DV事件に数多く対応「大したことないと決めつけず、まず相談を」
フィクションの世界で活躍する法律家に憧れて
ーーいつ頃から弁護士を目指したのでしょうか?また、そのきっかけを教えてください。
中学生の時に行われた文化祭での『トム・ソーヤーの冒険』の演劇がきっかけです。私はそのお芝居で弁護士の役を演じていて、被告人が裁判所から逃亡するシーンがあったんですよ。本当にちょい役だったのですが、何か心に引っ掛かるものがあり、それから弁護士というお仕事を意識するようになりました。
それから漫画『家栽の人』(小学館、作画・魚戸おさむ、原作・毛利甚八)の桑田判事に憧れ、さらに木村晋介弁護士の『キムラ弁護士が駆けてゆく』(角川文庫)という本を読んだことが弁護士を目指すきっかけとなりました。演劇や漫画、エッセイ本に影響を受けたのです。
離婚問題、とくにDVやモラハラ問題に多数対応
ーー注力している分野を教えて下さい。
主に離婚関係の案件を取り扱うことが多く、中でもDVやモラハラが関わるケースが多いです。親権の奪い合い、大きな金銭のやりとり、警察沙汰になるような事件もあります。
所属する弁護士会の多摩支部でDVの法律相談をしているので、その流れから相談を受けることが多いですね。市役所の相談係との繋がりもあり、そちらから依頼者を紹介されることもあります。
そのため、専門的に扱っていると思われることもあり、評判を聞いて相談に来てくれる方もいらっしゃいます。また、私は「性の平等に関する委員会」の委員長を務めているので、女性が相談しやすいのかもしれません。
意外に思われるかもしれないのですが、DVやモラハラは、被害を受けている自覚がないケースが多いんですよ。客観的に見れば明らかに暴力を振るわれたりモラハラを受けていても、本人は『そういうものだ』と思ってしまうんです。
普通に離婚相談にいらっしゃって話を聞いてみたらDVだったとか、後はさきほど申し上げたように市役所から紹介されてご自身が自覚するケースが多いですね。
ーーこれだけDV・モラハラ問題が世間で騒がれているのに、なぜ被害者本人は自覚がないのでしょうか?
いろいろなケースがあり、ハッキリこういう理由だと断定はできないのですが、やはり日常的に暴力を受けていて、自分にとってそれが当たり前になってしまうのかなと思います。自分はダメな人間なんだと洗脳のように刷り込まれるので、相手が悪いという考えに至らないんです。物理的な暴力ですら気づきづらいのですから、精神的な暴力だけの場合はさらに自覚するのは難しいと思います。
また、DVを受けている自覚があっても、自分が悪いと思っているのでアクションを起こすことが難しい場合もあります。やっとの思いで、自分から相談に来てくれたのに、現状よりも状況が酷くなることを恐れて取り下げようとする方もいます。冷静な判断ができないのかもしれないですね。
本当に心が疲弊している人の中には、鬱病になる余裕すらないことがあるそうです。DVから解放され、やっと落ち着いてから鬱病が発症してしまうというケースをよく聞きます。DVやモラハラがひどすぎて、鬱病になる余裕すらないのです。
ーー逆に加害者側は自覚があるのでしょうか?
加害者側にも自覚がある場合もあるでしょうが、そうではない場合もあります。DVやモラハラは、相手を見下すことから始まるケースが多いです。自分の価値観や経済的な側面のみで判断して、相手は自分より下だと勘違いしてしまう。昔から言い古されている『誰が飯食わせてやってると思ってるんだ!」という言葉からもそういった勘違いが見て取れますよね。ここまで極端な例でなくても、どこかそういった考えが頭の片隅に残っている人は意外といます。
「自分の場合は大したことない」と思い込まないで
ーー弁護士として大切にされているものは何ですか?
先輩から教わった『どれだけ感情的になっても頭はクールに』という言葉です。被害者の話を聞いているとどうしても感情移入してしまいますが、弁護士はそれだけではいけません。相手を思いやりつつも、冷静で的確な判断をするように心がけています。
ーー最後に、法律トラブルを抱えて悩んでいる方にメッセージをお願いします。
先ほども述べたように、DVやモラハラは明確な状況でも自覚することが難しいものです。パートナーに傷つけられていても「自分の場合は大したことない」と思い込んで諦めてしまう方もたくさんいます。でもそれは、第三者に判断してもらうことが重要です。
今の時代は弁護士を選ぶ余地もあり、無料相談を受け付ける事務所もたくさんあります。気軽にメールでの対応も受け付けています。誰かの紹介でも別の相談でもどんな形でも構いませんので、弁護士事務所に辿り着いてさえくれれば、なんとかなります。少しでもご自身の状況に違和感があるのなら、まずは弁護士にご相談ください。