ギャンブルで借金を作り続ける夫。妻が「子どもの口座は守る事ができますか?」と弁護士ドットコムに相談を寄せた。
相談者の女性は、結婚5年目で子どもが2人います。女性は「子どものためにもなんとかやり直したい」と、貯金から夫の借金の一部を返済してきました。しかし夫の借り入れは止まず、現在、借金は総額1500万円ほどに膨らんでいます。
夫は「個人再生をして最後にもう一度だけやり直したい」と話していますが、女性は「一生懸命子供の為にと貯めて来たお金も全て主人のギャンブルに持っていかれると思うと私自身も限界に来ています」とこぼします。
子ども名義の口座にあるという300万円は、個人再生をすることで守ることができるのでしょうか。また自己破産との違いは何なのでしょうか。斉藤圭弁護士に聞きました。
●「預貯金を守ることは充分に可能
「個人再生手続を活用によって、子ども名義の300万円の預貯金を守ることは充分に可能と考えます」
斉藤弁護士はそう話します。個人再生手続とはどのようなものでしょうか。
「個人再生手続とは、債務の支払いが困難な場合に、裁判所の手続で債務を圧縮して、その金額を分割で支払っていくものです。借金のすべてが免除される「自己破産」とは違って、一部の返済は続くのが特徴です。
実際の支払い金額は、以下を比較して最も高い金額となります。 (1)500万円未満の場合は100万円(100万円未満の場合は全額 ) (2)1500万円までは債務の2割相当額 (3)再生手続申立時点の申立人の資産総額
この金額を3年から5年で分割弁済する再生計画を、裁判所に認めてもらう手続となります。計画通りの支払いができれば、残る債務の支払義務は免除されます」
自己破産とは異なるのでしょうか。
「個人再生は、裁判所を利用した手続という点で、自己破産と似たものです。ただし、自己破産の場合、債務の原因がギャンブル等の浪費である場合、裁判所に認めてもらえないケースがあります。個人再生であれば、一部でも債務の支払いをすることになるので、裁判所に認められうるものです。」
●住宅を守りながら債務の圧縮が可能
借金の一部を免除してもらうという点で、異なるのですね。
「はい。個人再生は、住宅ローン付きの自宅を持っている場合に有効な手段となります。自宅を持っている人が自己破産するとなると、通常、ローン会社が処分に動き、自宅は売却などされてしまいます。
一方、個人再生を利用することで、自宅を守ることが可能になります。この場合は、『住宅ローンは今まで通り支払いながら、他の債務については圧縮する』という再生計画を裁判所に認めてもらう方法が一般的です(住宅資金特別条項付個人再生と呼ばれる手続です)」
●「即座に解約を迫られることはない」
相談者の場合、1500万円の借金があります。
「個人再生をする場合、支払う最低弁済額は(1)300万円、(2)再生申立時点の資産額、の2つを比較します。高い方の金額を分割支払いすることで、残る債務は免除してもらうという再生計画を立てることになります。
再生申立時点の資産額を計算する際に問題になるのは、子ども名義の300万円の預貯金です。この預貯金の元のお金には、相談者の夫の所得も含まれているはずです。
このため、夫婦共有財産として、150万円は相談者の夫の資産としてカウントされると解されます。そうなると、預貯金以外に車や生命保険等の積立金が相当額ある場合、債務の圧縮が最大の300万円まではできない可能性もあります。
とはいえ、300万円までの債務の圧縮が認められ、例えば5年払いとして毎月5万円を返済し続けることができれば、子ども名義の口座の300万円は即座に解約を迫られることはないといえます」 (弁護士ドットコムニュース)