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「体臭に関する苦情が来ている」女性を呼び出して性的暴行、50代男のおぞましい手口
横浜地裁(カッシー / PIXTA)

「体臭に関する苦情が来ている」女性を呼び出して性的暴行、50代男のおぞましい手口

「あなたの体臭でクレームが来ている」。そんな嘘をかたり、見ず知らずの女性にわいせつな行為を重ねていたとして逮捕起訴された男の公判が現在、横浜地裁(渡辺史朗裁判官)で開かれている。

被告人の男(逮捕時55)は、飲食店勤務の女性Bさん(事件当時22)に対して、その勤務先の経営会社社員を装い電話をかけたうえ「体臭に関する苦情が来ている。診察をうけなければ解雇になる」などと告げたうえ、これを信じ込ませて神奈川県・小田原市に呼び出し、性的暴行を加えようとした準強制性交等未遂罪のほか、同様の手口で女性Aさんに性的暴行を加えたとする準強制性交等罪、さらにCさん(同26)に対する強要罪で起訴されている。

余罪が複数あるとされていたが、6月19日の第二回公判ではBさんの事件について、7月24日の第三回公判ではCさんの事件についての証拠調べが行われ、その込み入った手口が明らかになった。被告人は「本社の人間」なる人物を装って「あなたの体臭のクレームが来ている」と被害女性に伝え、言葉巧みに女性らを呼び出したうえで、性的な指示や性的暴行を繰り返していた。(ライター・高橋ユキ)

●「見ず知らずの中高年男性と性交する必要がある」と信じ込ませ

まずBさんに対する準強制性交等未遂について、起訴状や冒頭陳述によれば被告人は、“会社にBさんの体臭に関するクレームが来ており、このために見ず知らずの中高年男性と性交する必要がある”とBさんに信じ込ませたのだという。

今年2月、飲食店で働くBさんに電話をかけたうえクレームの件を告げ「早急に診察を受けなければならず、受けなければ解雇になる」と伝えたうえ、次のように伝えたとされる。

「前提として、臭いや体液の味を確認する必要がある」

そうしてBさんを神奈川県の小田原駅に呼び出した。Bさんは自身に関する体臭クレームが経営会社に寄せられたことを信じているため、“診察を受けなければ解雇になる、その前提として体臭や体液の味を確認しなければならない”のだ……ということまでも信じ込まされ小田原に向かった。

●「多目的トイレで自慰行為をしたうえで体臭等を確認」

駅に着いたBさんに被告人は電話で「多目的トイレで自慰行為をしたうえで体臭等を確認」するよう指示。言う通りにしたBさんは「無臭です」と報告したが被告人は「やり方が不十分だ」と、今度は“飲食店のトイレ”での再度の行為を求めた。

Bさんは店舗やその客に申し訳なく思い、再び多目的トイレで自慰行為をして報告した。すると被告人がBさんにこんなことを告げたのだという。

「検査が不十分であるうえに場所についても指示に従わなかったことで、医師の信頼を失っている。見ず知らずの男性と性行為をしてその臭いや体液の味を判断してもらわないと診察できない」

Bさんは当然、これに抵抗を示したが被告人は“性行為の結果を病院の書類に記載しないと診察が受けられない。勤務先や同僚にも迷惑がかかる”などと言い、Bさんに見ず知らずの男性との性行為を要求した。

そのうえで、“ひとりでいる男性が多い喫煙所”に向かうよう指示。言われた通りにBさんが向かったその喫煙所には、被告人がスタンバイしていた。

自分を喫煙所までおびき寄せた張本人が目の前の被告人であることを全く知らないBさんは、被告人に「会社からクレームを受けている。性交まではしなくていいので体や体液の臭いを確認して欲しい」と声をかけたのだった。

ホテル客室内で被告人はBさんの臭いを嗅ぎ「普通だ」などと言ったうえで、Bさんに近づき、逃げようとするBさんに無理やり性交しようとした。Bさんは「やめてください」と抵抗。ところが被告人はそれでも性交しようとしたため「やめてください」「もう無理です」と引き続き抵抗した。

最終的にBさんは被告人が部屋を出てから、勤務する飲食店の上司に電話をしたところ「そのようなクレームは把握していない」と言われ、警察に相談するに至った。

●勤務先に電話「体臭をケアしていない」と非難

Cさんに対する強要罪も同様の手口だった。冒頭陳述によれば被告人はBさんと同じような電話をCさんの勤務先にもかけたうえで「体臭をケアしていない」とCさんに強く言い、戒めのために“体臭についてのクレーム公表”を匂わせたという。そのためCさんは、被告人から提示された“治療”のため、指定された小田原駅へ新幹線で向かった。

さらに被告人は、到着を電話で報告したCさんに対して「ショッピングモールのトイレで自慰行為をするように」と指示。拒んだCさんに対して「検査のために必要だ」と強く言い、承諾させた。

指示通りに行動したのちCさんが被告人に電話をかけると「ショッピングモールから怒られた。インターネットカフェで自慰行為をするように。PCR検査のために唾液もペットボトルに採取せよ」と次の指示を与えた。

Cさんが再び指示に従ったのち、被告人に電話で報告すると、次は「コンビニでパンツを買い、トイレで履き替えて、古いものはビニールに入れてペットボトルと一緒に道端に捨てるように」と指示をした。

本社の人間を装った被告人からの立て続けの指示に従ってきたCさんは、次も指示通りに行った上で、電話で報告すると「代謝を上げるために酒を飲むように」と被告人から、さらなる指示を受けた。この指示に疑念を抱いたCさんは、最終的には強姦されるのではないかとの不安を覚え、警察に届けたという。

●過去にも同姓同名の男が……

当の被告人は罪状認否においてCさんの事件は認めたが、Bさんに対する事件について「わいせつ行為はしていません」と否認している。検察官は「他県での逮捕が予定されている」と述べており、余罪はまだあるようだ。

第三回公判の数日後には、準強制性交等容疑で新潟の警察署に逮捕されたと報じられている。同じく「体臭のクレーム」話をでっちあげ、社長になりすまし見知らぬ女性に電話をかけたうえ、小田原駅に呼び出し性的暴行を加えたという容疑である。

ところで過去にも、被告人と同姓同名の男が同様の事件を起こしていた。

2005年、東京・池袋の人気ラーメン店店主が、ファストフード店のアルバイト女性に電話をかけ、アルバイト先社員を装い「別のアルバイトが性感染症で入院した。診断のため、裸の写真を医師に見せるので送ってほしい」などと伝え、写真を送らせていたという。ラーメン店店主の顔は、法廷に座る被告人と同じだった。

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