免許を持っていない同僚に車を運転させ、その車に同乗した男性会社員が1月上旬、書類送検されたと報じられている。男性会社員は昨年12月、都内で摘発され、「運転に自信がなかった」などと、容疑を認めているという。
自分が無免許運転をした場合だけではなくて、こんな場合にも「犯罪」とは初耳だったが、実はこれ、昨年12月施行の改正道路交通法で設けられた新ルールで、摘発は首都圏では今回が初めてだそうだ。
この新ルール、具体的にはどんな内容なのだろうか。また、なぜ、そんなルールが設けられたのだろうか。交通問題にくわしい前島申長弁護士に聞いた。
●処罰されるのは無免許運転を「要求・依頼」したとき
「今回の事例は、昨年12月1日施行の改正道路交通法改正で新設された『無免許運転同乗罪』(法64条3項)が適用されたケースです」
無免許運転同乗罪とは、いったい何なのだろうか? 単に無免許の人が運転する車に乗り合わせたような場合でも、罪に問われてしまうのだろうか?
「いいえ、単に無免許運転の車に同乗しただけでは、罪とはなりません。
今回新設された無免許運転同乗罪では、運転者が免許を受けていないことを知りながら、その運転者に自動車等を運転して自己を運送することを『要求・依頼』して同乗した場合に、処罰が限定されています」
●悪質・危険な無免許運転の根絶が狙い
どうして、そんなルールができたのだろうか?
「この無免許運転同乗罪は、悪質・危険な無免許運転を根絶するため、整備されたものです。
実は従来も、無免許運転を手助けした人については、刑法のほう助犯(手助けをすること)が適用され、処罰される場合もありました。
しかし従来、実際に処罰されるのは、無免許の人に運転方法を指導・助言して運転させた場合(指導ほう助)や、無免許運転者に対し自動車を貸した(貸与ほう助)ような、特に悪質な場合に限定されていました。
そこで今回、従来の無免許運転のほう助犯よりも、処罰対象となる範囲が事実上広く、刑罰も重い、『無免許運転同乗罪』が新設されたのです。
法定刑は、2年以下の懲役または30万円以下の罰金です」
今回の法改正では、無免許運転そのものの罰則も、《1年以下の懲役または30万円以下の罰金》から、《3年以下の懲役または50万円以下の罰金》に引き上げられている。悲惨な交通事故を減らすためのルール整備は、いまなお進んでいるようだ。