死産した双子の遺体を自宅で放置したとして、死体遺棄の罪に問われているベトナム人の元技能実習生の女性、レー・ティ・トゥイ・リンさん(24)の刑事裁判で、最高裁は2月24日、弁論を開いた。懲役3カ月・執行猶予2年の有罪とした2審判決が見直される可能性がある。
この日の弁論後、リンさんとその弁護団、支援者は東京・霞が関の司法記者クラブで会見を開いた。リンさんは「わたしは死産した双子の遺体を傷つけたり、放置したり、隠したりしていません。無罪判決が言い渡されることを願っています」とうったえた。
●争点は「遺棄」にあたるかどうか
弁護団によると、裁判の争点は、リンさんの行為が「遺棄」(刑法190条)にあたるかどうか。
技能実習生として来日したリンさんは2020年11月15日、強制的に帰国させられると考えて、雇い主や監理団体に妊娠を明かせず、熊本県内の自宅で孤立出産で死産した。その際、双子の遺体をタオルで包んで、二重の段ボール箱に入れて、セロテープで止めて安置した。
「そのときは大変動揺していて、自分の体に起こった出来事に対して頭が真っ白になって、そのうち元気になって落ち着いたら、何かきちんとやろうと思いました。ただ具体的に何をするのかは、そこまでは考えていませんでした」(リンさん)
リンさんは出産の翌日に病院の医師に死産を告白した。同11月19日、死体遺棄の疑いで逮捕されて、同12月10日に起訴された。弁護団は、遺体を遺棄していないとして、一貫して無罪を主張している。
●「孤立出産=死体遺棄」につながりかねない
1審・熊本地裁は、遺体をダンボールに入れる行為が「死産をまわりに隠したまま、私的に埋葬するための準備であり、正常な埋葬のための準備ではないから、国民の一般的な宗教的感情を害することが明らか」として、懲役8カ月・執行猶予3年の有罪判決を言い渡した。
2審・福岡高裁は、1審判決を破棄しながらも、遺体を二重の段ボール箱に入れて、セロハンテープで封をした行為が、「隠匿」による死体遺棄にあたり、「葬祭の準備」ではないとして、懲役3カ月・執行猶予2年に減刑している。
この日の弁論で、改めて無罪をもとめた主任弁護人の石黒大貴弁護士は会見で次のように述べた。
「死産から医師に告白するまでの33時間、リンさんが身の回りの品で包み込んで、(遺体の)そばにいた行為が死体遺棄罪に問われている。最高裁には『孤立出産=死体遺棄』と安易につながりかねない危険な判断を覆していただきたい」