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教育・保育現場で「性犯罪歴」チェックを 被害者家族ら「公的な仕組み」求める
右が駒崎さん。

教育・保育現場で「性犯罪歴」チェックを 被害者家族ら「公的な仕組み」求める

「私は娘を担当したこの元教諭が、他県で再び教壇に立つようなことがあってほしくないですし、小学校だけでなく、教育保育の現場すべてに携わってもらいたくありません」

小学生の娘が担任教諭からの性被害にあった母親はこう訴えた。

教員による性被害が定期的に報道されている。中には、過去にも性犯罪を犯しているというケースも。教員免許は3年で再取得可能。自治体間で処分歴などが共通されていないため、再任用が起こり得るのだ。

文部科学省が2019年度から教員の懲戒歴などを検索できるシステムを運用しているが完全に防げるものではないという。

子どもが被害にあった母親や保育事業者らが厚労省で7月14日、教育や保育などの仕事につく際、性犯罪歴がないことを保証する仕組みをつくってほしいと訴えた。

●公的な犯罪歴チェックの仕組みを

別の女性は今年、5歳の娘がベビーシッター登録サービス「キッズライン」で依頼した男性ベビーシッターから性被害を受けた。男性は強制わいせつで逮捕された。

キッズラインをめぐっては、別の男性シッターも5歳男児への性犯罪で逮捕されている。該当する行為の後ではあるが、複数の逮捕歴もあるという。

仮に事業者がどれだけ注意を払っても、現状では完全に犯歴を把握することはできない。

「小児性犯罪者の多くは一人で多数の子どもに加害行為をしているとされます。一人の犯罪者のために、多くの子どもたちの未来が潰されることがないよう、日本版DBS(Disclosure and Barring Service)を強く求めます」と女性は語る。

DBSとは、イギリスにある犯罪歴チェックを行う公的機関のこと。一定年齢以下の子どもと接触する仕事では、この機関を通した証明書の発行が義務付けられているという。

●男性シッター「信用を守られる」

無犯罪証明書を求める現場シッターの会代表の参納初夏さんはこう語る。

「子どもたちが安心して過ごせる環境がつくれ、親御さんたちも安心して子どもを預けられ、保育教育現場に関わる人が自信を持って働くことができます」

参納さんが代読した男性シッターの声には、次のようなものがあった。

「性犯罪に関することについては、そのほとんどが男性保育者によるものなので、自身の振る舞いが該当しないかを特に気にしています」

「性別にかかわらず、保育と教育の現場に関わるスタッフ全員の信用を守るためにも、日本版DBSの導入を求めます」

●更生の妨げ、職業選択の自由との関係は?

しかし、性犯罪歴の照会となれば、本人の更生の妨げになったり、差別を生んだりする恐れもあるだろう。職業選択の自由や個人情報の問題という論点もありえる。他業種にも波及するかもしれない。

これらの点について、病児保育などのサービスを提供する認定NPO法人フローレンスの代表理事‎・駒崎弘樹さんは次のように話した。

「性犯罪を犯した方の更生に関しては、社会的には配慮すべきだと思いますし、心を砕くべきだと思っております。

しかし、再犯率やさまざまな観点から考えると、何も子どもと触れる仕事に戻ってこなくても良いのではないか」

駒崎さんは、里親希望者については、都道府県が本籍地の市町村に対して、犯歴情報を照会していることを例にあげる。児童福祉法で児童虐待などの経歴が欠格事由になっているからだという。

「子どもの人権を尊重し、現実問題として里親や海外では(犯歴がないことを)出している」

「難しいバランスはあるかと思いますが、被害を増やさないためにもチェックの仕組みを導入していただきたい」

政治家や省庁に働きかけ、議論を喚起したいという。

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