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家出少女を狙った性犯罪、20代被告人が語った歪んだ認識「将来は子ども食堂に関与したい」
裁判所(Sakura Ikkyo / PIXTA)

家出少女を狙った性犯罪、20代被告人が語った歪んだ認識「将来は子ども食堂に関与したい」

岡山県から家出した13歳の少女を千葉県の自宅で数日間泊まらせ、性交したうえ、その様子を撮影したして、不同意性交等などの罪に問われた被告人(20代男性)の裁判が岡山地裁で結審した。検察側は懲役5年を求刑した。

未成年の判断能力の未熟さに乗じた悪質な犯行といえるえが、公判ではさらに「幼いので言うことを聞かせやすい」「支配下で独占できる」といった被告人の歪んだ性癖も明らかになった。(裁判ライター・普通)

●性交相手を探す目的でSNSを使っていた

身柄を拘束されている被告人は、坊主頭で、スラリとした体型だった。4月11日の初公判では、険しいとも落ち込んでいるとも違う、感情を読み取りにくい表情をしており、ややぼんやりと真っ直ぐを見つめていた。

起訴状によると、被告人は当時13歳の少女と自宅で性交し、その様子をスマートフォンで撮影したとして、不同意性交等罪や児童ポルノ禁止法違反(製造)などに問われた。被告人は起訴内容を認めた。

検察官の証拠によると、被告人は性交する相手を探す目的でSNSを使っていた。少女と知り合い、やりとりをする中で未成年であることを把握していた。

少女はかねてより家出をしたいと言っており、その際は被告人宅へ訪問してもいいかなど聞いていたという。

当日、少女は実際に岡山県の家を出たあと、被告人に連絡を取った。少女と被告人は東京駅で合流し、千葉県の被告人宅に誘った。計5日間滞在させ、複数日に渡って性交をおこなった。

捜査機関に対する被告人の供述調書によると、「独占できる年下がいい」などと述べ、中学生も性的対象と考えていた。

少女から家に来てもいいか尋ねられていたので、性交ができると思っていた。動画を撮影した理由は、後で見直して自慰行為をする目的だった。

●「被害弁償は請求が来たら前向きに検討します」

弁護側の情状証人として被告人の父親が出廷した。被告人とは別に暮らしているが、取り調べを受けた翌日に被告人が帰省し、未成年と関係を持ったこと、今後逮捕されるかもしれない不安を直接聞かされたという。

弁護人:家に帰ったとき事件の詳しい事情は聞いていますか?
父親:聞けていません。

弁護人:なにか相談などは受けていないのですか?
父親:当時、寮に住んでいたのでどうしようかと。

急なことで戸惑いがあったのかもしれないが、事件との向き合い方について不安が残る答弁が続く。

弁護人:被害弁償できていないようですが。
父親:お見舞金とかのことですか?

弁護人:違います、被害の弁償です。
父親:まだ請求が来ていないので、来たら弁護士と相談して前向きに検討します。

弁護人:誠実にするということでいいですね?
父親:はい。

現在、被告人とは手紙のやり取りを続けており、今後は被告人の再犯防止に向けて、専門機関の受診も検討している。

裁判官からは被告人と家族との関わりについて聞かれた。勾留場所は証人にとって遠方となるため面会はできていないが、手紙は10回ほどのやりとりをしている。

ことの重大さを認識し、字がきれいになり、周囲へのお詫びにも言及されていることなどから反省が深まっていると感じているという。

裁判官:専門機関の受診について被告人はなんと言っているのですか?
父親:恐らく弁護士から話してもらっていて、私からはこれからです。

裁判官:被告人はどんな反応なのでしょう?
父親:私がフォローすると、弁護士経由で伝わっているだろうと思います。

裁判官からの質問の受け答えにどこか他人事感があり、不安感を覚えたのか、改めて弁護人から質問がされた。

弁護人:被告人は「大変なことをした」と言っているようですが、何が大変かを伝えてくださいね。
父親:はい。

弁護人:専門家に任せきりじゃなく、継続的に本当に酷いことをしたというのをきちんと伝えてくださいね。
父親:これからかかる機関は、夫婦のカウンセリングも含むと聞いています。

弁護人:そういう意味で、通院の際は必ず同行してくださいね。

被告人席に座っている被告人は、引き続き表情を変えず前を見ている。その表情から、証人と普段どのようなコミュニケーションがなされているかは想像がつかない。

●いじめの経験から同級生、大人が恐くなり

弁護人からの被告人質問がおこなわれた。冒頭、少女に対する肉体的、精神的な被害、周囲への影響や自身の欲を優先させてしまった行為について謝罪をした。

捜査機関での取調調書には年下への思いについて「幼いので言うことを聞かせやすい」「支配下で独占できる」「自分が嫉妬深いから言うことを聞いてくれる子がいい」などと供述したことも認めた。

性行為を撮影していた理由について聞かれると、「嫉妬深く、依存もあり、見返したときに、自分はこの人と性交したんだと嬉しい気持ちになる」などと語った。

反省しているとも、開き直っているとも違う、通常の会話と同じようなトーンで話す様子に精神的な幼さを感じた。

弁護人:そういった考えとなった遠因に、高校時代にいじめにあっていたのですか?
被告人:自分のコンプレックスでいじめに。そこから同級生、大人は恐いと思うようになりました。

弁護人:いじめと性的関心は関係ある?
被告人:いじめで気持ちがモヤっていたときに性交で解消していました。

弁護人:もうしないためにはどうしますか?
被告人:僕は大きな悩みを抱えたまま大人になりました。親にも相談していないし、解決を目指してこなかった。これからはカウンセリングを頑張りたいです。

証人尋問とは、別日におこなわれた被告人質問。筆者が確認できる範囲では、証人の姿は見当たらなかった。この被告人の悩み、思いはどのように伝わるのだろうか。

今後は勾留中に読んだ本に影響され、農業に取り組もうと考えているという。被害弁償に関しては、ひとまず親に立て替えてもらい、社会復帰後に親に返済していく意向を示した。

●服を脱ぐのが遅いという理由で放った一言

検察官からは当日の犯行態様について質問があった。初日は被告人宅へ到着し、10分足らずで性行為が開始された。

検察官:すぐに始まったのは、前々からそういう話をしていたから?
被告人:そうです。会うときエッチをしようという話で、家に向かう最中も話してました。

家に入ったあと、ベッドへ誘った被告人。しかし、そのとき下を向き、恥ずかしそうとも嫌ともとれない様子だったという。

検察官:少女に対してあなたは「じゃあ帰るか?」って言いましたか?
被告人:言いました。

検察官:どうして言ったんですか?
被告人:元々エッチする約束をしてて、断るのなら嫌なんだろうなと。なら帰った方がいいんじゃないかなと。

検察官:嫌だとか、性交したくないと言っていたのですか?
被告人:言ってませんが、服を脱ぐのが遅かったので。

もし少女が拒否していたら、性交はしなかったと供述する被告人。しかし、被告人から問いかけるようなことはなかった。少女の気持ちを考えることもなかったという。

過去18歳のときに同様の内容で前歴があったため、未成年への行為は罪になる意識はあったという。しかし、どうして不同意性交罪として罰せられるか、理解にまでは至っていなかった。

●「未成年との関係は抵抗感はなくうれしい」

裁判官からも同様の質問があった。

裁判官:少女は『帰るか?』と聞いてどう思ったと思う?
被告人:少女を傷つけたと思う。

裁判官:どうやって傷つけたと。
被告人:性交できないんだったら帰れ、って思われたと。

裁判官:少女はあなたを頼って泊まりに来た。だったら、しないといけないのかなと思わせてしまったのでは?
被告人:断りにくい、ずるい言葉で言ってしまったと思う。

これまでも複数の未成年と経験を持ったことがあるという被告人。未成年は恋愛対象でも、性的対象でもあると答える。抵抗感について問われると、「抵抗はなく、うれしい気持ちだった」と答えた。

その後、自身で「常識がない」と言う被告人に対して、認識の誤りを正そうとする裁判官。

被告人はそれらに理解を示すような回答をするが、理解をしているのか、話を合わせているだけなのかは傍聴席からはわからなかった。

社会復帰後は農業に関係して日本を支えたいと思いを語った。事件で未成年に迷惑をかけたことから、今後は子どもを助ける側に回りたく、子ども食堂に関与したいとも言う。

決して悪気があって言っているわけでないのが伝わるだけに、社会復帰に際しては更生のための環境や、周囲の人間関係を整え、正しい道へ導いてほしいと願った。

この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいています。

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