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日弁連「極めてあいまい、恣意的な運用の恐れ」テロ対策「共謀罪」創設議論に危機感
日弁連のパンフレット

日弁連「極めてあいまい、恣意的な運用の恐れ」テロ対策「共謀罪」創設議論に危機感

具体的に犯罪行為を実行していなくても、その話し合いをした段階で処罰する「共謀罪」。これまで自公政権で検討されたことはあるが、三度、廃案になっている(2003、05、09年)。海外であいつぐテロ事件などを受けて、必要性を訴える声もあるが、共謀罪の創設に反対する日本弁護士連合会は3月22日、記者向けの勉強会を開き、その問題点を解説した。

●「例外中の例外部分が処罰の対象に」

日弁連・共謀罪法案対策本部本部長代行の山下幸夫弁護士は、共謀罪が制度化されることによって、「現在の日本の法律では全く処罰されていなかった例外中の例外の部分が、原則として処罰されるようになる」と危機感をあわらにした。

「日本の刑法は、結果が発生した場合に処罰する『既遂犯』が原則だ。行為はしたが結果は発生しなかった場合を処罰する『未遂犯』や、凶器の準備など犯罪の準備行為をした場合を処罰する『予備罪』は、例外的に定められている。共謀罪は、これよりもさらに前段階で、犯罪について話し合っただけで成立することになる。

ある行為を処罰するためには、どのような場合に犯罪が成立するかという点が明確に定められていなければならないのが刑法の基本原則だ。それなのに、共謀罪では、共謀がいつ成立したかという点が極めてあいまいで、恣意的な運用がなされる恐れがある。組織犯罪が対象というが、たとえば、労働組合がストライキを計画したら、『逮捕監禁罪の共謀だ』として、ある日突然逮捕されるという事態がありうる」

●「現在の法制度で対策できる」

一方で、テロ対策のために共謀罪が必要だとする意見があることについて、日弁連・共謀罪法案対策本部副部長の海渡雄一弁護士は「現在の法制度の中で対応ができる」と反論する。

「日本ではすでに、一部の重大な犯罪については陰謀罪や予備罪、準備罪が定められている。判例で、共謀しただけで犯罪を実行していない者を処罰する『共謀共同正犯』の理論も確立している」として、今の法制度でも対応が可能であることを強調した。

また、政府はこれまで、「国際組織犯罪防止条約」を批准するために、共謀罪を国内法で整備する必要があると説明してきた。国際的な組織犯罪を防止するために採択されたこの条約は、共謀罪などの犯罪化を条約加入の条件としているため、日本でも共謀罪を新設することが必要だというのだ。


こうした政府の見解について、海渡弁護士は「批准した国連の条約と、国内の法体系が矛盾するケースは山ほどある。人権条約の時は、国内法が整備されないまま批准した。なぜ、そうした柔軟な対応できないのか」と疑問を示していた。

(弁護士ドットコムニュース)

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