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2016年04月11日 10時55分

「一票の格差」解消に有効? 国会で議論している「アダムズ方式」の仕組み

「一票の格差」解消に有効? 国会で議論している「アダムズ方式」の仕組み
写真はイメージ

衆議院の選挙制度改革をめぐり、「一票の格差」を是正するための新たな議席の配分方式である、「アダムズ方式」の議論が国会で続いている。

「一票の格差」というのは、選挙などで有権者が投票した票の重みが選挙区によって異なるという問題で、2014年の衆院選挙では、有権者の数が最も多い東京1区と、最も少ない宮城5区で2.13倍の格差があった。

アダムズ方式は、人口比をより正確に反映して、「一票の格差」を是正できるとして、導入に向けて議論が続いている。この仕組み一体どのような仕組みなのか、格差是正に有用なのか。林朋寛弁護士に聞いた。

●どのように議席数を決めるのか?

「衆議院選挙制度に関する調査会は、小選挙区選挙の都道府県への議席配分については、アダムズ方式で行うとの答申をしています。アダムズ方式というのは、議席配分の計算方法の一つで、1825年就任の米国第6代大統領のアダムズ大統領が発案したと言われています。

アダムズ方式は、各都道府県の人口をある一定の同じ数で割り、割って出た数の小数点以下を切り上げた整数の合計が、小選挙区選出の議席の総数となる計算方法です。この割る数は最初から決まっているわけではなく、丁度良い数を探していくことになります。

都道府県ごとにそのように計算して出した整数の合計が小選挙区選出議員の議席総数になるような一定の割る数が決まったときの各都道府県の整数がその議席数となります」

林弁護士はこのように述べる。具体的には、どんな風に計算するのか。

「たとえば、人口2000人のA地区、3000人のB地区、5000人のC地区の計3地区に、10議席を配分するとしましょう。

ためしに一定の割る数を『500』にしてみると、A地区は4(2000÷500)、B地区は6(3000÷500)、C地区は10(5000÷500)で計20となり、議席数10とは一致しません。

そこで、一定の割る数を『1000』にしてみると、A地区は2(2000÷1000)、B地区は3(3000÷1000)、C地区は5(5000÷1000)で、合計10となり、議席数と一致します。

このようにして、一定の数を探していくわけです。

選挙制度調査会は、現行の295議席から6議席減らした289議席を小選挙区選出の総議席数として、2010年の国勢調査人口を基にしたアダムズ方式による試算をしています。

これによると、鳥取県(議席数2)と愛媛県(議席数3)との一票の格差(議員一人あたりの人口の格差)が1.621倍になるとのことです。1.621倍というのは鳥取県に住む国民の1票に対して愛媛県の国民の1票は0.617票の価値しかないということです」

●一票の格差は解消されるのか?

アダムズ方式で一票の格差は解消されるのか。

「最高裁判所で憲法に違反すると判断された現行の選挙区割りと比べれば、アダムズ方式による議席の配分はましなものといえるのかもしれません。

しかし、結局の所、アダムズ方式を採用しても、投票価値の不平等が是正されるわけではありません。都道府県の人口はまちまちですから、都道府県への議席配分の計算をしている限り、投票価値を平等にする配分は事実上不可能だと思います。

我が国は都道府県の連合国ではありませんし、国会議員は地域代表ではなく全国民の代表ですから、現職議員の既得権への配慮等を除けば、都道府県ごとの配分にこだわる必要性は特に無いはずです。その点でも、いまだにおかしな議論がなされていると思います。

国会では、衆院・参院それぞれにおいて各議員が1票を持って投票をして多数決で決しています。議員の1票の価値は等しいのに、その議員の背景にいる選挙区の国民の投票価値が選挙区間で不平等なのはおかしいでしょう。国会の多数決の正統性が疑わしくなります。民主国家の根本の問題ですから、国会は最優先で投票価値を平等とする選挙制度・選挙区割りを制定すべきです。

そうは言っても、また一から議論をやり直してもいつまで経っても改善されません。たとえば、調査会は現行から6議席減で計算してるので、調査会がアダムズ方式で配分した結果に対して、減らした分の6議席を限度に再配分してみて、実質的な一人一票になる配分にできないか検討する。このように柔軟に考えて、早々に衆議院は議論をまとめるべきです」

(弁護士ドットコムニュース)

林 朋寛弁護士
北海道出身。大阪大学卒・京都大学大学院修了。平成17年10月弁護士登録。東京弁護士会、島根県弁護士会、沖縄弁護士会に所属の後、平成28年3月に札幌弁護士会所属。経営革新等支援機関。『スポーツ事故の法務-裁判例からみる安全配慮義務と責任論-』(共著)。
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