アパートの隣にガソリンスタンドができたせいで家賃が下がった――。アパートを経営する人から、そんな悩みが弁護士ドットコムの法律相談コーナーに寄せられた。
相談者によると、アパートの塀のすぐ隣にガソリンスタンドができた。アパートの2、3階からガソリンスタンドが丸見えで、窓から外を見ると、店員と目が合うこともあるという。相談者は「女性は下着などのプライバシー性の高い物をベランダに干すのに相当抵抗があるのではないか」と心配している。車の出入りと接客の声も気になるそうだ。
実際に物件を内覧した人から、ガソリンスタンドの存在を理由に断られたこともあり、家賃は一部屋7000円ほど下落している。相談者は、ガソリンスタンドに対して、家賃が下落しなければ得られたはずの収益や目隠しフェンス、騒音対策のための真空ガラスなどの費用を請求したいと考えているという。そのような請求が、認められる可能性はあるのだろうか。近隣トラブルに詳しい石川和弘弁護士に聞いた。
●ポイントは「我慢できる限度を超えていたかどうか」
「相談者のガソリンスタンドに対する請求は、不法行為(民法709条)に基づく損害賠償請求ということになります」
石川弁護士はこのように述べる。
「この場合、まず、アパート入居者がこうむる迷惑、すなわちプライバシーや騒音の問題が受忍限度(我慢できる限度)を超えているかが問題となります。
受忍限度を超えるか否かは、このトラブルに関する一切の事情をもとに判断されます。ガソリンスタンドから丸見えであることや、騒音の程度といった事情です。今回のケースで判断するためには、さらに、詳細に事情の調査する必要があるでしょう」
もし、受忍限度を超えていたとしたら、相談者が望む賠償は、すべて認められるということだろうか。
「そうではありません。相談者としては、家賃下落分(一部屋7000円の下落)の根拠や、目隠しのフェンスを設置することや真空ガラスへの変更が、入居者がこうむる迷惑を避ける方法として適当であることを証明する必要があります。
弁護士であっても、対応がかなり困難だということが予想されます。
実際に、損害賠償を請求するとなると、弁護士費用や調査費用などで高額な費用がかかる可能性がある反面、勝算はあまり高くないと想定されます」
石川弁護士はこのように指摘していた。