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離婚後、離れて暮らす「もう1人の親に会いたい」 子ども自身にできることは
写真はイメージです(kikuo / PIXTA)

離婚後、離れて暮らす「もう1人の親に会いたい」 子ども自身にできることは

「親に会いたいんですが、どうしたらいいですか?」。離婚家庭の子どもたちから、支援団体にこんな相談が多数寄せられている。自分の親なら好きに会えばいいじゃないか、と思われるかもしれないが、そうはいかない事情があるようだ。

同居する親の希望で「会わせてもらえない」ケースもあれば、離れて暮らす親が「会いたくない」と考えているケースもある。「親に会いたくない」と思っている子どももいる。いずれの場合も、できる限り子どもの意志が尊重されるべきだ。私たち大人は、子どもが親に会いたいのに会えないような状況も、会いたくないのに無理に会わされるような状況も、どちらもない社会にしていく必要がある。

今回は、離れて暮らす親に会うことを望みながら、会えずにいる子どもたちの背景、そしてその解決策を探った。(ライター/大塚玲子)

●子どもから「離れて暮らす親に会いたい」

「『親に会いたい』という相談が、最近特に増えていますね。今年の夏は、ひと月に70、80件のメール相談が寄せられましたが、このうち約4割が『親に会いたい』というものでした。小学校高学年から高校生くらいの女の子がとても多いです」

NPO法人「ウィーズ」(千葉県習志野市)理事長・光本歩さん(30)の話だ。自身も親が離婚して父子家庭に育った光本さんは、2年半前に理事の羽賀晃さんとともにウィーズを立ち上げ、子どもたちの面会交流や学習支援などを行ってきた。

これまでも離婚した親からの相談を多数受けてきたが、最近は「子ども本人」からの相談も増えており、なかでも「離れて暮らす親に会いたい」という内容が目立つという。

寄せられた相談をいくつか見せてもらったので、抜粋して紹介しよう。

「3歳の時に両親が離婚し、しばらくの間、母と2人で暮らしていました。小学校の低学年くらいまでは毎週土曜か日曜に父親に会っていました。しかし高学年になると、母がほかの男の人と暮らすことになり、その後弟が2人生まれました。あれから数年間、父に会っていません。どこにいるかも分からないのですが、1度でいいので会いたいです」(愛知県・高3・Aさん)

「私が2歳の時に両親が離婚しました。私は、お父さんの方にひきとられたのですが、お父さんも仕事が忙しいため、ずっとおばあちゃんとおじいちゃんと暮らしてます。おばあちゃんに聞いたら、お母さんは好きな人ができて私を置いて出ていったとのこと。子どももいるみたいで、私が会いに行くと迷惑なんじゃないかって思います。でも、私は寂しいんです。怖いんです。お母さんは、私のことを忘れてるのでしょうか」(岡山県・中1・Cさん)

「親が5年前に離婚しました。離れた父に会いたいです。父は私に中3になったら会いにおいでと言いました。しかし、住所だけでなく連絡先もわからなくなってしまいました。母には何度も聞きましたが、今は忙しいと言われたり、探しとくねと言われたりして、何もしてくれません。どうしたらいいでしょうか」(中3・Dさん)

ほかにも、様々な相談が寄せられていた。

●同居する親への遠慮

なぜ離婚家庭の子どもたちは、自分の親に会えなくなるのか。会いたいなら、いっしょに暮らす親に相談して、連絡をとれば済む話ではないか、と思う人が多いだろう。

しかし、それが難しい現実がある。離れて暮らす側の親が、子どもとの面会を望まないことがあるほか、子どもが同居する親に遠慮して、もう1人の親に会いたいと言い出せないこともよくあるのだ。光本さんは「自分も同様だった」と振り返る。

「私も13歳のときに親が離婚して、その後は父のもとで育ちました。離れて暮らすことになった母に『会いたい』という気持ちはありましたが、子どもながらに気を遣って、父には言い出せなかった。子どもたちは、自分が『会いたい』と思っている(別居)親のことを、いっしょに暮らす親が嫌っていることを察しているので、『会いたい』とは言えないことが多いんです」

●離れて暮らす親の住所地を探す方法

では、どうしたら会うことができるのか? 別居親に会ってみたいが、居所や連絡先がわからず、且つ同居する親にも聞けない子どもは、どうしようもないのか。

そこで今回、戸籍を遡って別居親の居場所を探す方法を取材してきた。協力・アドバイスをしてくれたのは、千葉県市川市・市民部(市民課)の皆さんだ。

ただし先に言っておくと、手続きはなかなかややこしい(難易度はケースによる)。お金もある程度かかるし(戸籍を取る手数料や、役所に行く交通費など、金額はケースによる)、もし別居親が住所を正しく届け出ていなければ、実際には会えない可能性もある。

また、離れて暮らす親に連絡を取ってよかった、というケースばかりではないことも念のため添えておく。別居親が知らないうちに再婚しているなど、思いがけない事実を知る可能性もあり、ショックを受ける子どももいる。

だから、誰にでもおすすめするわけではないが、もしそれでも「やってみたい」と思う方は、以下を参考にしてほしい。

●STEP 1・自分の戸籍謄本を取り、別居親の離婚時の本籍地を知る

「戸籍謄本(全部事項証明書)」というのは、戸籍に入っている全員の情報を記載したものだ。戸籍謄本を取るためには、申請書に自分の本籍地を書かなければいけない。もし本籍地がわからない場合は、同居親に聞くか、または先に本籍地入りの住民票を取ろう。住民票を取ると、現在の本籍地を知ることができる。なお標準的な申請手数料は、戸籍謄本が450円、住民票が300円前後だ(窓口・郵送の場合)。

なお戸籍謄本を取る際は、「本人確認書類」が必要となる。もしあればパスポート、免許証、マイナンバーカード(※通知カードと間違えないこと)等の公的身分証明書か、ない場合は健康保険証と学生証(写真付き)などを持参しよう(詳細は自治体のホームページで確認)。

戸籍謄本が取れたら、どこかに親が離婚した時点の本籍地が記載されているはずなので、それを見つけよう。どの欄に記載があるかは、それぞれケースによって異なるが、必ずどこかには記載されているはずだ。

●STEP 2・離婚時の本籍地で、別居親の戸籍謄本を申請する

親が離婚したときの本籍地がわかったら、その住所地を管轄する自治体の窓口に直接行って、別居親の戸籍謄本を申請する(遠くて直接行けない場合については、最後に説明する)。もし別居親が現在も本籍地を変えていなければ、ここで戸籍謄本が取れる。(→STEP3へ)

しかし、もし別居親が本籍地を変更していた場合、戸籍謄本は存在しないので、代わりに「除籍謄本」というものを取ることになる。除籍謄本を取るのには、戸籍謄本より300円前後手数料が多くかかるので注意しよう。

除籍謄本には、本籍地がその後どこに移ったか記載されているので、今度はその移転先を管轄する自治体の窓口に行き、戸籍謄本を申請する。ここで戸籍謄本が取れれば、STEP 3に進めるが、もしここで再び除籍謄本が出た場合は、また移転先の窓口に行って、戸籍謄本を申請する。

めんどうだが、これを繰り返していけば、必ずどこかで現在の戸籍謄本を取ることができる(そういう仕組みになっている)。

●STEP 3・別居親の戸籍の「附票」を申請する

別居親の戸籍謄本をゲットできたら、今度は同じ窓口に「戸籍の附票」を申請しよう。手数料は300円程度だ。附票というのは、住所の移転履歴を記録したものだ。

附票には、別居親が現在届け出ている住所地も記載されているので、現地を訪れるか、手紙を送るかすれば、連絡を取れる可能性が高い。

●役所が遠くて直接取りに行けない場合は、郵送申請を

戸籍謄本や附票は、本籍地を管轄する役所の窓口でしか取ることができない。直接行くのが一番確実だが、遠くて行けない場合もあるのだろう。そのときは、郵送で取り寄せることもできる。詳しい方法は、該当する自治体のホームページなどで確認してほしい。おそらく、本人確認書類(STEP1参照)のコピーや、手数料分の「定額小為替」(郵便局で簡単に買える)を添えて郵送申請することになる。

ただし、STEP2でも触れたように、別居親の戸籍謄本を取る場合は、戸籍謄本か、除籍謄本になるかは、申請してみないとわからない。ここがややこしい。

だから別居親の戸籍謄本(または除籍謄本)を郵送で取り寄せる際は、先に一度自治体の窓口に電話をして、どのように申請すればいいか相談してみてほしい。除籍謄本の手数料(戸籍謄本より高い)分の定額小為替を同封のうえ請求するなど(もし余ったらその分は返送)、何か方法を教えてくれるはずだ。

戸籍をたどって別居親の居所を探す方法は、以上の通りだ。

なお、これはあくまで「子どもが自分の親を探す場合」のやり方だ。基本的に戸籍や附票を申請できるのは、配偶者や直系卑属(子どもや孫など)等であり、元配偶者は含まれない。

ただし例外もある。打越さく良弁護士は、「住民基本台帳法20条第3項に、自己の権利を行使、または自己の義務を履行するために必要があれば附票を取れるとあるので、養育費請求や面会交流調停の申立てなど正当な理由があれば、元配偶者も申請できるのでは」と話す。養育費の不払いに悩む同居親は、試してみる価値があるだろう。

この原稿では、面会交流を中心に書いた。しかし離婚後の養育をめぐっては、面会交流だけでなく、養育費の未払いという問題も指摘しなければいけない。

離婚家庭の子どもたちのなかには、養育費の受け取りや増額のために面会交流を望んでいるケースもある。親の離婚後も、子どもたちが健やかに成長するために何が必要なのか。離婚時はもちろんのこと、離婚後もずっと考えていかなければいけない課題だ。

【プロフィール】大塚玲子(おおつか・れいこ)

ライター・編集者。主なテーマは多様な家族、PTAや学校問題。著書は『オトナ婚です、わたしたち』『PTAをけっこうラクにたのしくする本』等。共著は『子どもの人権をまもるために』『ブラック校則』など。

(弁護士ドットコムニュース)

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