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山火事原因の3割を占める「たき火」、燃え広がったらどんな法的責任が生じる?
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山火事原因の3割を占める「たき火」、燃え広がったらどんな法的責任が生じる?

宮城県栗原市の山林で5月8日、大規模な山火事が発生した。火災が発生した午後0時ごろには市東部に暴風警報も出ており、火は住宅にまで燃え移って計11棟が全半焼した。出火原因は調査中だが、山林の中にたき火をしたような跡があったとも報じられている(5月9日時点)。

林野庁によれば、2010〜14年に発生した林野火災(山火事)の原因で、もっとも多いのが、「たき火」(30.4%)だ。次に「火入れ」(14.4%)、「放火」(10.4%)と続く。

たき火をしている最中に火が広がり、山や住宅まで延焼してしまった場合、たき火をした当事者に法的責任は問われるのだろうか。好川久治弁護士に聞いた。

●たき火でも、刑法の失火罪または重過失失火罪が成立

好川弁護士は「仮にたき火が原因で火が周囲の草木に燃え移り、山林だけでなく、他人の住宅まで延焼してしまったとすると、刑法の失火罪または重過失失火罪が成立します」と指摘する。

失火罪、重過失失火罪とはそれぞれどういった罪なのだろうか。

「火の取り扱いの不注意により周囲の建物等に延焼させてしまった場合に成立する罪です。

不注意の程度が著しい場合、言い換えれば、わずかな注意を払っていれば被害の発生を防げたのにその注意すら怠った場合が重過失失火罪(法定刑は3年以下の禁固又は150万円以下の罰金)、そこまで至らない場合が失火罪(法定刑は50万円以下の罰金)となります」

●「重大な過失」で損害賠償責任も

加えて、他人の山林や家屋を延焼させてしまったことに対する損害賠償責任も問題になると好川弁護士はいう。

「失火による延焼被害は、木造家屋が多く、住宅が密集する日本の住宅事情を考慮した失火の責任に関する法律により、火元に『重大な過失』がなければ、損害賠償を請求できないことになっています」

損害賠償責任が認められる「重大な過失」とは、どういったものなのだろうか。

「例えば次のような場合です。

(1)強風、乾燥の気象状況下で、杉皮等の燃えやすい材料の敷いてある屋根の上で火のついたタバコを加えて吸い殻を捨てた場合

(2)周囲に木造建物が建ち、近くに多量の乾燥したかんな屑が集積放置されている庭先で、連日晴天が続き、異常乾燥注意報、火災注意報が発令され、強風が吹いている状況下でたき火をし、延焼させた場合」

今回の山火事の発生時には、周辺地域に暴風警報と乾燥注意報が発令されていた。

「山林には燃えやすい草木が多数生育しており、厳重な防火対策を講じないまま、たき火をすれば延焼の可能性が高いと言えますので、たき火による延焼被害に対しても損害賠償責任が認められる可能性があると思います」

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

好川 久治
好川 久治(よしかわ ひさじ)弁護士 ヒューマンネットワーク中村総合法律事務所
1969年、奈良県生まれ。2000年に弁護士登録(東京弁護士会)。大手保険会社勤務を経て弁護士に。東京を拠点に活動。家事事件から倒産事件、交通事故、労働問題、企業法務まで幅広く業務をこなす。趣味はモータースポーツ、ギター。

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