お掃除ロボット「ルンバ」がたったの3000円?ーー。Amazonが12月6日~12月12日に開催したセール「サイバーマンデーウィーク 2016」で、バグとみられる事象が発生。「ルンバ870」(およそ4〜5万円)が一時、10分の1ほどの価格で購入できたと、ネットで話題になっている。
この不具合は、セット割引に関するもの。たとえば、ルンバと空気清浄機など、特定商品を組み合わせることで、通常約7万5000円の合計金額が、約3万2000円になるといった大幅な値引きがされていた。
しかも、一方の商品をキャンセルしても、セット割は適用されたまま。上の例でいえば、空気清浄機の購入を取りやめれば、ルンバを約1万6000円で入手できた。
ネットでは、「激安セット」の調査がヒートアップ。転売するため、3000円で大量購入したというユーザーの姿も見られた。システムの不具合を利用した注文に対し、Amazonが売買契約をキャンセルすることは可能なのだろうか。大村真司弁護士に聞いた。
●「契約の無効主張が認められる可能性は十分」
ーー契約を無効にできるのはどういう場合?
売り手と買い手、一方当事者の本心が、重要な部分について、合意の内容とまったく違う場合には、「錯誤」として無効主張ができます。今回の場合、「ルンバを約3000円で売る」ことについて、Amazonの錯誤が認められれば、無効になると考えられます。
ただし、本心と違う合意をしたことについて「重大な過失」がある場合には、無効を主張することは出来ません。
消費者側には、「電子契約法」により、確認画面がある等の場合には錯誤が認められないという明文の規定があります。しかし、業者側にはないため、個別案件で判断することになります。
今回の場合、断言はできませんが、通常の利用法ではこのバグによる不具合は生じないことから、Amazonの重過失にあたらず、無効主張が認められる可能性が十分あると考えられます。
ーーバグで購入したルンバを受け取っても大丈夫?
Amazonが無効主張しなければ、契約は有効なものとして扱われるので、商品を受け取ること自体は問題ありません。ただ、無効ということで、事後的に返品を求められる可能性はあります。
ーーAmazonはユーザーに正規料金を請求しても良い?
正規価格を請求することは「当然には」できません。正規価格での購入についての合意はどこにもないからです。
お互いの合意で契約条件を決め直すことは自由なので、正規料金かキャンセルかのいずれか選択する形での和解が現実的であると思われます。迷惑料的にAmazon側が多少の割引やポイント付与を行うことは考えられるでしょう。
ーーAmazonがユーザーのアカウントを凍結することについては?
ユーザーが非協力的な場合に、Amazonがアカウント凍結を実施することは考えられなくはありません。規約を見る限り、それ自体に制限はないようです。ただ、別アカウントでの取引の可能性を考えると、どこまで意味があるのかは疑問です。
ーー購入したユーザーが罪に問われる可能性は?
Amazonがうかつだった部分も否定できない事案だけに、顧客に刑事処分を求めるというのは個人的には大いに違和感があります。とはいえ、理論上の検討としては、「偽計業務妨害罪」や「電子計算機使用詐欺」の成立はありうるでしょう。