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刑事裁判「弁当切り」で実刑が長くなるのを回避、どんな理屈があるのか?
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刑事裁判「弁当切り」で実刑が長くなるのを回避、どんな理屈があるのか?

無免許運転をしたとして、道路交通法違反に問われた元お笑い芸人の弁護側が、懲役4月の実刑とした4月28日の東京地裁判決を不服として控訴したことが報じられた。この判決では、元お笑い芸人が、別の犯罪で執行猶予期間内だったことが注目された。

報道によると、元お笑い芸人は2013年6月にも無免許運転などで懲役1年6か月、執行猶予3年の判決を受けていた。そして再び無免許運転で懲役4か月の実刑判決が出たのだ。

執行猶予期間中に実刑判決が確定した場合、その執行猶予は取り消されるため、そのような事態を避けるために控訴したのではないかとネット上では指摘されているが、具体的にはどういうことなのだろうか。小野智彦弁護士に聞いた。

●実刑判決が「4か月」になるか、「1年10か月」になるか

「今回の話は、俗に言う『弁当切り』のことですね。『弁当切り』を説明する前に、そもそも『弁当』とは何か、説明しましょう。これは現在、執行猶予が付いているということです。執行猶予中の人のことを『弁当持ち』と言います」

弁当を「切る」とは、どういうことか。

「この元お笑い芸人の方ですと、2013年6月に3年の執行猶予判決を受けています。この方は2016年6月に入る前には執行猶予期間が満了し、前科について、刑に服さなくても良くなります。

ところが、執行猶予期間中に、今回の事件について刑が確定すると、執行猶予判決が取り消され、前科についての1年6か月と今回の4か月のあわせて1年10か月の実刑を受けなければならなくなります。

前科について、更生を期待して執行猶予判決という恩情判決を下したにもかかわらず、それを裏切ったので、合算して実刑を受けてもらうということです。逆に言えば、これが再犯への抑止力になっているわけです。

現在は、2016年5月です。あと1か月待てば、執行猶予期間が満了します。ということは、一審で実刑判決が出たとしても、控訴して時間を稼げば、審理中に執行猶予期間が満了することになり、仮に控訴審で現在の事件について実刑が確定したとしても、4か月だけ実刑を受ければ良いと言うことになります。これを俗に『弁当切り』というわけです。

一件、ずる賢い方法のようにも見えますが、刑法の規定でそう決まっていることですし、相応の期間再犯をしなかったということで、更生に向けて努力があったと評価できることから、やむをえないものと思います」

小野弁護士はこのように話していた。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

小野 智彦
小野 智彦(おの ともひこ)弁護士 大本総合法律事務所
浜松市出身。1999年4月、弁護士登録。手品、フルート演奏、手相鑑定、カメラ等と多趣味。手品の種明し訴訟原告代理人、ギミックコイン刑事裁判弁護人、雷句誠氏が漫画原稿の美術的価値を求めて小学館を提訴した事件などの代理人を務めた。エンターテイメント法、離婚、相続、交通事故、少年事件を得意とする。

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