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2018年08月10日 09時44分

東京医大・女性差別の背景にある「医師の過酷労働」、「患者拒めない」応召義務など論点に

東京医大・女性差別の背景にある「医師の過酷労働」、「患者拒めない」応召義務など論点に
多くの報道陣が詰めかけた東京医大の会見では「アクティビティ」などの認識が問われた(東京・新宿、8月7日)

東京医科大で、女子と多浪の受験生の入試得点を操作する不正が明らかになった。得点調整をした理由のひとつに「女性は年齢を重ねると、医師としてのアクティビティ(活動性)が下がる」との認識があったとされ、内部調査委員会(委員長=中井憲治弁護士)は「重大な女性差別。断じて許されない」と指摘した。

内部調査委に対し、アクティビティについて言及したのは臼井正彦・前理事長。女性は出産して育児をし、そうすると長い時間働けないなどと話したという。急患対応もあり、医師の長時間労働は常態化しがちだ。とはいえ労働環境が過酷でも、「アクティビティが下がる」と女性を差別するのではなく、そもそもの環境改善を図るべきだという声は少なくない。

厚生労働省としても長時間労働に問題意識を持っており、厚労省の検討会は9月以降、医師が正当な理由なく診療を拒めない「応召義務」などについて集中的に議論を深める予定。長時間労働を是正しつつ、十分な医療を提供できるのか。議論の行方が注目される。

●女性医師が働きやすいよう「きめ細やかな対策を進める」

厚労省の検討会は「医師の労働時間短縮に向けた緊急的な取り組み」として今年2月、短時間勤務の導入や宿直勤務の免除などの柔軟な働き方を推進する方針をまず打ち出した。女性医師が仕事と育児の両立をしやすくするため「きめ細やかな対策を進める」と明記した。

また医師の負担を軽くするため、業務の一部を看護師などに任せる「タスク・シフティング(業務移管)」として次の業務を列挙し、「医療安全に留意しつつ、原則として医師以外の職種により分担して実施することで医師の負担を軽減する」とした。

初療時の予診▽検査手順の説明や入院の説明▽薬の説明や服薬の指導▽静脈採血▽静脈注射▽静脈ラインの確保▽尿道カテーテルの留置▽診断書等の代行入力▽患者の移動

こうした「緊急的な取り組み」は、厚労省として各医療機関に周知し、できるものから速やかに実行するよう要請。7月に実施状況が公表され、「実施した」は公立や私立病院で26.8%、大学病院で30.3%だった。ただ、「今後実施を予定」を加えると公立や私立病院は約6割、大学病院は約8割にのぼり、今後の広がりに期待がかかる結果となった。(調査は5月28日から6月11日、対象は全国の病院管理者)

●2019年3月に議論取りまとめ

医師が長時間労働を強いられる背景には、医師法が定める応召義務がある。医師法19条は「診療に従事する医師は、診察治療の求があった場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない」と規定している。

今後、厚労省の検討会は9月に会合を2回開き、応召義務や宿直勤務、諸外国の勤務医に対する労働時間規制などについて議論を進めていく。まだ決まっていない時間外労働の上限時間も含め、議論の取りまとめは来年3月とする予定だ。

厚労省医政局の担当者は「労働時間の把握やタスクシフトなど、現行制度下で運用でできる部分については、まず取り組んでほしい」。法改正が絡むものについては時間がかかるが、「検討会の取りまとめを受け、必要な措置をしていく」と話した。

また厚労省は来年度、「適切な医療のかかり方」を国民に初めて周知する方針だという。来年度予算の概算要求に必要な予算を盛り込む。身近なかかりつけ医を持つことを呼びかけ、不急の時間外での診察が減って、医師の長時間労働が是正されることが狙いとしている。

(弁護士ドットコムニュース)

この記事へのコメント

現役外科系医師、13年目 30代 男性

応招義務や宿直義務を減らしてくれるのであれば、確かに業務としては有難い。
それで労働力(労働人数×労働時間)が減少すれば医療「サービス」のレベルは確実に必ず低下するのだが、国民がそれを受け入れられるかどうか。今が「過剰」なんだと思えるかどうか。


ではそれを低下させないために、人数を増やすことで対応したとする。
(通常総数を増やせば、特に急に増やせば質は落ちることはここでは置いておく…生命に直結するはずの「質」ではあるが)
その場合、次の2点は課題として挙げておきたい。

1つは患者側の主治医絶対主義。
治療も処置も説明も、担当医がするのが普通、当然という感覚。
違う医者や他の職種が出てくることに不満や抵抗を感じるのが当たり前なのであれば、業務の分担など出来っこない。
この意識は相当根強く感じるので、改革出来たとしてもかなりの時間と手間を要するのではと思う。現行制度で出来ることをまずは、というのも勿論大事だろうし、頑張って色々法改正してくれれば良いこともあるだろうが、それだけでは絶対に終わらない。「国民性」「国民意識」のような、壮大で曖昧なものを変えていかないと、結局のところ現状は大して変わらないようにも思える。
また分担によって、引き継ぎのミスは必ず一定の率で(低くはあるだろうが)確かに生じるはずである。それこそ主治医主義を生む元かもしれないが、それを減らそう減らそうとして頑張れば、逆に負担が増えてしまうという現場も出てくるであろうことをどう考えるか。

もう1つは賃金の問題。
人を増やしても医療としての「売上額」が変わることは恐らく殆どない。まして医療費抑制至上主義のような現状では…。
とすれば現在の賃金総額を、増えた人数で分けあうしかなくなるが、医療者側がそれを受け入れられるかどうか。
業務も減ったが給料も減った、では職としてのコストパフォーマンスは変わらないことになるかもしれない。(勿論自由時間が増えることで生活の質の改善が得られれば総合して評価しなければいけないが。)
大変でも総額としては多めにもらえている、というのを最後の拠り所としている者がある程度いるとしたら、その拠り所すら壊れることになる。
今の医師が全くの他職種に転職することも難しいかもしれないが、職としての魅力が減少すれば少なくとも長期的に見て志望者はかえって減少する可能性がある。本当にそうなったらなかなか止められない人数減→環境悪化、の悪循環に陥るだろう。
勿論仕事の魅力は賃金や見返りだけではないのだが、それを強調・強制し過ぎると、まさにこれまでの「聖職」論になってしまう。


要するに患者側も医療者側も含めて、「この国の医療をどうしたいか」という話に結局は収斂するのだと思う。
どれだけのコストをかけて、どういう医療が受けられる・提供できる体制を維持しようとするのか。
その根本の方向性が多数の納得の上で定まらない限り、過剰労働もたらい回しも都市と地方の格差も入試不正も、どの問題もなくならないままだろう、と心から思う。

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匿名ユーザー 40代 女性

主治医制度は患者からしても困る…病院からこの日にと指定されてもいけそうにないのですが!?

クム 女性 30代

それはまた違う問題だと思います。

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公立病院勤務 40代 男性

医学部が他の学部と違うのは定員が国によって厳格に管理されて居るので、大学入試が医師採用試験に近くなる点です。
そのため無事に卒業、国試に受かりづらい属性(多浪)は厳しい基準をかけるでしょうし、適度な男女比を求めるのではないですか。
大手企業が性別年齢関係なく採用の判断していませんよね?
医学部は女子3割程度というのはどこの大学も同じですね。
東京医大のように記録に残す阿保な大学は少ないでしょうがそういうことです。

さて医師不足とは逆に過剰とされている歯学部、薬学部は働き続けない事を期待して(この発想は女性差別が根本にあるにしても)逆に女子学生を積極的に入学させているわけですが、これは男子学生の差別になると思うのです。
男性が優遇されている事は批判しても女性が優遇されていることには目を背けている限り社会システムは変わらないのではないでしょうか?
家事、子育ても女性がメインという前提だから離婚時の親権も女性が有利ですよね。

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