「食品衛生責任者」がいなくても営業を続けて大丈夫なのかーー。そんな相談が、弁護士ドットコムに寄せられた。
相談者は飲食店のアルバイト。食品衛生責任者の不在に気づき、店の責任者に伝えたところ、「今度取りに行く」と返答されたという。開業当初からいなかったようだ。
食品衛生責任者には、自治体等が開催する養成講習会を受講修了(当日中に修了可)するか、栄養士や調理師など特定の資格をもっていれば、なることができる。
飲食店などでは、「食品衛生責任者 ●●●●(氏名)」と掲示されているプレートをよく見かける。退職してしまうこともあるだろうが、食品衛生責任者がいなくても営業していいのだろうか。食品関連法務に詳しい佐藤光子弁護士に聞いた。
●すべての飲食店や食品事業者が店舗ごとに設置する必要がある
ーー食品衛生責任者は法的にはどのように位置づけられてますか
「食品衛生責任者については、食品衛生法に基づき条例で定められています。また、厚生労働省の定めるガイドラインでは、すべての飲食店や食品事業者に設置が義務づけられており、許可された施設(店舗)ごとに置く必要があります。
食品営業を行う者は、自分で食品衛生責任者となるか、従事者のうちから食品衛生責任者1名を定めて置かなければなりません」
ーー具体的な役割は何でしょうか
「食品衛生責任者は、食品衛生上の管理運営にあたり、食中毒など食品衛生上の危害の発生を防止するための措置が必要な場合、営業者に対して改善を進言し、その促進を図る義務があります。
また、法令の改廃等に留意して、最新情報に留意し違反行為のないように努めなければなりません。各自治体で食品衛生責任者などを対象とした食品衛生実務講習会を実施しており、その講習を受け、知識を店舗のスタッフに伝えることなども行う必要があります」
●不在で営業継続は厳禁、営業許可が取り消されることも
ーー相談者の店舗では開業当初から食品衛生責任者がいなかったようです
「開業の際、営業許可は得たものの、食品衛生責任者の選任が間に合わない場合、保健所の窓口へ食品衛生責任者設置誓約書を提出することで、若干の期間の猶予をしてもらい、その間に食品衛生責任者を選任することがあります」
ーー開業当初に不在というケースはあり得るのですね
「しかし、食品衛生責任者を選任せずに営業の継続は出来ません。
食品衛生責任者を選任せず、あるいは他人名義で営業すると、行政処分として、指示、営業停止、営業許可の取消しの対象となります」
ーー不在の場合は早急に選任した方がよさそうです
「夏の時期は特に食中毒に注意が必要です。食品衛生責任者のもと、従業員が衛生管理を徹底し、食の安全の徹底をはかっていくことが求められます」