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公立小に最大8万円のアルマーニ制服、憲法「義務教育無償」の観点からどう考える?
東京・銀座の中央区立泰明小学校

公立小に最大8万円のアルマーニ制服、憲法「義務教育無償」の観点からどう考える?

東京・銀座の中央区立泰明小学校(和田利次校長)が、一式4万円を超えるイタリアの高級ブランド「アルマーニ」の標準服を今春から導入すると報じられている。現行品の標準服は男子1万7000円、女子1万9000円程度だが、アルマーニの標準服は男女共4万円超、その他セーターや靴下など揃えると男子で8万円、女子で8万5000円程度にもなる。

報道によると、「標準服」は必ずしも購入しなくても良いが、購入していない児童はほとんどいないため、実質的な「制服」にあたる。憲法では、「第26条第2項  すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とす」とあり、授業料や教科書は無償とされている。制服の高額負担は憲法の観点から、どう考えればいいのか。作花知志弁護士に聞いた。

●憲法26条からの考察

「憲法26条2項は『義務教育は、これを無償とする』と規定しています。具体的には『授業料の無償』を意味すると解釈されていますが、授業料以外の費用について、それが裁量権を逸脱したような場合には、違憲となると解釈する立場が有力です」

授業料以外の費用についても、憲法26条2項が関係してくるのか。

「憲法26条2項そのものの問題というよりも、費用負担によって教育を受ける権利の侵害になるという意味で、憲法26条1項『すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する』の問題となるでしょう」

●権利侵害といえるレベルであれば「違憲となる可能性はある」

今回の泰明小学校のケースをどう考えればいいのか。

「公立小学校で児童が普段着用する服が、小学生の標準的な洋服の金額を超えて、非常に高額となり、『義務教育は、これを無償とする』と憲法が規定した趣旨を逸脱し、憲法26条1項の保障する教育を受ける権利を侵害する程度に至っていると評価される場合には、違憲となる可能性はあることになります。

なお、憲法26条2項の規定する『義務教育』とは、子が教育を受ける義務があるとの趣旨ではなく、親が子に義務教育を受けさせる義務がある、という意味です。

そのため、高額な制服の問題は、子の教育を受ける権利の問題であると同時に、親が憲法上の義務である子に教育を受けさせる義務を履行できなくなるという問題も生じます。私としては、それは親の義務教育の履行の問題であると同時に、親の財産権(憲法29条1項『財産権は、これを侵してはならない』)の問題も生じるのではないかと思っています」

●男女の差額をどう考えればいいか

今回の標準服は8万円以上であるだけでなく、男女で最大5000円程も差額がある。このことに問題はないのか。

「男女の服装が完全に一致せず、購入する代金に差額が生じた場合、それが社会通念上通常の程度であれば、違憲の問題は生じないと思います。

しかし、社会通念を超えて、合理的な説明ができない程度の差額が代金に生じている場合には、当然男女差別の問題は生じると思います。それは法の下の平等の問題であると同時に、教育を受ける権利の問題でもあることになります」

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

作花 知志
作花 知志(さっか ともし)弁護士 作花法律事務所
岡山弁護士会、日弁連国際人権問題委員会、国際人権法学会、日本航空宇宙学会などに所属。

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