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高額納税者「大谷翔平」に鎌ケ谷市長「メジャー行っても住民票残して」…可能なのか?
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高額納税者「大谷翔平」に鎌ケ谷市長「メジャー行っても住民票残して」…可能なのか?

早ければ来オフにもメジャーリーグへの挑戦が実現する、プロ野球・日本ハムファイターズの大谷翔平選手。その大谷選手が住む、千葉県鎌ケ谷市の清水聖士市長(56)が「流出」に危機感を募らせているようだ。

ファイターズの本拠地は北海道だが、2軍施設や寮は鎌ケ谷市にあり、大谷選手も市内の寮に住民票を置いている。二刀流で大活躍の大谷選手は、年収も高額。2017年シーズンの年俸だけで、2億7000万円だという。

高額納税者だけに、大谷選手の動向は市の財政にも影響する。スポーツ新聞の報道によると、清水市長は1月15日にあったファイターズの「新入団歓迎式典」に出席。大谷選手のメジャー移籍について、「住民票だけでも残してくれないかな」「あと3年はいてほしい」と言って、周囲を笑わせたようだ。

発言は冗談だっただろうが、実際に大谷選手が海外チーム移籍後も、鎌ケ谷市に住民票を残し、税金を納めることはできるのだろうか。新井佑介税理士に聞いた。

●納税額は少なくとも1600万以上?

「大谷選手のメジャー移籍はとても楽しみな話題ですね! そんな大谷選手ですが、そもそも鎌ヶ谷市にいくら住民税(市民税)を納めているのでしょうか。

プロ野球選手は、所属球団と雇用関係のある『社員』ではなく、請負契約をする『個人事業主』なので、用具代やトレー二ング関連費用などを『経費』として計上できます。とはいえ、大谷選手の経費は正確にはわからないので、今回はゼロだと仮定します。

住民税は所得の10%ですが、このうち4割は県民税。なので、年俸2億7000万円の大谷選手は、年俸の6%に相当する約1600万円を鎌ヶ谷市に納付することになります。もちろん年棒以外にCM出演料などもあるでしょうから、あくまで参考値です」

市単位で考えれば、「とてつもない」とまでは言えないだろうが、かなりの金額とは言えるだろう。

●「住民票がある場所」=「住所地」とはならない

では、メジャーに行っても、大谷選手が鎌ケ谷市に住民税を納めることはできるのか。

「住民税とは、その年の1月1日に『住所』がある都道府県及び市町村に納める税金です。ただし、『住所地』は生活の本拠を置いているかどうかで判断するため、必ずしも『住民票がある場所イコール住所地』にはなりません。

もし大谷選手がメジャーに移籍した場合、 1月1日をまたいで、概ね1年以上アメリカに居住することとなります。そうすると、鎌ヶ谷市は生活の本拠とは言えないので、住民票の有無にかかわらず、住民税を課税できないと考えられます」

シーズンオフに帰国した場合はどうか。

「メジャー挑戦を『長期出張』とみなし、住所地は鎌ヶ谷市であるという考え方に、検討の余地はあるでしょう。

しかし、やはりアメリカで年の大半を過ごしていることや、大谷選手が独身であり、家族も鎌ヶ谷市にいないことを考えると、生活の本拠はアメリカであり、『住所地』は鎌ヶ谷市にはないといえるでしょう。

海外に住む場合は、所得税法上の『非居住者』になります。海外移籍した場合、住民税は住所地がないとしてそもそも課税されません。一方、国内源泉所得に限っては、所得税が課税されます。日本からのCM出演料は所得税の課税対象になるということです」

残念ながら、メジャー移籍が決まれば、鎌ケ谷市の税収減は不可避のようだ。

【取材協力税理士】

新井 佑介(あらい・ゆうすけ)公認会計士・税理士

慶応義塾大学経済学部卒業。金融機関との金融調整から新設法人支援まで、幅広く全力でクライアントをサポート。趣味はサーフィンとスノーボード、そして登山。好きな言葉は「変わり続ける勇気」

事務所名   : 経営革新等支援機関 新井会計事務所 

事務所URL: http://shozo-arai.tkcnf.com/pc/

(弁護士ドットコムニュース)

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