日本弁護士連合会(荒中会長)は11月18日、被疑者や被告人が否認または黙秘している限り、長期間勾留し保釈を認めない「人質司法」の解消を求める意見書を法務大臣に提出した。
「憲法及び国際人権法に違反するものであり、刑事訴訟法の立法者意思に反し、事案の真相の解明を妨げているもので、速やかに解消されなければならない」としている。
●無罪を主張する被告人が起訴後速やかに保釈される事例は『異例』
意見書は、現在、勾留請求が却下されたり保釈が許可されたりした事例の多くは、被疑者・被告人が犯罪の嫌疑を認めた事例のもので、「無罪を主張する被告人が起訴後速やかに保釈される事例は『異例』と評されるような状況が今日も続いている」と批判。
「人質司法」の運用は、「憲法が絶対的に禁止している公務員による拷問に当たる事態を数多く生じさせている」とし、「無罪と推定される権利が建前として取り扱われていることが現れている」とした。
また、刑事訴訟法の権利保釈の規定は、除外理由として「罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき」(同法89条4号)を定めているが、「無罪を主張する被告人は、ほとんどの事件において4号に該当すると判断されている」と指摘。
保釈されることが原則であると規定した89条を空文化するもので、人質司法を解消するために刑事訴訟法89条4号を削除すべきとした。
さらに、身体拘束より制限的でない代替措置の一種として、電子監視制度や在宅拘禁制度について「プライバシーを侵害し、行動の自由を制限する処分であることを踏まえた議論が必要」とした上で、必要な場合に限り最小限の制限を課すものとして検討されるべきであると提言した。
意見書の全文は、日弁連のサイト(https://www.nichibenren.or.jp/document/opinion/year/2020/201117.html)に掲載されている。