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児童ポルノ放置容疑で「写真袋」社長逮捕、「場」を提供しただけでもアウトなのか?
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児童ポルノ放置容疑で「写真袋」社長逮捕、「場」を提供しただけでもアウトなのか?

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写真や動画を共有できるスマートフォン向けアプリ「写真袋」に投稿された児童ポルノ画像を放置したとして、警視庁は11月5日、アプリ運営会社の社長を児童ポルノ禁止法違反(公然陳列)ほう助の容疑で逮捕したと発表した。

報道によると、運営会社の社長は、昨年3月に兵庫県の男性が写真袋に投稿した18歳未満の少女の裸など写真60枚が公開されていることを知りながら放置して、児童ポルノの閲覧を手助けした疑いがもたれている。

写真袋では、画像の投稿者が設定した「合言葉」と呼ばれるパスワードを入力すれば、誰でも閲覧やダウンロードができる。閲覧数によって投稿者にポイントが入り、商品券と交換できるシステムのため、投稿者の中には合言葉をネットの掲示板などで公開して、ポイントをより多く得ようとする者がいたという。また、警視庁の少年育成課の調べでは、投稿された3~4割が児童ポルノだったと報じられている。

一方で、報道によると、社長は「逮捕された事実は今、理解できません」と話しているそうだ。また、TBSの取材に対して、社長は「我々のアプリがポルノ的なものに使われているかどうか認識あるかというと、それは全くない」と答えている。

今回、児童ポルノを投稿したのは別の人物なのに、アプリ運営会社の社長が逮捕されたのはなぜだろうか。今回の逮捕のポイントを、インターネットの問題に詳しい最所義一弁護士に聞いた。

●「FC2動画」とよく似たケース

「今回の逮捕は、いわゆる児童ポルノ法7条6項(公然陳列)に違反する行為を、ほう助(手助け)したことを理由とされて行われたようです」

最所弁護士はこのように指摘する。

「ほう助犯(刑法62条1項)は、犯罪行為を直接行った者(正犯)の手助けをしたことを理由として、処罰される犯罪です。

ほう助犯として逮捕された例として、『FC2動画』の実質的運営者が逮捕された件がありますが、今回の逮捕も、『FC2動画』のケースとよく似ています」

画像を投稿したのではなく、ただ放置しただけでも、罪に問われるのだろうか。

「まず、児童ポルノを公然と陳列した者(写真袋にアップロードし、誰もが閲覧できる状態にした者)は当然、罪に問われます。

一方で、誰もがダウンロード可能な『場』であるアプリを提供した者も、児童ポルノが公然と陳列される状態にあることを知りつつ、何らの対策も取ることなく、ことさらに放置したような場合には、やはり、ほう助(手助け)したことを理由として、罪に問われる可能性があります」

●「場」を提供する者には、違法な画像を削除する義務がある

今回のケースについては、どう考えればいいだろうか。

「今回問題とされた写真袋の公式サイトの説明からすると、写真袋は本来、友人や家族と、プライベート写真等をやり取りする目的で使用されることが想定されています。

不特定もしくは多数の者に画像を提供する行為は、サービスの本来の『目的外』の行為なので、運営者としては、全く想定もしていなかったと説明する可能性はあります。

たしかに、全く想定していない利用のされ方をされた場合にも、無条件に、ほう助犯としての責任を問われることは、行き過ぎだと思います」

では、放置したことを理由に逮捕したことは、行き過ぎだったのだろうか。

「そうとは言い切れません。

少なくとも、誰もがダウンロード可能な『場』を提供する者には、違法な画像がアップロードされた場合には、速やかに削除するなど対策を講じる義務があると思います。

児童ポルノ法第16条の3でも、インターネット事業者に対する努力義務が規定され、児童ポルノを削除する措置をとることが求められています。

今回のケースでは、報道によると、写真袋にアップロードされた画像の3割から4割が児童ポルノだったということです。それが事実だとすれば、児童ポルノが容易にダウンロードできる状態にある、つまり公然と陳列される状態にあることを知りながら、何らの対策も取ることなく、ことさらに放置したと評価されてもやむを得ないと思います。

もちろん、放置しただけで直ちに刑事上の責任が問われるということにはなりませんが、本件では、投稿から一定期間経過後にユーザーに課金する有料サービスとなり、『場』の提供者と投稿者の双方が『利益』を得られるような仕組みが取られていました。

『場』の提供者が、児童ポルノの公然陳列によって、少なくとも『利益』を得る結果となっていたという点を、捜査機関としても見過ごすことができず、逮捕に踏み切った――。そのような事情があるのではないでしょうか」

最所弁護士はこのように分析していた。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

最所 義一
最所 義一(さいしょ よしかず)弁護士 弁護士法人港国際法律事務所湘南平塚事務所
東京大学農学部農業工学科(現生物・環境工学専攻)を卒業後、IT技術者や病院事務職(事務長)を経て、弁護士に。一般企業法務や知的財産問題のほか、インターネット関連のトラブルの解決に精力的に取り組んでいる。

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