いで再逮捕されたことについて聞いた結果、以下のような結果となりました。

(1)妥当→23票(28.7%)

(2)妥当でない→51票(63.7%)

(3)わからない・なんとも言えない→6票(7.5%)

母数は少ないながらも、6割以上の弁護士が「妥当でない」との見解を示しました。

現在報道されている金商法違反の疑いについての裁判の見通しを聞いた質問の結果は以下の通りです。

(1)有罪になると見通す→34票(42.5%)

(2)無罪になると見通す→18票(22.5%)

(3)わからない・なんとも言えない→28票(35%)

有罪見通しは4割程度となりましたが、無罪との見通しも2割を超えました。日本における起訴後の有罪率は99%を超えることを考えると、無罪見通しは少なくないと言えそうです。

自由記述で、コメントも多く寄せられました。主なものを紹介します。

●「刑事司法の慣行を根本から議論する必要がある」

【逮捕・勾留】

基本的に最初の逮捕時から容疑のあることが分かっている事実であるならば、最初の逮捕、拘留時に合わせて捜査を尽くして迅速に事件処理を行うべきで、わざわざ再逮捕、再勾留などして身柄拘束期間の長期化を図るべきではない。これは一般の刑事事件すべてに当てはまる、日本の刑事司法の最大の問題点であると考える。

勾留期間が長期過ぎるという意見があるようだが,フランスの勾留期間の長さを知れば,全く問題がないことがわかるはず。形式犯といえども,犯罪は犯罪であって,見逃して良いはずはない。

仮に本件で問題とするのであれば、日本の刑事司法の慣行(同じ罪名で勾留が何度も認められる)を根本から議論する必要があると思う(時期の違う万引きで何度も再逮捕されるのは非常によくある)。その際、捜査機関の実務(捜査機関も人的にも金銭的にも資源が限られている中で、逮捕勾留せずに巨大な事件を捜査しなければならないこととの均衡)もきちんと議論する必要がある。

ゴーン氏を勾留し続けている今の状況は疑問。ゴーン氏ほどの有名人が逃げられるとも思えないし、口裏合わせなどによる証拠隠滅にどれだけ具体的実効性があるといえるか。重大事案だから勾留しておけばいいと漫然と考え、検察と裁判所が具体的可能性の検討を怠っているように思えます。

【特捜や捜査のあり方】

特捜が功をあせり、泥沼にはまった印象。日本の刑事司法の悪い部分が国際社会に明るみになった点ではよかったのかもしれない。

政治家を逮捕できない特捜部の自己アピールの面が少なくないように思う。在宅事件で十分捜査可能。

取調べの可視化に引き続き、取調べへの弁護士の立会いについてこれを認める方向への機運が高まればと思ってます。

報道をみる限りは,権力闘争に刑事事件を利用していると推測され,このような刑事事件の利用と恣意的な捜査は,法制度に対する信頼を損ねる。

ゴーン氏の粉飾決算を見逃せば、多くの会社が雪崩を打って粉飾決算に走るだろう。そうなると、日本の会社の財務諸表は世界に信用されなくなり、日本経済は崩壊する。粉飾決算に対しては、厳正に対応するべきである。

●「ゴーン氏の責任を追及することが日産再生の第1歩に」

【日産】

西川CEOが引き続き日産のCEOを続けるばかりか、実質親会社のルノーとの共通の代表に就こうと画策していることは、全く理解できない。

日産内部の争いに検察が利用されたような気がする

ゴーンのみに焦点を当て,日産の責任については無視をする姿勢には賛同できない。

「ゴーン改革は正しかったが、途中からゴーンが私的利益追求に走りおかしくなった。」という見解がマスコミ報道の多数派を占めているが大いに疑問だ。コストを削減することで帳簿上は「利益」を生み出し経営を改善したといわれるのだが、「コストカット」の中身は、つまりは、当初の大量リストラ・工場閉鎖、リーマンショック時の大規模非正規切りなどが中核であり、それはつまり労働者を犠牲にして「利益」を帳簿上生み出したということに他ならない。ゴーンらの違法を暴き、その責任を追及することは日産再生の第1歩となりうるものである。

再逮捕事実も、当初の逮捕容疑と同じ虚偽記載で「直近3年分」を対象とするものであり、実質的には「包括一罪」と解すべきであり、同一事実での不当な逮捕・勾留の蒸し返しである。この程度の「罪状」で、検察に情報提供して、取締役会での議決権を奪ってゴーン氏らの代表取締役解職を行った日産経営陣は、コーポレートガバナンス上許されない。

実際に受け取っていないならばそれを報告書に記載しなかったからといって虚偽記載には当たらないと思う。検察庁の解釈によると、日産は、この期に及んでも、ゴーン氏に対して、予定通りにこれからも何億円もの報酬を支払わなければならない義務を免れないということになるが、それこそ日産の株主の理解は得られるのであろうか?

【その他】

企業法務に通じた弁護士でも確定的な回答を述べることができない事項の記載の有無をめぐって、有報の作成責任者でもない人物がいきなり逮捕され、社長やCFOはお咎めなし、身柄が拘束されて反論できない状況で、捜査機関がリークした一方的な情報をマスコミが垂れ流す。司法も、行政も、マスコミもすべてが腐りきっている。

日弁連や各単位弁護士会は、あんなに「人権」というが、どうして取調への弁護人立会が認められていない我が国の制度が先進国で最も非民主的・人権侵害であるとの声を大きくあげないのか?その程度の人権意識なのか?

(弁護士ドットコムニュース)

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