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「恥ずかしい人です」ガールズバンド公演で「改造サイリウム」“光害”まきちらす観客に運営が法的措置へ
法的措置の言及があったライブ/公式サイトには禁止行為が明記されている(https://bang-dream.com/events/roselia2025live)

「恥ずかしい人です」ガールズバンド公演で「改造サイリウム」“光害”まきちらす観客に運営が法的措置へ

ガールズバンド『Roselia』のライブで、禁止された改造サイリウムの使用や公演の録音・録画などの行為が多数あったとして、「ブシロードミュージック」は6月16日に法的措置の考えを表明した。

「改造サイリウム」とは、複数のサイリウムをひとつにし、非常にまぶしい光量を放つもので、公演では禁止されていることもある。迷惑客はどのような法的責任を追及されるのだろうか。

●運営だけでなくファンからも「残念」

同社のX公式アカウントを通じて発表があった。迷惑行為が確認されたのは、ライブ「Sei stark」(6月15日/有明アリーナ)。こうした行為が、観覧の著しい妨げになり、公演の運営に影響を及ぼすものと指摘。

「違反行為を行ったお客様に対しては、弁護士とも協議の上、損害賠償請求などの法的措置の準備を進めてまいります」(声明)

改造サイリウムとは、複数のサイリウムを扇形にするなどしたもので、「孔雀」などと呼ばれているそうだ。光量が強いため、「邪魔」「光害」などの指摘もうけている。メルカリなどのフリマアプリで検索すると、多くの品物が出品されている。

また、改造サイリウム、改造ペンライトの作り方をネットで指南するページも見つかった。

公演を観覧した人たちからは、「私のいたブロックで改造サイリウム取り出した奴がいて警備の男性3、4人に連行されてった 演者にも見えてただろうし とても残念だった」などの報告もSNSに挙げられている。

改造サイリウムなどの使用の問題について、エンターテイメント業界の問題に詳しい河西邦剛弁護士に聞いた。

●通常は推しメンに思いを伝える手段だが

——そもそもサイリウムとはどのようなもので、公演にどのような効果をもたらしますか

主にアイドル系のコンサートで見受けられるもので、ソロアーティストの公演ではあまり見かけません。

主にファンが推奨しているメンバー(推しメン)のカラーのペンライトをリズムに合わせて振ることで、推しメンへの意思表示をし、演出としても客席との一体感をもたらす効果があります。

実際、アイドルの卒業公演などで数万人の会場全体が、卒業メンバーのカラーに染まった光景は感動的でもあります。

10年ほど前までは、折ると数時間光る使い捨ての「サイリウム」が主流でしたが、現在は電池式のペンライトがよく使われています。

現在のペンライトは技術が進化したことで、1本で10色以上のカラーを光らせることも可能です。主な価格帯は3000円~5000円くらいで、公式がアーティストごとにライブグッズとしても販売することもあります。

——なぜ観客は「改造サイリウム」を使うのでしょうか

ファンが自己表現を追求し過ぎた結果、自分が「目立つ」ために、市販のペンライトより光度が強すぎるものを開発しました。

そして、扇形や「孔雀」などのスタイルが考案されました。

光度が強すぎるペンライトのせいで後ろの客席にいるファンはステージが見えませんし、さらに孔雀のような扇形だと視界が阻害されステージが見えなくなります。

こうした不満が他のファンから噴出するなかで、今回の発表に至ったのかと思われます。

●禁止された行為に及ぶことで損害賠償や刑事責任の可能性

——使用者はどんな罪に問われる可能性があるでしょうか

理論上は威力業務妨害罪が成立する余地も考えられますが、過去に業務妨害罪で立件されたり逮捕されたりした事例を聞いたことがありません。

現実的に、超光度ペンライトや「孔雀」だけで威力妨害罪で立件される可能性は低いかと思います。

しかし、主催者が明示している規約には違反しているケースが多く、退場させられる根拠になります。

今回のライブの公式サイトにも「当社は、禁止行為の様態により、禁止行為を行ったお客様に対し警察への通報、不法行為・業務妨害等にて民事・刑事問わず法的措置を講じます」と記載されています。

サイリウムに関する禁止行為は次のようなものです。

・サイリウム、ペンライトのうち市販されていないもの、改造品、30㎝以上の長さのあるもの、市販されているサイリウム・ペンライト商品のうち光量が著しく大きいもの、連結ペンライト、誘導灯やその他の照明器具を持ち込むこと。なお、入場時の手荷物検査及び会場内にてこれらの物品を係員が発見した場合には、その場でご自身にて破棄していただくか、破棄いただけない場合は入場をお断り、または途中退場していただきます。
・市販されているサイリウム・ペンライトであっても、振り回す・投げる・口にくわえる・片手に4本以上持つ ・光の点滅を繰り返す・頭上で執拗に回転させるなどして、他のお客様の迷惑になり得る態様で利用すること

会場スタッフが制止を求めたのにもかかわらず、ペンライトを振り続けたり、万が一にもスタッフに有形力を行使した場合には、暴行罪や威力業務妨害罪で現行犯逮捕という可能性もあります。

いずれにせよ、アーティストからしても、ファンからしても、スタッフからしても、改造サイリウムや超光度ペンライトを振り回す行為は、ただの迷惑行為であり、恥ずかしい人だと思われているということです。

——禁止されている「公演の盗撮・録画」にはどんな問題がありますか

ライブを客席から録音・録画しただけでは犯罪に該当しない可能性が高いといえます。しかし、録画した映像をSNSにアップした場合には著作権法違反で刑事処罰される対象になります。また、録画した映像を仲間内の数人でシェアすれば、場合によっては著作権法違反になり得ます。

公演の現場で録音・録画しているのが発見された場合には、退場処分やファンクラブを抹消されることもあります。

この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいています。

プロフィール

河西 邦剛
河西 邦剛(かさい くにたか)弁護士 レイ法律事務所
「レイ法律事務所」、芸能・エンターテイメント分野の統括パートナー。多数の芸能トラブル案件を扱うとともに著作権、商標権等の知的財産分野に詳しい。日本エンターテイナーライツ協会(ERA)共同代表理事。「清く楽しく美しい推し活〜推しから愛される術(東京法令出版)」著者。

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