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「知らぬ間に息子の奨学金の連帯保証人にされた」返済義務はないと提訴…論点は?
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「知らぬ間に息子の奨学金の連帯保証人にされた」返済義務はないと提訴…論点は?

奨学金の返還をめぐり、10月4日に大阪地裁で異例の提訴があった。大阪府の60代女性が、息子の奨学金について、日本学生支援機構から返済の要求があったが、自身の知らぬ間に契約書の連帯保証人に記載されていたとして、返済義務がないと訴えたのだ。

報道によると、息子は1999年から大阪市内の専門学校に通い、480万円の奨学金を借りた。その際の契約書に女性の名前が記載されているが、女性は把握しておらず、「どのような審査があったのかわかりませんが、本人、連帯保証人、親権者の字が何の小細工もなく3か所とも同じでした」と話しているという。

今回の裁判の論点として、どのようなものが考えられるのか。鴨田譲弁護士に聞いた。

●奨学金の返還を求める訴訟で機構側が敗訴するケースも出ている

「日本学生支援機構(以下、機構)の奨学金延滞者に対する法的措置(支払督促申立)の件数は、2009年から急増し、近年、毎年8000件以上の申立がなされています。その中の多くは、自分の意思で奨学金を借りたものや、あるいは、保証をしたものの、返済ができずに延滞したというケースだと思われます。

しかし、中には、自分の意思で借りていない、保証をしていないというケースもあり、機構側が敗訴するケースも出てきています。息子が母親の知らないうちに連帯保証人欄に母親の署名押印をしたとしても、原則として、無権代理行為であり母親は返済義務を負いません。もっとも、母親が事後的に追認をすれば連帯保証は有効となり、母親も返済義務を負うことになります」

逆に、機構側の主張はどうなることが想定されるのか。

「機構側は、(1)連帯保証人欄の署名の筆跡が息子のものであったとしても、それは母親の承諾の下で記載されたものであり有効な代理行為である、(2)仮に母親の承諾がなかったとしても、その後母親が追認したことにより息子の代理行為は有効になった、と主張することが考えられます。

このような機構側の主張が認められるか否かは、奨学金借入当時の状況や卒業後、母親が奨学金の保証を前提とした行動を取っていたかなどの具体的事情によると言えます」

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

鴨田 譲
鴨田 譲(かもだ ゆずる)弁護士 埼玉総合法律事務所
1983年埼玉県生まれ。埼玉弁護士会所属。 埼玉奨学金問題ネットワーク事務局長と奨学金問題対策全国会議事務局次長を兼任。 本人が借りた覚えのない奨学金について返還請求を起こされた裁判で全面勝訴(請求棄却)判決を獲得。

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