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「痴漢を捕まえることができました」JR東の駅看板に反響、実は”実績”不明…警察が明かした「表現の狙い」
「痴漢を捕まえることができました」と書かれたJR岩沼駅の看板(提供:「すこやかむいむい」さん@sukoyakamuimui)、右はJR岩沼駅(papa88 / PIXTA)

「痴漢を捕まえることができました」JR東の駅看板に反響、実は”実績”不明…警察が明かした「表現の狙い」

大学などの受験シーズンが本格化し、試験会場へ向かう受験生を狙った電車や駅での痴漢への警戒が高まっている。

そんな中、宮城県岩沼市のJR岩沼駅に掲示された看板がSNSで注目を集めた。

看板には「痴漢を捕まえることができました」と記されている。「注意喚起」ではなく「捕まえた」という"実績"を前面に出した表現だ。

写真がXに投稿されると、「犯罪抑止に効果的だ」などと肯定的な声が相次いだ。JR東日本によると、「捕まえた」と伝える啓発の看板を管内で見たのは初めてで、非常に珍しいという。

実際のところ、この看板はどのような経緯で設置されたのか。取材を進めた。(弁護士ドットコムニュース編集部・塚田賢慎)

●可視化で抑止効果、『痴漢やめよう』より効果的といった声

〈痴漢撲滅 皆様のおかげで、痴漢を捕まえることができました。ご協力ありがとうございます。岩沼警察署長・JR岩沼駅長〉(看板の内容)

2025年12月、JR東北本線・常磐線が乗り入れる岩沼駅の構内で撮影された看板の写真がXに投稿された。

駅や電車などでの痴漢関連の啓発といえば、「痴漢は犯罪」「痴漢に気をつけよう」といった注意喚起型のポスターが多かった。

最近では、周囲の乗客に被害防止への協力を呼びかけるものも出てきたが、「捕まえた」と過去形で実績を報告するものは珍しい。

画像タイトル 岩沼駅(HiroHiro555 / PIXTA)

SNSでは「可視化することには抑止効果がある」「『痴漢やめよう』より効果的かも」などの肯定的な意見が相次ぎ、広がってほしい取り組みだとの受け止めがみられる。

ただし、「皆様のおかげで、痴漢を捕まえることができました」という表現だけでは説明不足かもしれない。刑事手続きの「逮捕」を意味しているのだろうか。

●JR東日本「このような看板を見受けたのは初めてのこと」

JR東日本は、弁護士ドットコムニュースの取材に対して、この看板が現在も岩沼駅正面玄関に設置されているものだと説明した。

一方で、「捕まえた」とされる具体的な事件や事案がどのようなものだったかは、確認できないという。

また、JR東日本の管内において、痴漢をめぐり「捕まえた」と成果を示す内容の看板は珍しいものだった。

「痴漢防止などの啓蒙ポスター掲示は協力要請があれば掲示しておりますが、このような看板を見受けたのは初めてのこと」(JR東日本)

過去のことでもあり、看板が作られた経緯はよくわからないようだ。

●作成は10年以上前、具体的な事件は確認できず

さらに取材を進めると、看板の掲示について、JR東日本は「5年前から」としたが、宮城県警岩沼警察署は「2015年7月に作成したもの」と答えた。

当時、同じタイミングで2枚作られてており、もう1枚は2駅隣の名取駅にも掲示されたという。

画像タイトル MediaFOTO / PIXTA(ピクスタ) 名取駅

岩沼署長の名前が記されていることから、警察が文面を了承したうえで掲示されたことは間違いない。ただし、企画や文面作成を主導したのが警察側か鉄道会社かはわからないという。

岩沼署によると、作成時期に該当するような具体的な痴漢事件は確認できなかったという。

もちろん、10年以上前の出来事であり、把握できないだけで、実際に何らかの事件があった可能性もある。

「駅構内、電車内での痴漢は2015年当時も発生していたため、防犯、広報啓発の部分で、JRさんと協力させていただいたようです」

●警察「狙ってこの表現にした可能性も」

岩沼署は「推測になってしまうが」と前置きしたうえで次のように説明した。

「具体的な捜査事件が解決したことで感謝を伝える掲示を出すことは少なくありませんが、防犯の広報的な意味合いで『皆様のおかげで、痴漢を捕まえることができました』と過去形の形で伝えることは珍しいと思います。狙ってこの表現にした可能性はありえます」

JR東日本と岩沼署はこれまでも、駅周辺の中学校やボランティアと連携して「痴漢防止」「特殊詐欺撲滅」のチラシを配布して、啓発活動を実施してきた。

そうした地道な活動が結実したことを伝えている意図があったとも考えられる。

最近でも岩沼駅や名取駅において痴漢や盗撮事件が発生していることから、「意味のないものではなく、警察としてもありがたい看板なので、掲示を続けてほしい」(岩沼署)

●伝え方ひとつで被害減少につながれば

似たようなところでは、コンビニのトイレで「キレイに使ってください」ではなく、「いつもキレイに使っていただきありがとうございます」と表示するケースがよく知られる。

伝え方ひとつで、被害が減少するのであれば、広まってほしいものだ。今後はこうした形の啓発もひとつの手段として有効なのかもしれない。

画像タイトル 山手線ラッピングのイメージ(東京都の公式サイトから)

なお、東京都では、受験期の被害防止策として、1月15日から「痴漢は重大な犯罪です」と周知するJR山手線のラッピングトレインを運行する予定だ。

この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいています。

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