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犯行現場を見られた「賽銭泥棒」神主を叩いて逃げる――逮捕容疑「事後強盗」とは?
写真はイメージ

犯行現場を見られた「賽銭泥棒」神主を叩いて逃げる――逮捕容疑「事後強盗」とは?

神社の賽銭箱から現金を盗み取ろうとしたところ、神主に見つかってしまったので、逃げるために神主の頭を木の枝で頭を叩いた――。そんなことをした北海道の無職の男が6月中旬、「事後強盗未遂」の疑いで現行犯逮捕された。

報道によれば、男はその日の昼ごろ、札幌市内の神社の境内で、賽銭箱を倒して物色している現場を神主の男性に見つかり、逃走するため、神主の頭を長さ60センチ、直径3センチの木の枝で数回叩いたという。神主にけがはなく、金品も盗まれなかった。賽銭箱に入っていたのは約1900円だった。

今回、男性にかけられた容疑は「事後強盗未遂」なる罪名。あまり聞き慣れない罪名だが、「事後強盗」は、普通の「強盗」とどう違うのだろうか。大山滋郎弁護士に聞いた。

●「事後強盗」と「強盗」はどう違う?

「一般的に『強盗』といえば、包丁を突き付けて『金を出せ!』というイメージですよね。そのイメージは間違いではなく、暴力や脅迫をおこなったうえで、他人からお金や物を盗み取ることを『強盗』といいます」

大山弁護士はこのように説明する。では「事後強盗」というのは?

「『事後強盗』というのは、最初は単なる物取りのような『窃盗』から始まる犯罪です。今回の賽銭泥棒は、当初は誰も見ていないところで、賽銭を取ろうとした。この時点で、暴力や脅迫はしていませんから、もしここで目撃されず、犯人がお金を盗んでいたならば、問われるのは『窃盗罪』でした。

しかし犯人は、逃げるために神主さんの頭を叩きました。『強盗』のようにお金を取るためにやったことではなく、逃げるために叩いています。この行為があったために『事後強盗』と認められたのです。

なお今回は、賽銭を盗ろうとした現場を目撃されたため、実際には盗っていません。そのため、逮捕容疑は『事後強盗罪』ではなく『事後強盗未遂罪』となりました」

暴力や脅迫が、物取りの「前」か「後」かにかかわらず、同じ「強盗」としたのは、どんな目的があるのだろうか。

「窃盗を犯した者が、逃げるために暴力や脅迫行為を行った場合に、『強盗』と同じように処罰するのが『事後強盗』の規定です。窃盗の現場では、逃げるための暴力行為などがよく行われるため、厳しく処罰しようという目的があります」

では、法定刑に違いはあるのだろうか?

「事後強盗も強盗も、法定刑は全く同じ重さです。ただ、逃げようとして無我夢中で暴力をふるう場合と、最初から暴力などを使ってものを取ろうとする場合とでは、罪の重さが事実上違ってくることはあり得ます」

このように大山弁護士は話していた。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

大山 滋郎
大山 滋郎(おおやま じろう)弁護士 弁護士法人横浜パートナー法律事務所
刑事弁護と企業法務が得意分野。メーカーの法務部門に長く勤め、勤務のかたわらニューヨーク州弁護士資格を取得し、日本の司法試験にも合格した。会社の法律問題を扱う一方、多数の刑事事件を手がける。

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