体罰が容認されない社会となって久しいはずだが、なおも暴力をやめない教師がいるようだ。「中学生の子どもへの体罰、恫喝を止めさせる方法を教えてください」と、被害に悩む生徒の親から弁護士ドットコムの法律相談コーナーに相談が寄せられた。
きっかけは、生徒が教室で、その教師から侮辱されたこと。悔しさから反抗すると、教師は別室に生徒を連れていき、その腹部を蹴ったそうだ。怒鳴り続ける教師を前に、生徒は泣き続けた。現場は複数の生徒によって目撃されているという。
「担任教師は、この事を知っていますが助けてくれません。当該教師は普段から武勇伝のように、生徒に体罰を自慢するそうです」という。生徒の親は「大事にはしたくない」というものの、再発への懸念がある。「裁判沙汰にする気がなくても、弁護士の先生は力を貸してくださるのでしょうか。家族だけでもやり遂げられるでしょうか」とたずねている。
生徒への暴力や恫喝を止めさせるために、親には何ができるのだろうか? 学校問題に詳しい高島惇弁護士に話を聞いた。
●校長からの指導監督は十分な抑止力になる
「体罰や恫喝の再発防止に向けた手段ですが、まずは校長に対し、事実関係の調査・確認を行うよう請求することが考えられます。
校長は、校務をつかさどり、所属職員を監督すべき立場にあることから(学校教育法37条4項など)、事実関係を調査するとともに、再発防止のための教諭への指導監督や対応策の実施を行う責務を負うと、理解されているからです」
その場合、学校側はどのような対策をする必要があるのだろうか。
「具体的な対応策としては、当該教師に謝罪させる、担任や教科担当から外す、それが無理なら保健室登校を認めるといった手段が一般的かと思います。また、このような手段にまで至らなくとも、校長から当該教師に対して指導監督するだけでも、十分な抑止力になります。
そして、校長が誠実に対応しない場合、公立学校であれば教育委員会に対し、私立学校であれば私学監査を担当している部署に対し、事実調査や対応を要請していくことになります。たとえば、東京都であれば生活文化局私学部が担当部署にあたります。
もっとも、教育委員会や都道府県が直接的な指導を行うケースは少なく、あまり実効的な解決にならないのが実状ではあります」
●法的措置は可能なのか?
確実に暴力を止めさせるためには、何ができるのだろうか。
「残念ながら学校が自発的に体罰や恫喝の存在を認めなかった場合、法的措置を検討する必要があります。
具体的には、まず、体罰等を行った教師の刑事責任を追及することがありえます。暴力については暴行罪や傷害罪が、恫喝については脅迫罪の成立が考えられます。また、私立であれば教師と学校に対し、公立であれば国又は地方公共団体に対し、損害賠償を請求することになります。
さらに、学校が体罰防止の対応策を怠ったために更なる被害が生じた場合、学校の安全配慮義務違反を理由として、別途、損害賠償を請求する余地があります。
法的措置に発展した場合、まずは示談交渉で解決を図っていくことになり、特に私立学校であれば早期に解決するケースもままあります。
そして、示談がまとまらずに訴訟へ発展した場合には、解決までに長い年月を要することが多いですが、裁判所からの釈明に基づいて学校側が真摯に事実関係を見直し、和解で解決するケースも存在します」
今回の相談者は、このようなケースでも弁護士を頼れるのか、と相談している。
「体罰問題については、裁判沙汰にしなくとも、弁護士が様々な形で関与することが可能ですし、体罰に関する相談窓口を設置している地方公共団体もあります。
お子様の心身の被害回復を図ることが一番重要になりますので、自分で抱え込まずに、気軽に相談されることをお勧めいたします」
このように高島弁護士は述べていた。