千葉県市原市の公園で遊んでいた小学生男児が、見知らぬ男に声をかけられ、車に誘い込まれてわいせつ行為を受ける事件が発生したと報じられた(千葉日報、6月16日)。
報道によれば、千葉県警市原署は6月16日、わいせつ目的誘拐罪と不同意わいせつ罪の疑いで、千葉市立松ケ丘小学校の男性教諭(27)を逮捕した。容疑者は「触ってみたいという性的感情を抑えきれなかった」と容疑を認めているという。
教育者による児童への性犯罪という、教育現場の信頼を揺るがしかねない今回の事件について、簡単に法的問題点を解説する。
●不同意わいせつ罪とは
逮捕被疑事実となっている不同意わいせつ罪(刑法176条、6カ月以上10年以下の拘禁刑)は、13歳未満の児童に対してわいせつな行為が行われた場合、たとえ児童が「嫌がっていなかった」「同意していた」としても成立する。
(※被害者が16歳未満13歳以上の場合には、わいせつな行為を行った者が、被害者より5年以上前の日に生まれた者であるには同様に同意があっても成立)
これは、幼い子どもには性的行為の意味を理解し、真の意味で同意する能力がないという考えに基づいている。
●わいせつ目的誘拐罪も成立
また、わいせつ目的誘拐罪(刑法225条、1年以上10年以下の拘禁刑)も逮捕被疑事実となっている。
判例上、「誘拐」とは「欺罔(「ぎもう」。人をあざむくこと)または誘惑を手段として、他人の自由な意思決定を妨げ、自己または第三者の実力的支配下に移すこと」とされる。
報道によると、「公園で、複数人遊んでいた男児に声をかけ、一緒に遊ぶ」などしていたという。その後、車に誘い込まれていることから、「誘惑」にあたると考えられる。
また、単なる誘拐(同法224条、3カ月以上7年以下の拘禁刑)でなく、わいせつ行為を目的として誘拐した場合には重く処罰される。
教員という子どもを守るべき立場にある者が、男子児童に対して犯行に及んだ点で、量刑上も厳しく評価される可能性がある。
●両罪の関係
わいせつ目的で誘拐したうえで、不同意わいせつ行為をした場合、誘拐罪と不同意わいせつ罪は手段と目的の関係にあると考えられ、「牽連犯(けんれんぱん)」(刑法54条1項後段)となり、最も重い罪により処断されると考えられる(東京高判昭和45年12月3日参照)。
したがって、最も重いわいせつ目的誘拐罪により処断されることになる。
なお、今後について、今回が初犯である場合、被害者との示談が済んでいれば不起訴となる可能性もあるし、起訴された場合でも、執行猶予がつく可能性が高いと考えられる。
しかし、示談が成立していない場合、起訴される可能性が非常に高い。 また、小学校の教諭という立場にある容疑者の、自らの教え子と同世代の児童に対する犯行であることを重視すれば、実刑判決もありうると考えられる。