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ビッグモーター「街路樹伐採」で初の逮捕者、捜査機関の「本丸」は?
関東地方にあるビッグモーターの店舗(2023年8月、弁護士ドットコム撮影)

ビッグモーター「街路樹伐採」で初の逮捕者、捜査機関の「本丸」は?

捜査機関の狙いはどこにあるのか。中古車販売大手「ビッグモーター」(東京都多摩市)の店舗前で街路樹が伐採されていた問題で、ついに社員が逮捕された。保険金不正問題を含めて、ビッグモーターの一連の問題で逮捕者が出るのはこれが初めてだ。

報道によると、神奈川県警が1月30日、川崎店(神奈川県川崎市)に伐採を指示したとして、本社に勤務していた男性社員を器物損壊容疑で逮捕した。

2022年10月12日に店前の歩道に植えられていたオオムラサキツツジ6本を切断したとされ、男性は当時、本社の「環境整備推進委員」で、伐採を店側に指示した疑いがあるという。

街路樹問題をめぐっては、すでに辞任した元副社長の自宅などに家宅捜索があったとも報じられている。元東京地検の検事で刑事事件にくわしい西山晴基弁護士に、今回の逮捕から何が見えてくるのか聞いた。

●ビッグモーター全体の指示系統解明が狙いか

——初の逮捕者が出ました。警察の狙いをどう考えていますか。

逮捕者が本部の指示役だったことに加えて、警視庁と神奈川県警との合同捜査という力の入れようからも、保険金不正問題も念頭に、この事件を皮切りとして、ビッグモーター全体の指示系統の解明を狙いとしている可能性があります。

ただし、保険金不正問題は、街路樹伐採問題に比べると、立件のハードルが格段に上がるので、まずは街路樹問題の捜査を手堅く進めていく方針なのではないかと思います。

——逮捕をきっかけとして上層部に捜査の手が広がることも考えられますか。

街路樹問題について、上層部への捜査を進めることも当然想定されます。

もっとも、共犯事件の捜査では、口裏合わせをされないように、共犯者全員をまとめて逮捕して捜査するのが基本です。

ところが、今回は、男性社員1人だけの逮捕にとどまりました。

警察は、現段階の証拠関係では、上層部への捜査に踏み切ることは厳しいという判断から、男性社員の今後の供述も踏まえて、かなり慎重に捜査を進めていこうと考えていると思われます。

もちろん、この男性社員が上から指示を受けていたという可能性もありえるものの、今回は、本社で唯一の「環境整備推進委員」という立場で、各店舗の点検業務に「専従」していたとみられています。

そのため、自身の判断だけで伐採指示をしていた可能性も否定はできません。

●伐採指示は自らの判断?

——今後の捜査のポイントは。

逮捕された男性社員の「権限の大きさ」です。

例えば、伐採指示について本人だけで決定できる権限があったのであれば、自身の判断だけで伐採指示をしていた可能性が考えられます。

そこまでの権限はなく、上層部への報告や了承を得る必要があったとなれば、上層部も伐採指示について把握していたといえ、今度は上層部の関与も考えられることになります。

一部報道では、登記簿の情報から、男性社員と同姓同名の人物が過去に取締役を務めていた時期もあることが判明しているとされ、そうした客観的証拠も踏まえて、「権限の大きさ」についての捜査がおこなわれるとみられます。

プロフィール

西山 晴基
西山 晴基(にしやま はるき)弁護士 レイ法律事務所
東京地検を退官後、レイ法律事務所に入所。検察官として、東京地検・さいたま地検・福岡地検といった大規模検察庁において、殺人・強盗致死・恐喝等の強行犯事件、強制性交等致死、強制わいせつ致傷、児童福祉法違反、公然わいせつ、盗撮、児童買春等の性犯罪事件、詐欺、業務上横領、特別背任等の経済犯罪事件、脱税事件等数多く経験し、捜査機関や刑事裁判官の考え方を熟知。現在は、弁護士として、刑事分野、芸能・エンターテインメント分野の案件を専門に数多くの事件を扱う。

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