2023年の年末から24年の年明けにかけて、群馬県や栃木県の山林で火災が相次いだ。
その後、逮捕、起訴された栃木県の男性(52)に対し、宇都宮地裁栃木支部は2024年11月、懲役3年6月の実刑判決を言い渡した。
何が彼を放火に駆り立てるのかーー。記者が投げかけた疑問に男性が返してきた手紙の一部を紹介する。(弁護士ドットコムニュース・一宮俊介)
●彼女らの荷物を焼却「とてもすっきりした」
ーー放火することでストレスを発散できると感じるようになったきっかけやその時期は?
<30代前半の時、交際していて同棲もしていましたが、ある時不仲になり、残ってる部屋の中の荷物をなかなか片付けに来ないことから、仕事で使用していた作業場にある畑のような所で、1つ残らず燃やして処分したことがあります。
ゴミとしてゴミステーション等で廃棄することはせず、わざわざ夜のうちに荷物を車に入れ、手間をかけてまで燃やして処分する方法をとりました。その時火を見ていて、とてもすっきりしましたね。
小学3年生の時、竹やぶがあり、友達とたき火をして、さわがせた事もありましたが、いたずらの延長だったと思います。学校、警察に知られて、親からかなり怒られました。
仕事で面倒を見ていた人がいました。事情があり、私の家で1年位世話していた時期がありましたが、ある日に帰らなくなりました。逃げたような感じです。
離婚をきっかけにアルコール中毒になり、相談されて、1人にならないよう家に泊まらせて、そのうち住み込みで生活するようになりました。
1年ちょっと頑張っていたのですが、多分またアルコールにはまったんでしょうね。顔をあわせづらくなり、出て行った感じです。
その時の彼の衣服から荷物一式、半年位はさわることもしませんでしたが、今回の森林の一連の事件には、さすがに彼に対するストレスもあり、全てもやしました。
全部片付いた時はすっきりしましたね。先に話した同棲相手と同様、部屋に残っていた荷物を見る度に感じたストレスも失くなりました。きっかけイコール今回の一連の事件に関連していることもあるかと思います>
男性は「(放火を)やめられない自分にストレスを感じていました」と吐露した(弁護士ドットコムニュース撮影)
●「放火をやめられない自分にストレス」
ーー犯行が発覚して刑務所に入れられるとは考えなかった?
<もうバレていると思いました。森林を物色している時、山道の入口で検問にもあい、別の日には防犯中のパトカーとも森林ですれ違ったり…。それでもやめなかった…。やめられなかったですね。やめられない自分にストレスを感じていました>
ーー警察に逮捕された時の心境は?
<逮捕された時は、「5〜6年は出て来られないかも知れない」と1番先に頭に浮かびました。
また、その当時、上手くいかない事や、やってる事が空回りしていて、イライラしたり、悩んだりしてました。
逮捕されることで、私の知り合いや私の事を知っている人達から“順調そうにやってるように見えたけど、実際はそうではなかったんだ”と、気付かれてしまったなと、そんな心境でした。
見栄がありました。夜1人になった時に周りに言わずにいたことに対するストレス、もちろん現実的に直面している事に対するストレスを発散させる為に思っていた事は、どこの山で火を着けよう、時間的にも真夜中でちょうどいい、等と考え始めるのです>
男性は控訴し、現在は東京拘置所に収容されている(弁護士ドットコムニュース撮影)
●狙うのは「着火しやすいところ」
ーーどんな場所を狙って放火していた?
<時間帯は未明(対向車等にすれ違ったりしない為)、山に登っていく山道を車で少し走らせ、駐車(怪しまれないように停車)できる場所に車を止め、周囲の着火しやすい所というのが共通でした。
発見した人も、深夜の仕事が終わって帰ろうとしてる人がたまたま発見したり、明るくなり始めた時に山に散歩に来た人が気付いたりという感じでした。
そこの道を通れば気付く位置に着火したので気付かれるのも早かったと思います>
ーーどんな場合にストレスを感じるのか?
<ストレスはなかなかたまらない方だと思いますが、いくつもの問題が重ならない限りストレスは感じないと思います。今回の事件のストレスは本当に人生最大だったので特別ですね>
●「分かりあえる相手がいれば心の支えになる」
ーー連続放火犯にはどんな処遇が必要だと思うか?
<私の個人的な考えですが、同じような悩みを抱えてる人同士を紹介し合って、手紙のやり取りを進めるのでいいのではないかと思います。お互いに立ち直ることを目標に分かりあえる相手がいれば、心の支えになりプラスに働くことになるかもと思います>