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佐渡の巨大ウサギ観音「目から3kmのレーザー光線出したかった」  航空法で断念
長谷寺のブログ画像をもとに作成

佐渡の巨大ウサギ観音「目から3kmのレーザー光線出したかった」 航空法で断念

新潟県佐渡市にある真言宗豊山派北豊山長谷寺(ちょうこくじ)に、高さ約6メートルの巨大な「ウサギ観音」がお目見えし、話題になっている。ウサギが立ち上がっている像で、胴体には十一面観音のお顔が刻まれている。このウサギ観音は11月3日に行われた除幕式でお披露目。夜になるとLEDライトで赤く目が光るのが特徴で、「ツッコミどころだらけ」「ラスボス感がある」とネットで人気となり、新たな観光スポットになりつつある。

当初、長谷寺では、目から夜空に向けて約3km先まで照らす赤色のレーザー光線が出るよう、施す予定だったというが、「航空法の都合で断念」したという。なぜ、目からレーザー光線を出してはいけないのか。そもそもなぜ、レーザー光線を出そうと思ったのか。長谷寺の富田宝元住職に聞いた。

●朽ちていく国の登録有形文化財、でも修繕費は国から1円も出ない

長谷寺は、天平年間(729年)に僧侶の行基が修行した場所と伝えられ、大同2(807)年に弘法大師が開山したと古伝縁起に記されている伝統ある寺だ。佐渡に配流された世阿弥や、直江兼続など歴史的な人物も多く訪れている。

そんな歴史ある寺に新たに建立されたのが、巨大な「ウサギ観音」。高さ約4.5メートル、蓮華台座と台座を合わせると6メートルを超える。富田住職は、建立の目的を「文化財を守るため」と語る。

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「今、長谷寺の檀家は40軒。しかし、200軒はないと寺を支えていけません。長谷寺には、国の登録有形文化財に指定されている建物が15棟ありますが、どれも200年から300年前に建てられたもので、朽ちかけています。しかし、国からも、県や市からも、修繕費用は1円も出ません。だったら、まず大勢の人にお寺に来ていただいてお賽銭を頂いたり、将来的には拝観料を頂戴したりすることなどで、これらの文化財を守っていきたいと思います」

長谷寺の建造物は、本堂や護摩堂などが登録有形文化財に指定されているが、老朽化が進んでいるという。今年9月の台風21号ではそのうちの一棟である庫裏に被害があった。一方、佐渡全体では年々、観光客が減少。こうした状況から、富田住職は「シンガポールのマーライオンのように世界に通用するモニュメント像を」と、ウサギ観音の建立を思い立った。

●「マーライオンに匹敵するウサギ観音を」

実は、長谷寺は「ウサギ寺」としても親しまれている。境内にはボタンを栽培、薬膳料理に使用するタンポポ、ドクダミなども自然に生えているが、長谷寺では以前から、草花への影響を考慮し除草剤は使用していない。そこで活躍しているのが、ウサギたちだ。雑草を食べる「修行」を終えたウサギが境内に放し飼いされている。

長谷寺のブログによると、ウサギの修行とは、床を抜いたケージにウサギを入れ、ウサギが雑草を食べるのに慣れさせながら、少しずつケージを移動。3〜6カ月かけて訓練を行ってから、境内に放している。この「草取りウサギ」は観光客にも人気で、一役も二役も買っているようだ。

「今では、140匹のウサギがこの境内を守ってくれています。では、ウサギは誰が守るのか。感謝の気持ちもこめて、お腹に十一面観音を刻んだウサギ観音を作ったわけです」と富田住職。しかし、口から水を噴き出すマーライオンに匹敵するともなれば、それなりにインパクトの大きいデザインが求められる。富田住職は、振り返る。

「それで、最初は目から赤いレーザー光線を出そうと思いました。光らなければ意味がない。空に向けて、3kmは走るレーザーにしようとしたら、航空法に引っかかると言われました。じゃあ、向きを変えようと言ってもダメでした」

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●長谷寺の近隣に佐渡空港、「レーザー照射はダメ」

なぜ、目からレーザー光線を出すことが許されなかったのか。国交省航空局安全部安全企画課に取材したところ、長谷寺のケースはわからないとしながらも、一般的には「空港周辺などを飛行する航空機に向かってレーザー照射を行う行為については、航空法第99条の2第1項に基づき禁止されています」とのことだった。

これは近年、日本各地の空港や沖縄県の米軍基地で、飛行中の航空機にレーザー光線を照射するという事案が多発。パイロットの目の負傷や失明を引き起こし、操縦への影響から最悪の場合、墜落するといった大惨事が起こりかねないとして、国が2016年12月、航空法施行規則を改正したものだ。

さらに、「航空法第99条の2第1項の『航空機の飛行に影響を及ぼす恐れのある行為で国土交通省令で定めるもの』として、航空法施行規則第209条の3に定められており、地表又は水面から150メートル以上の高さの空域や、飛行場の制限表面の上空の空域等を飛行する航空機に向かって照射する場合が該当します」と説明する。

長谷寺は、佐渡空港から南に直線距離で約10kmの場所に位置することから、長距離のレーザー光線を出す行為は、この部分に抵触する恐れがあったようだ。

結局、長谷寺では、ウサギ観音の目の部分をLEDの赤いライトで光らせることにした。「気持ち悪いと言われて、でもそれが逆に面白いと、大勢の方がみえています」と富田住職。結果的には人気が出ているという。

(弁護士ドットコムニュース)

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