"be a lawyer" ー常に弁護士であれー
“エキスパート”な仕事にすごく魅力を感じた
私は学生時代から、専門職を題材にした映画やドラマが大好きでした。
医者や弁護士をテーマにした作品を見あさり、人が本当に苦しい時や辛い時に手を差し伸べることができるエキスパートな職業に魅力を感じ、自分も人に必要とされる人間になりたいと考えていました。そんな中、5つ年上の兄が突然「弁護士になる」と言って猛勉強を始めたんです。
そして日本で最難関と言われる司法試験に、一番身近な兄が合格するのを目の当たりにした時、自分の中の「困っている人を助けるエキスパートになりたい」という思いが確かなものになりました。 兄が弁護士になったことで、なんだか背中を押されたような気がしたんです。 私も弁護士になることを決め、勉強を始めました。そして兄が弁護士になって2年後に私も弁護士としてスタートを切りました。
兄とは、定期的に会って仕事についての話をします。同じ職業に就いていても、性格や考え方が異なる部分もあるので、兄との会話はとてもいい勉強になります。私の一番のライバルであり、同時に一番の理解者でもありますね。
「徹底的なクライアント目線」という教訓
24歳で弁護士登録後、私はアンダーソン・毛利・友常法律事務所で働き始めました。 「若い頃は死ぬほど働いて、できるだけ多くの経験をしたい」という単純な理由からです。
M&A取引はもちろんのこと、不動産・債権等の流動化及びCMBS等のストラクチャードファイナンス、REITへのアドバイスなど、本当に様々な事案を担当し、多くの経験を積みました。
アンダーソン・毛利・友常事務所での最大の学びは、「徹底的なクライアント目線」。
とにかく細部までこだわり、どんなに小さなことでも徹底的に調べ上げることが大事だと 教わりました。弁護士400名以上が勤務する大きな事務所でしたので、何か分からないことがあっても事務所内には必ずその分野のエキスパートがいて助け舟を出してくれることもあり、とても幸運な環境で働くことができました。
自分の担当する事件が新聞の一面を飾ることもあり、刺激的な毎日を送っていましたが、大手渉外事務所ならではの欠点である、「個人のお客さまとの出会いに乏しい」という部分に、だんだんと物足りなさを感じるようになってしまったんです。
そして2012年3月、5年半勤務した事務所を退職。その年の9月に当事務所を設立いたしました。
お父さんの“ラブレター”
先日「妻が子供を連れて出て行ってしまった」という男性のご相談を受けました。 「できることならやり直したい」という依頼者(夫)。私は相手方の弁護士に交渉して、 依頼者(夫)、奥さま、相手方の弁護士、私の4人で話し合いの場を設けることに成功しました。
とはいえ、少し前まで同じ屋根の下で暮らしていた夫婦が、いきなり弁護士を交えて話すとなると、ものすごく仰々しい雰囲気になってしまいます。 そこで、私は、依頼者(夫)から奥さまへお手紙を渡してはどうかと提案しました。せっかく話し合いの場を設けるのだから、むやみに感情をぶつけ合うのではなく、気持ちを整理してからぶつけた方がいいと考えたからです。
その後何度か話し合いをしましたが、“手紙作戦”が功を奏し、この夫婦は離婚をせずに、もう一度夫婦手を取り合って一緒に生きていくことを決めました。育ち盛りのお子さんがいましたので、「離婚しない」という選択肢を取れたことは本当に良かったですね。お父さんからの“ラブレター”をきっかけに、もう一度家族の絆を取り戻すことができた。
私にも子供がいますが、子供にとって、両親の存在は他の何にも代えられないものです。家庭環境や家庭教育が人をつくるといっても過言ではありません。母性が必要な時は多々ありますし、また、逆に父親という存在が家庭にバランスや安定感をもたらすこともあります。
成長とともに、子供は学校や習い事などで、徐々に親以外の人間とのコミュニティーを持ち始め、進学したり就職したりするたびにだんだんと親といる時間も少なくなります。そう考えると、親子だけの時間って、意外と短いんですよね。でもその短い時間が、時に親子の人生の意味を変えることがあるかもしれない。そう考えると、やっぱり妥協はできないですよね。
私の目の前にいる夫婦だけでなく、家で待っているお子さんの顔や想いを想像しながら仕事をしなければいけないと思います。

あえて、心を冷ます
当事務所では、離婚問題以外にも様々な問題を取り扱っています。会社の経営者から、企業法務についてのご相談をいただくこともしばしばですが、私はどんな問題を担当する時にも、決めていることがあります。
それは、あえて心を冷まして対応すること。
苦悩を抱える依頼者の心の中には、さまざまな感情が渦巻いています。 感情は良くも悪くも伝染しますし、私も人間ですので、仕事中に怒りや悲しみを感じることはないと言えば嘘になります。 でも弁護士が依頼者と一緒に感情的になって一喜一憂してしまっては、解決が長引いたり、理想的な解決から遠ざかってしまう可能性さえある。
だから、いつも心を冷まして、冷静に対応することが重要なことだと考えます。
一方で、冷静な対応というものは時に「冷たい」という印象を与えることも事実なので、依頼者とのコミュニケーションには特に気を遣います。 こまめに連絡をとったり、場合によっては一緒に食事をしたりすることなんかもありますね。
「君は弁護士なんだ。弁護士であることを、常に忘れてはいけない」
上記の言葉は、私がアンダーソン・毛利・友常法律事務所に勤務していた時に、尊敬する弁護士の大先輩に言われた言葉です。
当時はビジネスの世界にどっぷり漬かって仕事をしていたので、「弁護士」というより、どうしても「ビジネスマン」としての感覚に近くなってしまうことが多々あったんですよね。
例えば、「取引の問題点を見つける」ということよりも、「取引をスムーズに進めることに注力する」というような感覚。
この2つは似ているように感じられますが、実は全然違います。 どちらが良い悪いという話ではなく、「役割」の違いです。
弁護士の役割は、取引における様々な問題点を把握し、それをクライアントの立場にたって解決すること、場合によっては取引そのものを中止させることもあります。そしてビジネスマンの役割は、取引をできるだけスムーズに進め成立させること。 私もクライアントが望む取引についてはなるべくスムーズに成立できるよう努力しますし、問題点についてもクライアントにとって一番よい解決方法を常に模索します。ただ、弁護士の「役割」を見誤ってはいけないんですね。 より深くクライアントと接する機会が増えた今、大先輩の言葉の意味を当時よりもよく理解できている気がしています。
弁護士にとって大事なことは、裁判で勝訴することや完璧な書類を作ることではありません。 依頼者の信頼に足る人間となり、自分を頼ってプライベートをさらけ出してくれる依頼者を絶対に不幸にしないこと。これが一番大事です。
そのために自分には何ができるのかを分析し、冷静に戦略を立てる。
戦略の立方には様々な方法がありますが、六法全書を開いて一人で考え詰めるくらいなら、 何度でも依頼者の声を聞いて解決方法を探す方が、きっと明らかにヒントに満ちているはずです。
人は「出会い」によって成長する
この仕事をしていて、つくづく思うことは、人は「出会い」によって成長するということ。 「先生に会えてよかった」と言ってもらえることがありますが、本当に「こちらこそ」という気待ちでいっぱいになります。 私も依頼者との出会いによって、毎日成長させてもらっています。これからも依頼者との出会いを大切に仕事と向き合っていきます。
