本人訴訟で敗訴した内装工事トラブル。控訴審から受任して強制執行を停止し、一審判決の問題点を的確に指摘し、逆転完全勝訴を獲得した事例
相談前の状況
依頼者(個人事業主の内装業者)は、個人の顧客から居室のリフォーム工事を請け負いました。しかし、施工の途中で顧客から「注文した内容と違う」と強いクレームを受け、トラブルに発展しました。話し合いの結果、依頼者はこれ以上工事を続けることは不可能と判断し、請負契約を「合意解除」することとし、受領済みの代金を顧客に全額返金してその場を収めました。
これで解決したはずでしたが、後日、顧客から「契約と異なる勝手な工事をされたため、別の業者に原状回復工事を依頼した」として、その原状回復費用等の支払いを求める損害賠償請求訴訟を提起されてしまいました。
依頼者は「正当な工事をしていたし、全額返金して合意解除したのだから支払い義務はない」と考え、弁護士には依頼せず、ご自身で裁判を戦うこと(本人訴訟)を選択しました。しかし、第一審の裁判所は、契約が合意解除されたことは認定しつつも、依頼者に原状回復義務があるとして、顧客の請求の大半を認める敗訴判決を言い渡してしまいました。
さらに、この一審判決には仮執行宣言が付されていたため、顧客は直ちに依頼者の事業用銀行口座を差し押さえる強制執行に踏み切りました。事業用の口座が凍結されれば、取引先からの入金や資材の支払いができなくなり、事業の継続に致命的な支障をきたします。このような絶体絶命の状況に陥り、依頼者は弊所に救済を求めて相談にいらっしゃいました。
解決への流れ
弊所は控訴審(第二審)の段階から本件を受任しました。まず最優先で行うべきは、事業をストップさせている口座凍結の解除でした。弊所は直ちに裁判所へ「強制執行停止申立て」を行い、担保金を供託した上で強制執行の停止決定を獲得し、続いて債権差押命令の取消決定を得ることで、迅速に口座の凍結を解除し、依頼者の事業を守りました。
次に、一審判決の内容を詳細に精査しました。すると、一審判決の法解釈に重大な誤りがあることが判明しました。一審判決は、当事者間で契約が「合意解除」されたと認定していながら、法定解除の規定である民法545条を適用し、依頼者に原状回復義務を負わせていたのです。 弊所は控訴審において、「合意解除の場合、特段の合意がない限り民法545条は適用されず、原状回復義務は生じない」とする判例を引用し、一審判決の法理的な誤りを痛烈に指摘しました。本件において、依頼者が原状回復義務を負う旨の特段の合意など一切存在していませんでした。
同時に、顧客が主張する「注文と異なる債務不履行があった」という点についても、当時の見積書やそれを表示したパソコン画面を撮影した写真など、客観的な証拠を丹念に突き合わせ、依頼者が行った施工内容は契約(見積書)に沿ったものであり、債務不履行は存在しないことを論理的に主張・立証しました。
結果として、控訴審の裁判所は弊所の主張を全面的に認めました。一審の敗訴部分が見事に取り消され、顧客側の請求はすべて棄却されるという「逆転完全勝訴」を獲得しました。不当な賠償責任を免れただけでなく、強制執行を止めるために積んだ担保金も無事に取り戻すことができました。
平山 友喜 弁護士からのコメント
本件は、ご自身で裁判手続を行う「本人訴訟」の恐ろしさと、控訴審からでも法的な急所を突くことで逆転が可能であることを示す象徴的な事例です。
一審において、依頼者はご自身の正当性を一生懸命主張されていましたが、法的な要件事実(合意解除と法定解除の違い、債務不履行の要件など)に沿った整理がなされていなかったため、裁判所に誤った事実認定と法適用を許してしまい、敗訴という結果を招いてしまいました。理不尽な請求であっても、裁判への対応を誤れば敗訴し、本件のように預金口座を差し押さえられるなど、生活や事業を破壊されるリスクがあります。訴状が届いた段階で、速やかに専門家である弁護士に相談することが極めて重要です。
また、控訴審(第二審)からの逆転は、一般的に一審の証拠や主張の枠組みが前提となるためハードルが高いとされています。しかし本件では、一審判決の論理構造を緻密に分析し、「合意解除における原状回復義務の不発生」という法解釈上の致命的な矛盾を見つけ出し、最高裁判例という強力な武器を用いて裁判所を説得したことが勝因となりました。加えて、客観的証拠に基づき、相手方の主張の変遷や矛盾を丁寧に弾劾したことも功を奏しました。
さらに、仮執行宣言付判決を出されてしまった場合、「控訴しただけでは強制執行は止まらない」という点にも注意が必要です。本件のように、速やかに担保を用意して強制執行停止の手続きを行う実践的なスピードとノウハウが、依頼者の事業を守る鍵となりました。
一審で不本意な判決を受けてしまった方や、理不尽なトラブルに巻き込まれてお悩みの方は、決して諦めず、一度弊所にご相談ください。多角的な視点から事案を見直し、最善の解決策をご提案いたします。
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