12歳と13歳の少女にわいせつな行為をしたとして、当時大阪府警の警視だった50代の男性に対し、大阪地裁は拘禁刑2年(求刑2年)、執行猶予4年の判決を言い渡した。
現役警察官による不祥事というだけでも社会的影響は大きいが、被告人は本来、少女たちを保護する立場にある生活安全課で「捜査のスペシャリスト」とも評されていた人物だった。
その立場との落差は、事件にさらなる衝撃を与えた。
被告人は30年以上にわたり警察職務に従事し、数々の不祥事も見てきたと供述している。なぜ、自身の犯行を止めることができなかったのか。法廷での様子をレポートする。(裁判ライター・普通)
●カラオケルームで繰り返された犯行
裁判官に職業を問われ、無職と答えた被告人は、事件を受けて懲戒免職となっていた。体型はやや小柄ながら、肩幅はがっしりしており、整えられた短髪からは、警察官として勤務していた頃の面影もうかがえた。
起訴状によると、被告人は、当時12歳と13歳の少女2人に対して、カラオケルームで着衣の上から胸を触り、スカート内に手を差し入れ臀部などを触ったほか、自己の下腹部を触らせるなどの行為をした。そのうち1人については、別の日にも同様の行為をおこなったとされている。
被告人はいずれの起訴事実も認めた。
●赤裸々に供述した「性的嗜好」
検察官の冒頭陳述などによると、被告人は大学卒業後の1995年から大阪府警で勤務を続け、事件当時は妻子と同居していた。
被害者とはインスタグラムを通じて知り合った。1万円で自身の自慰行為を見てもらうことを持ちかけ、その流れで犯行に及んだという。
さらに別の日には、同様の行為をするため、制服で来るよう連絡したとされる。被害者らには、やり取りしたメッセージを消去するよう指示していた。
行方不明届が出されていた被害者の1人が発見された際、その期間の動向として男性との接点が確認されたことから発覚した。別のスマートフォンには、犯行の様子を撮影した映像が残されていた。
被告人は取り調べに対して「春からパパ活で会うようになった」「消せば大丈夫と思いつつ、いつかバレるという罪悪感があった」などと供述。ありのまま話すのが贖罪だとして、性的嗜好や経緯を包み隠さず語ったという。
●被告人が涙した「上司の言葉」
弁護人からの書証では、被害者2人の両親と交わした示談書のほか、性加害の再発防止プログラムを受診する計画書、事件発覚後に実名と顔写真付きで報道されたことなどが取り調べられた。
また、証人尋問では、被告人が新卒で大阪府警で勤務した当時の上司が出廷した。現在に至るまで家族ぐるみの付き合いがあり、身柄勾留中も複数回面会したという。事件を知った際は「腰が抜けるほど衝撃だった」と語った。
上司は、被告人について、とにかく一生懸命で、生活安全課では「捜査のスペシャリスト」と呼ばれていたことや、最終的に警視に任命されたのも責任ある立場を任せられる素養があったと証言した。
一方で、実名報道や、退職金が支払われない現実に触れつつ、「これらは本人がやったことですので」と述べ、擁護一辺倒ではない姿勢も示した。
「世間から酷い目で見られても、私は助ける。立派に更生し、家族のために生きていけるよう助けていく」と語った場面では、被告人は涙を流していた。
●「強い欲望、刺激に負け…」当時の心境
弁護側の被告人質問で、被告人は、被害者やその家族、大阪府民、全国の警察官に迷惑をかけたとして謝罪した。
家族について問われると、妻から「子どもを傷つけたのを絶対に許さない」と告げられたことを涙ながらに明かし、子どもの生活への影響についても語った。
弁護人:警察官として、法を犯したらどうなるかわかってたのでは?
被告人:最初は軽い気持ちでマッチングアプリに手を出し成人女性と会っていたのですが、未成年と出会い普通でない感覚になり、それをまた味わおうと…。
弁護人:その気持ちは止められなかったのですか?
被告人:強い欲望、刺激に負け、バレなきゃ大丈夫だろうと。
現在は、家族からGPSによる行動把握や、スマートフォンへの新規アプリのダウンロード禁止、検索履歴を消せない設定など、厳しい管理を受けているという。
●「自分が捜査していたら、何て声をかけるのか」
検察官は、判断力の未熟な少女を標的にした犯行であることを強く責めた。被告人は警視としての立場にあったことから、その追及は厳しいものとなった。
検察官:自身が捜査していたら、パパ活女子になんて声をかけるのですか?
被告人:自分の身体を大切にせな。将来のことを考えなさい。
検察官:安易に身体を売ってしまったらどうなるか思いは至らなかったのか?
被告人:あったが、欲望に負けました。
被告人は、長い警察官人生の中で、不祥事のたびに組織への信頼が失われる様子を肌で感じてきたという。その一方で、自身の犯行時には「バレなければいい」という身勝手な考えに支配されていたとして、法廷で頭を下げて謝罪した。
●「社会に与えた影響を忘れずに更生を」
判決は拘禁刑2年、執行猶予4年だった。
裁判官は、被告人が本来、被害者を保護する立場にある生活安全部に所属していたこと、役職者として部下を指導する立場でありながらおこなわれた犯行であることを挙げ「卑劣で悪質」と非難した。
そのうえで「社会に与えた影響を忘れることなく、更生してください」と説諭した。警察官であった被告人に対して、とくに重く突きつけられた言葉だったといえる。
どのような立場の人物であっても、自身を客観視せず、行動の軽率さが招く結果から目を背けてはならない。今回は、そのことを改めて示した事件であった。