文部科学省の幹部らが、元幹部が早稲田大学に再就職する際、「天下り」のあっせんを行っていたとされる問題が波紋を広げている。
内閣府の再就職等監視委員会は1月20日、文科省が組織的に国家公務員法に違反する「天下り」をあっせんしたとする調査結果を公表。文科省人事課は、幹部を受け入れるよう、OBを通じるなどして早稲田大学に打診。本人も、履歴書を送るなどの求職活動を行っていた。こうした行為を隠すために、同省の人事課職員が、再就職を監視する監察官に隠ぺい行為をしたことも認定されている。
安倍晋三首相は、他の部署で同様の事案がないか徹底的に調査するよう、山本幸三国家公務員制度担当相に指示している。天下りをした場合、誰にどのような法的問題が生じる可能性があるのか。林朋寛弁護士に聞いた。
●公務員が再就職すること自体は違法ではない
「前提として、まず、『天下り』自体が法律で禁止されているわけでありません」
林弁護士はこのように述べる。どういうことだろうか。
「『天下り』とは、決まった定義があるわけではないようですが、本件では、『在職していた官庁に密接な関係のある外郭団体や企業、法人などに再就職すること』を指して問題になっていると考えられます。
そういう天下りが横行すると、公務の公正や中立性を害する危険が生じます。
つまり、実質的に権限や予算を握っている公務員の天下りや、天下りに向けた働きかけが自由にされると、天下りを受け入れる側への補助金や裁量の行使等で有利に扱われたり、権限を背景として天下りを受け入れるように事実上の強要が行われたりすることになりかねません。
また、天下りのために無駄な団体等が設立・維持されてしまうおそれもあります。
しかし、退職する職員には職業選択の自由がありますし、退職後の生活のために再就職する必要もあります。そのため、再就職そのものが禁止されているわけではありません」
●法的に問題になるのはどんな行為なのか?
では、法的に問題となるのは、どんなケースなのか。
「国家公務員法で規制されているのは、各府省の職員等が再就職の『あっせん』を行うことや、職員の在職中の求職活動、再就職者から在職していた組織への依頼です(106条の2〜4)。
再就職をした者や、受け入れた者が、再就職そのものによって法的責任を負わされるわけではありません」
具体的には、誰が、どのような法的責任を負う可能性があるのか。
「国家公務員法の『あっせん禁止』等の規制に違反した現職の職員については、停職等の懲戒処分の対象になります。
再就職をした者については、元の職場の職員に何かの職務上の行為をするよう要求したりした事実がもしあれば、国家公務員法違反の犯罪に該当する可能性があります。
また、在職期間中の求職活動が非常に悪質で、懲戒免職相当といった事実があれば、退職手当の返納処分になる可能性があります」
●法規制に違反しないような形であっても、注目されるべき
「今回の文科省の問題については今後も調査が行われるようです。
これとは別に、文科省以外の省庁においても、国家公務員法の規制に違反しないような形で、外郭団体や企業等に再就職して既得権益の確保などが行われていないかどうか、改めて注目されるべきでしょう。
天下りのためにあるような法人や事業が無いかについて、報道機関に一層のチェック機能を果たしてもらいたいです」