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非売品「有名学習塾」テスト問題をコピー販売、法的にどんな問題が
画像はイメージです(Fast&Slow / PIXTA)

非売品「有名学習塾」テスト問題をコピー販売、法的にどんな問題が

大手の学習塾では、オリジナルのテキストやテスト問題を使用しているが、一般には市販されていない。そこで、学習熱心な家庭では、ネットのオークションサイトなどを通じて、入手するケースもあるようだ。

メルカリで入塾テスト問題を購入したことがある都内の女性(30代)は「人気の塾では、入塾テストをパスしないと入れませんし、入れたとしても、成績によってクラス分けが決まってしまうので、よい点をとる必要がある」と話す。そのため3000円程度の出費となったが、テストの傾向をつかむため購入したことに不満はない。

●コピーを販売して書類送検された事例も

しかし、中にはテストやテキストの現物ではなく、コピーを販売しているケースもあるようだ。

朝日新聞デジタル(6月11日)によれば、大手塾「SAPIX」の新小学5年生向けに作成された国語、算数、社会、理科4教科のテスト問題をコピーし、ネットオークションで計6800円で売った都内の夫婦が著作権法違反の疑いで書類送検された。

なぜ非売品の教材のコピーが著作権法違反に該当するのか。田村ゆかり弁護士に聞いた。

●テキストやテストは「塾の著作物」

ーーテキストやテストのネットでの販売は、どのようなケースで著作権に違反するのでしょうか

「まず学習塾のテキストやテストが、著作権法が保護する『著作物』(著作権法10条~13条)に当たるかどうか考えます。

テキスト等は一般に複数の問題や解説から構成されています。どのような問題を選択し、どのような解説をするかについて、作成者の創意工夫が認められるため、編集著作物(法12条)として保護されると考えられます。

結論として、学習塾のテキスト等は著作物と言えます。

次に、著作物が創作された時点で著作権等の権利が発生しますので、権利を得るための手続きは一切必要ありません。そのため、学習塾のテキスト等が作成された時点でそれは著作物として保護されます。なお、保護期間は公表後70年間です(法53条)」

●意外と重い? 著作権侵害の量刑

ーー著作物には、具体的にどのような著作権が認められているでしょうか

「テキストやテストのコピー販売を例に考えます。

コピーを販売することは、著作権者が著作物を印刷等の方法で再製する権利である『複製権』(法21条)及び著作物の複製物等の譲渡により公衆に提供する権利である『譲渡権』(法26条の2)を侵害していると言えます。

著作権を侵害した者は、10年以下の懲役、1000万円以下の罰金又はその両方が科されます(法119条1項)」

●「軽い気持ちで違法な行為をしないよう気をつけて」

ーーコピーして販売しても法的に問題ないケースはありますか

「結論としては、学習塾自身が販売するか、学習塾が複製や販売を許諾した業者等が販売する以外はありません。

子どもが繰り返し勉強するために、テキストを家庭内でコピーするような場合の私的使用のための複製(法30条)くらいです。子どもの同級生のためにテキストをコピーして無償であげたとしても、学習塾の複製権を侵害して違法となります。

このように著作権法の保護は幅広い範囲に及んでいますので、軽い気持ちで違法な行為をされないよう、気を付けて頂きたいです」

プロフィール

田村 ゆかり
田村 ゆかり(たむら ゆかり)弁護士 でいご法律事務所
経営革新等支援機関。沖縄弁護士会破産・民事再生等に関する特別委員会委員。

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