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「正当防衛」が認められるケースって? 傷害致死事件で男性に無罪判決
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「正当防衛」が認められるケースって? 傷害致死事件で男性に無罪判決

東京地裁は9月22日、口論になった同僚を殴って死なせたとして傷害致死の罪に問われた男性(45)に無罪を言い渡した。

報道によると、男性は2016年11月13日、東京都北区の民泊施設で、同僚の顔などを複数回殴って死亡させたとして、傷害致死罪に問われていた。裁判長は「暴行が一方的だったとは認められない。暴行が正当防衛の程度を超えたことが証明されていない」などと述べたという。

正当防衛とは、具体的にはどのようなものだろうか。一般的に正当防衛が認められる場合というのは、どういったケースなのか。岩井 羊一弁護士に聞いた。

●身を守るために相手を攻撃する「正当防衛」

正当防衛とは、どのようなものか。

「正当防衛とは、刑法36条で『急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為は、罰しない』とされている行為をいいます。

例えば、自分が殺されそうになった場合に、身を守るために相手を攻撃する場合、その行為は傷害罪や殺人罪に当たる可能性があります。しかし、緊急の場合には警察を呼んで守ってもらう暇がありません。その場合には、傷害罪や殺人罪に当たる行為であっても違法とせず、無罪になります」

●認められるのは「国に助けを求める暇がない場合」

どのような場合に正当防衛が認められるのか。

「正当防衛が認められる場合は、急迫不正の侵害に対し、やむを得ない行為に出たことが必要です。

重要な要件は、『急迫』な攻撃を受けたときでなければならないということです。国に助けを求める暇がない場合に初めて許されるのです。

また、反撃行為の必要性や相当性が認められなければなりません。不正な行為に対する反撃であってもやり過ぎは認められないのです」

今回のケースでは、傷害致死の罪に問われた男性が無罪になった。どういった点がポイントだったのだろうか。

「検察官は、犯罪の成立について立証責任があります。正当防衛の事実があったことは被告人、弁護人が立証するのではなく、検察官が正当防衛の成立しないことを立証しなければなりません。

報道では、裁判長が『暴行が正当防衛の程度を越えたことが証明されてない』などと述べたとされています。これは、反撃がやりすぎであったという検察官の立証がされていないことから、正当防衛を認めたものと考えられます」

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

岩井 羊一
岩井 羊一(いわい よういち)弁護士 岩井羊一法律事務所
過労死弁護団全国連絡会議幹事、日弁連刑事弁護センター副委員長 愛知県弁護士会刑事弁護委員会 副委員長

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